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アスカニア大陸戦記 皇子二人【R-15】  作者: StarFox
第二章 士官学校
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第十八話 救出

--南岸 アレクとルイーゼの遭難地点・


 アレクの腕に抱かれながら眠っていたルイーゼが目を覚ます。


「……アレク?」


「ルイーゼ。起きたのかい?」


「ええ」


「眠れた?」


「うん。ぐっすり寝てた」


 笑顔で答えるルイーゼの言葉を聞いたアレクも笑顔を見せる。


「はは」


「あは」


 ルイーゼは、アレクの腕の中から周囲の景色を見回す。


 雲ひとつ無い澄み切った紺碧の青空。


 白い砂浜。


 寄せては退く小波(さざなみ)の音。


 ルイーゼが呟く。


「……綺麗なところ」


「そうだね」






 ルイーゼは、頬を赤らめモジモジしながら口を開く。


「あの……アレク……その……当たっているんだけど」


「ごめん」


 ルイーゼは、恥ずかしそうにアレクに告げる。


「でも……ちょっと……嬉しいかな」


「えっ?」


「アレクは皇宮で、他のメイドの子たちに色々と悪戯していたでしょ?」


「うん」


「けど、私には全然、そういうこと無かったから、『私は、女の子として見られていないのかな』『私は魅力無いのかな』って、ずっと思ってた」


「そうなんだ」


「けど、アレクがこうなっているってことは……ね」


 そこまで言うと、ルイーゼは眠っていた時のように、再びアレクに体を預け、微笑み掛ける。


 






 甲高いプロペラの風切り音が空に響く。


 アレクとルイーゼが空を見上げると、四機の飛空艇が編隊を組んで上空を飛んでいた。


 アレクが口を開く。


「ジカイラ教官達だ!」


 ルイーゼも口を開く。


「小隊の皆も!」


 四機の飛空艇は、砂浜に係留してあるアレクとルイーゼの飛空艇を見つけたようで、二人の上空を大きく旋回して降下してくる。


 やがて、四機の飛空艇は、海上に着水して二人のいる砂浜に止まる。


 飛空艇からジカイラとヒナ、小隊の仲間たちが飛空艇から降りて二人の元へやって来る。


 ジカイラが口を開く。


「お前達! 無事か!?」


 アレクは、二人が包まっていた毛布をルイーゼに掛けてやると、立ち上がってジカイラ達の元へ足早に歩いて行く。


「無事です! 教官!」


 ジカイラは報告にやって来たアレクを見た後、簡易テントの下に座って、毛布に包まっているルイーゼに目を向ける。


 ジカイラはアレクの肩に手を置くと、静かに告げる。


「良くやったぞ。アレク。女を守ってこそ、男だ」


 ジカイラの言葉に驚いたアレクは、ジカイラの顔を見上げる。


 アレクは遭難してジカイラに怒られると思っていたが、教官のジカイラは微笑んでいた。







 小隊の仲間たちがアレクの元にやってくる。


 アルが口を開く。


「アレク! 大丈夫か!?」


「ああ、大丈夫だよ」


 教官のヒナと小隊の女の子たちがルイーゼのところへ行く。


 ナタリーがルイーゼに話し掛ける。


「ルイーゼ、無事?」


「ええ」


 エルザが大声でアレクたちの方に向かって叫ぶ。


「ホラ! 男はコッチ見ないの! さぁ、ルイーゼ。これに着替えて」


 ルイーゼとナディアが天幕のように毛布を広げて、ナタリーがルイーゼに着替えを渡し、裸のルイーゼを着替えさせる。


 ところが、毛布を持ったままのエルザとナディア、着替えを渡したナタリーの三人は、驚いた表情で赤面しながらアレクを見詰めていた。


 正確には、アレクの下半身を。


 女の子たちの異常に気が付いたアルが、その視線の先を追い、状況を理解する。


 アルがアレクにそっと目配せして教える。


「……アレク」


「え!?」


 アレクはパンツ一枚の姿であり、少し離れた場所からでも、それははっきりと視認できた。


 アレクは慌てて赤面しながら、簡易テントの端に掛けてあった自分の制服のズボンを履く。


 制服のズボンは少し湿っていたが、それどころではなかった。


 ヒナが六分儀で正確に現在位置を測量してジカイラに報告する。


「現在位置は掴めたわ。二人の機体は、後で回収して貰いましょう」


「そうだな。じゃ、帰るとするか」


 こうして、ジカイラとヒナの教官二人と、アレクとルイーゼの二人を加えたユニコーン小隊は、士官学校への帰途に着いた。







 


 士官学校へ帰投したユニコーン小隊は、自分達の寮に戻った。

 

 既に昼を過ぎていたため、八人は簡単な食事を済ませる。


 遭難したアレクとルイーゼは、早い時間であったが入浴すると、それぞれ自分の部屋に戻って休む。


 ルイーゼの部屋に小隊の女の子三人がやってくる。


 エルザが口を開く。


「ルイーゼ! お見舞いよ! お見舞い!」


 そう言うと、エルザは補給処で買ってきた果物が入った袋をルイーゼに差し出す。


「ありがとう」


「ルイーゼ。私が」


 そう言うとナタリーは、エルザが持ってきた果物の袋からリンゴを取り出すと、ナイフで皮を剥いて切り、小皿に盛り付ける。





 四人は、ナタリーが剥いたリンゴを摘みながら、遭難した時の事を話し始める。


 アレクとルイーゼが遭難した時の状況や、二人で過ごした夜のことであった。


 ナディアがうっとりと話す。


「恋人と二人で遭難して、一晩中、一緒に過ごすなんてロマンチックね~」


 エルザがルイーゼに尋ねる。


「で。夜はどうしていたの?」


「簡易テントの下で、二人で毛布に包まっていたわ」


 ナタリーが尋ねる。


「雨降っていたでしょ? 寒くなかった?」 


 ルイーゼが照れながら答える。


「……ずっと彼に抱かれていたから」


 エルザがツッコミを入れる。


「二人とも裸で?」


「うん。制服は雨と海水で濡れちゃったし」


「『彼に抱かれていた』って言ってたけど……彼と……したの?」


「ううん。ただ、抱っこされていただけ」


「ふぅ~ん。でも、キスくらいは、したんでしょ?」


「何も……」


「そうなんだ」

 

 ナタリーがルイーゼをフォローする。


「純愛ね~」


 エルザがルイーゼを冷やかす。


「私は、ルイーゼがアレクと一晩中、エッチしていたんじゃないかと心配したのよ」


 ルイーゼは苦笑いする。


「一晩中って……」


 ナディアもルイーゼを冷やかす。


「私も。ルイーゼがアレクと一晩中、エッチしてたら、絶対、アレクの子供を妊娠しているだろうなと思った」


「ええっ!? そんな、キスもしていないのに、妊娠だなんて……」


 ルイーゼは、まだアレクと子供を作る事なんて、考えたことも無かった。


 

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