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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第九章 北方動乱

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第百七十二話 教導大隊、王都入城

--翌日。


 アレク達の乗る飛行空母ユニコーン・ゼロは、ゴズフレズ王国の王都ハフニアに到着する。


 ジカイラは、艦橋の窓から王都ハフニア市街を眺めていた。


 前近代的な大都市である帝都ハーヴェルベルクとは、比べるべくもない、こじんまりとした中世の街並みが見える。


 航法士官はジカイラに報告する。


「ユニコーン・ゼロ、定刻通りゴズフレズ王国の王都ハフニアに到着しました」


 ジカイラは航法士官に答える。


「御苦労」


(二十ノットで二十四時間、士官学校から北に約九百キロってところか・・・)


(※二十ノット:37.04km/h)


 ゴズフレズ王国の王都ハフニアは、ゴズフレズ王国の北東部に位置し、アスカニア大陸の北にある氷竜海に浮かぶハフニア島の南端とアスカニア大陸、ハフニア島南側海峡を南北に挟んで建設され、西側に広がる外洋の氷竜海と東側に広がる内海のスベリエ海に面していた。


 ハフニア島の北側海峡対岸はアスカニア大陸のスベリエ王国であった。


 ジカイラは、艦橋の窓から王都ハフニアの周囲の地形を眺めていて、ある事に気付く。


(・・・なるほどな)


(ゴズフレズの王都があるハフニア島の南北の海峡を他国が押さえると、スベリエ王国は外洋への出口を失う訳か)


(・・・確かに。スベリエは、敵対するカスパニアに海峡を押さえられる訳にはいかない)


(・・・スベリエの『核心的権益』)


(やつらがゴズフレズを保護下に置くのは、そういう訳か)





 飛行空母ユニコーン・ゼロは、王都ハフニア郊外の飛行場に着陸する。


 ジカイラ達がユニコーン・ゼロから下船すると、出迎えの一行が待ち構えていた。


 『黒い剣士』ジカイラが率いる教導大隊が『観戦武官 兼 軍事顧問団』という名目でバレンシュテット帝国からの援軍としてゴズフレズ王国に赴く事は、カリンの従者の老執事から国王にフクロウ便で報告されていた。


 両刃の戦斧を持ち、二本の角が付いた鉄兜を被った鎧姿の巨躯(きょく)の戦士二人を先頭に、武装した戦士達の一団がジカイラ達に近づいてくる。


 巨躯(きょく)の戦士の一人は、赤いマントをなびかせていて、身分の高さが伺い知れた。


 赤いマントの巨躯(きょく)の戦士がジカイラの元にやって来て、両手でジカイラの手を取って、口を開く。


「遠路はるばる、よく来て下された! 黒い剣士殿! 余がゴズフレズ王国の国王ハロルド・ゴズフレズだ! 今は戦時である故、このような武骨な鎧姿で申し訳ない! バレンシュテット帝国からの御助力、感謝する! このハロルド、一生の恩に着ますぞ!」


 ジカイラもボディビルダーのような筋骨隆々とした体格の大男であり、ジカイラとハロルド王の二人共、両手足は丸太のように筋肉が付いて太かった。


 ジカイラとハロルド王は、身長もほぼ互角であったが、一番の違いは『腹』であった。


 ジカイラの腹は、鍛え抜いた筋肉で引き締まっていたが、ハロルド王の腹はビールを飲み過ぎて膨れたような腹をしていた。


 茶目茶髪で顎や口元に熊ひげを生やしたハロルド王は、判りやすく例えるなら『大男にしたドワーフのような男』であった。


 ジカイラは、むさ苦しいハロルド王の熱烈な歓迎ぶりに、たじろぎながらも挨拶を述べる。


「国王陛下、御自らの出迎え痛み入ります。軍事顧問団として参りましたバレンシュテット帝国軍 教導大隊司令 ジカイラ中佐です。 ・・・こちらは、副官のヒナ大尉」


 ジカイラは、ハロルド王にヒナを紹介する。


 ヒナに目線を移したハロルド王は口を開く。


「こちらが『氷の魔女』殿か! よろしくお願いする! 『氷の魔女』が、こんな別嬪(べっぴん)さんだとは驚いたぞ!」


 ヒナもハロルド王に挨拶する。


「お見知り置き下さい」


 ハロルド王は、自分の傍らにいるもう一人の巨躯(きょく)の戦士を紹介する。


「ここに居るのがゴズフレズ王国戦士団団長ネルトンだ」


 国王に紹介されたネルトンは、ジカイラ達に一礼すると口を開く。


「ネルトンです。よろしくお見知り置き下さい」


 ハロルド王は口を開く。


「ささ、我が城へどうぞ。歓迎の意を込めて、一席用意させて頂いた。バレンシュテット帝国の皇宮とは、比べるべくもない、むさ苦しいところだがせめて食事でも召し上がって下され」


 ジカイラは、ハロルド王を観察していた。


 ハロルド王が身に付けている兜や鎧、両刃の戦斧には、真新しい使用傷があり、国王自ら兵士達と共に前線でカスパニア軍と戦っている事が伺い知れた。


 ハロルド王には、バレンシュテット帝国の王侯貴族のように『上品さ』や『優美さ』こそ無いが、国王自ら兵士達と共に戦い、前線に身を置いている事や、実直で素朴な人柄には好感を持つことが出来た。


 ジカイラは、素直にハロルド王の好意を受ける事にする。


「御厚意、感謝します」


 ネルトンはジカイラ達を王城へ案内する。


「どうぞ、こちらへ」


 ジカイラは、自分の後ろに居るアレク達に号令を掛ける。


Achtung!(アハトゥンク)

(気を付け!)


 ジカイラの号令を聞いたアレク達は、一斉に『気を付け』の姿勢を取る。


Ausrich(アウスリヒ)tung(トゥング)Vier (ヴュワー・)Spalten(シュパルテン)!」

(整列、四列縦隊!)


 アレク達は整然と四列縦隊に整列すると、ヒナはバレンシュテット帝国旗を掲げ、ジカイラの傍らにやって来る。


 ジカイラはハロルド王達に告げる。


「それでは、先導と案内をお願い致します」


「わ、わかった」


 ジカイラ達の様子にハロルド王たちは驚いていたが、ジカイラ達を案内するため、先導として街の大通りを王城へと向かって歩いて行く。


 ジカイラは教導大隊に号令を掛ける。


Reichs(ライヒス)ritter,(リッター) vor(フォー)!」

(帝国騎士、前へ!)


 ジカイラ達は、ハロルド王の後に続いて歩調を合わせて行進し始める。


 ジカイラ達がハフニアの市街地に入ると、街の大通りの沿道に人だかりができ、歩調を合わせて行進するアレク達を見て驚き、喝采を贈り始める。




 教導大隊の隊列の先頭を歩くのは、革命戦役の英雄である『黒い剣士』ジカイラ。


 その後に同じく革命戦役の英雄である『氷の魔女』ヒナが帝国旗を掲げて続く。


 アレク達ユニコーン小隊は、教導大隊の先頭集団であり、英雄二人のすぐ後ろを隊列を組んで歩いていく。


 自分達は、英雄達に続いている。


 大勢の沿道の人々から贈られる喝采。 


 隊列を組んで行進しているアレク達の気分は、高揚していた。

 



 案内として王城へ先導するハロルド王の後に続き、ジカイラとヒナを先頭として教導大隊が歩調を合わせて整然と四列縦隊で行進する様子は、ゴズフレズ王国の民衆達にバレンシュテット帝国軍の練度の高さを見せつけ、見る者を圧倒し、高揚させていた。


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