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第百六十六話 ゾーリンゲン・ツヴァイハンダー

--翌日。


 ジカイラは皇宮を訪れ、皇帝の私室でラインハルトと話していた。


 ジカイラは口を開く。


「ま~ったく。血を分けた二番目の息子が上級騎士(パラディン)になったってのに、祝いの言葉一つ掛けてやらないのか? お前、ジークには甘いのに、アレクには冷たいのな」


 ラインハルトはバツが悪そうに、顎に右手を当てながら答える。


「アレクは甘やかすと、すぐツケ上がるからな・・・」


 ジカイラは反論する。


「士官学校に入学してから、アレクは懸命に頑張っているぞ。数々の任務をこなして、トラキア戦役じゃあ、鼠人(スケーブン)の本拠地を破壊して、お前自身が『帝国騎士(ライヒス・リッター)十字章(・クロス)』をアレクに叙勲しただろう? 小隊対抗トーナメントで優勝して、お前自身が『優勝トロフィー』をアレクに授与しただろう?」


「それは、そうだが・・・」


 ジカイラの反論を聞いて、顎に右手を当てたままのラインハルトの口元が少し緩む。


 なんだかんだ言って、ラインハルトは自分の息子であるアレクの活躍が嬉しかった。


 ジカイラは、普段、あまり感情を表に出さないラインハルトがニヤけている事を見逃さなかった。


 ジカイラは続ける。


「何か、上級騎士(パラディン)になった記念にアレクに贈る魔力が付与されてる剣とか、装備とか、無いのか?」


 ラインハルトは答える。


「魔力が付与されてる剣や装備なら、宝物庫にあるぞ」


 ジカイラは呆れたように話す。


「『宝物庫にあるぞ』じゃねぇよ。・・・全く、大人のくせに素直じゃないな! ・・・ホラ! アレクに記念に贈る品を選びに行くぞ!」


 ジカイラは、ラインハルトを連れて皇宮の宝物庫に向かう。





 ラインハルトとジカイラは、皇宮の宝物庫に足を運び、中に入る。


 宝物庫の中には、七百年以上を掛けてバレンシュテット帝国が収集してきた様々な品が収められていた。


 ジカイラは、宝物庫にある膨大な数の品々に驚く。 


 魔力が付加された剣や鎧、兜、籠手などの武具。アクセサリーや、小物などが綺麗に陳列され、展示されていた。


 ジカイラは、宝物庫に収集されている膨大な数の展示品を見ながら考える。


(魔力が付与された強力な武器や道具がこんなにたくさん・・・。あるところには、あるもんだな)


 ジカイラは展示品の中で関心を引いたものをラインハルトに告げる。


「この剣なんてどうだ?」


 ジカイラがラインハルトに指し示した剣は、装飾が施され、刀身と柄の握りが長く、魔力が付加されている長剣であった。


「『ゾーリンゲン・ツヴァイハンダー』か? アレクに長剣が扱えるのか?」


 ジカイラは、呆れた素振りでラインハルトに答える。


「アレクは、どんな剣でも扱えるよ。・・・お前とナナイの息子だからな」


 ジカイラの答えを聞いたラインハルトは苦笑いする。


「・・・判った。それにしよう」


「それじゃ、『皇帝ラインハルトからの贈り物』ってことで、アレクに渡しとくわ」


 そう言うと、ジカイラは陳列棚からゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを手に取る。


 ジカイラが手で持ったゾーリンゲン・ツヴァイハンダーは、付与された魔力が溢れ、刀身から淡い青白い光を放つ。


(こいつは、聖剣だな・・・。威力はオレの魔剣シグルドリーヴァと良い勝負ってところか・・・)


 ジカイラは心の中でそう呟くと、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘に納める。


 




 皇宮から士官学校に戻ったジカイラは、寮のアレクの部屋を訪れる。


 ジカイラが声を掛けてドアをノックすると、アレクの声で返事がしてドアが開けられる。


「アレク、居るか?」 


「どうぞ」


 昼食を終えたアレクは、ルイーゼと寮の部屋に居た。


 アレクは、訪れたジカイラを部屋に招き入れるとジカイラに尋ねる。


「ジカイラ中佐。・・・何か?」


「コレだ」


 ジカイラは、皇宮から持ってきたゾーリンゲン・ツヴァイハンダーをアレクに渡す。


 アレクは疑問を口にする。


「ジカイラ中佐、この剣は?」


 ジカイラは得意気にアレクに渡す。


「皇帝陛下が上級騎士(パラディン)になった記念にお前に贈るそうだ」


 ジカイラの言葉を聞いたアレクが驚く。


「ち、父上が私に!?」


 驚くアレクを見て、ジカイラが笑いながらアレクに告げる。


「ははは。驚きのあまり『()』って、地の言葉が出たな。・・・そうだ。ラインハルトからお前への贈り物だよ。逸品だぞ?」


 ジカイラにそう言われ、アレクは受け取ったゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの柄を握り、鞘から抜いてみる。


 付与された魔力により、長剣であるにもかかわらず、剣の重さは全く感じない。


 むしろアレクの手に吸い付くようであった。


 鞘から抜かれたゾーリンゲン・ツヴァイハンダーは、付与された魔力が溢れ、刀身から淡い青白い光を放つ。


 淡い青白い光を放つゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの刀身を眺めたアレクは、一言だけ呟き、絶句する。


「・・・凄い」


 ルイーゼも驚いて、アレクと剣を見詰める。


 持った剣を眺めたまま、絶句して固まるアレクを見たジカイラは、微笑みながら告げる。


上級騎士(パラディン)になったお前なら、この長剣でも使いこなせるだろう。今度の遠征で使うと良い。大事に使えよ。・・・じゃあな」


 ジカイラは、驚いている二人にそう告げると、アレクの部屋を後にした。


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