表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/543

第百五十九話 野営訓練(四)

--少し時間を戻した夕食後


 トゥルムの勧めでアレクが浴場に向かい、少ししてからルイーゼがアレクの後を追うように席を立つ。


「アレクの背中、流してくる」


 そう言うとルイーゼは、小走りで浴場に向かって行った。


 二人が浴場に入ってから、程なくエルザが席を立つ。 


「ちょっと、失礼」


 アルがエルザに尋ねる。


「エルザ、どこに行くんだ?」


 エルザは、少しムキになってアルに答える。


「デリカシーが無いわね! トイレよ! トイレ!」


 呆れたようにアルが告げる。


「なんだ。・・・迷子になるから、あんまり遠くに行くなよ」


「迷子になんて、ならないわよ!」







 一度、アルに呼び止められたエルザは、ぶつぶつ文句を呟きながら幌馬車へと向かう。


 そして、一旦、幌馬車の陰に隠れると、エルザは忍び足でアレクとルイーゼが入浴中の浴場へと向かう。


「エルザ!」


 突然、声を掛けられたエルザは、ビクンと全身を硬直させ獣耳と尻尾の毛を逆立たせて驚く。


 声の主は、ナディアであった。


 ナディアは、トイレに行くというエルザの後を追ってきたのであった。


 エルザは、胸を撫で下ろしてナディアに告げる。


「なぁ~んだ。ナディアか」


「エルザ、どこに行くの?」


 エルザは、口元に手を当てると怪しげな笑みを見せて答える。


「アレクとルイーゼが一緒にお風呂に入っているのよ? あの二人が一緒に入浴して、()()()()()()()()()じゃない?」


 ナディアは呆れたように答える。


「つまり・・・、二人の入浴をのぞきに行くのね?」


「そうよ! だって、気になるじゃない! ナディアは気にならないの?」


 ナディアは、気まずそうに横目でエルザから目を反らしながら答える。


「私も・・・、興味が無いと言えば、嘘になるかも・・・」


 エルザは得意満面で告げる。


「でしょ! 気になるでしょ!? ちょっとだけよ!」


 そう言って、エルザとナディアは忍び足で、アレクとルイーゼが入浴中の浴場に忍び寄ると、浴場に張られた天幕の隙間から、浴場の中をのぞく。




 二人が中を覗くと、アレクは椅子に座り、ルイーゼは木の樽の浴槽に入っていた。


 アレクとルイーゼが何かを話しているようだが、二人の声までエルザとナディアには聞こえなかった。


 ルイーゼは浴槽から上がると、アレクの背中を洗い流し始める。


 エルザは小声で話す。


「・・・至って、普通ね」


 ナディアは答える。


「きっと、これからよ」




 ほどなくルイーゼは石鹸を泡立てるとアレクの背中を擦り始める。


 アルザは口を開く。


「ああっ!」


 ナディアも呟く。


「始まったわね。・・・エロい! エロいわ!」


 エルザは驚く。


「凄い! 凄いわ! まるで娼婦のような技じゃない!」


 ナディアも口を開く。


「アレク。凄く気持ち良さそうね」





 ルイーゼは、アレクと自分の身体をお湯で洗い流すと、アレクの前に回って跪いてキスする。


 アレクは立ち上がってルイーゼの腕を取り、浴槽に使っている木の樽の縁にルイーゼの両手を着かせる。


 そして、アレクは後ろからルイーゼを抱き始める。


 覗き見するエルザとナディアのところまで、ルイーゼの声が聞こえてくる。


 エルザは羨ましそうに呟く。


「良いなぁ~。ルイーゼ、凄く気持ち良さそう」


 ナディアは、アレクとルイーゼを見ながら、何かを考えているようであった。




 半時ほどで交わりを終えたルイーゼは、その場にへたり込む。


 アレクは、腰が抜けて動けなくなったルイーゼを、甲斐甲斐しく世話していた。


 その様子を見てエルザは呟く。


「アレク、優しいなぁ~」


 考え込んでいたナディアは口を開く。


「ルイーゼ、上手いわね」


 エルザはナディアに聞き返す。


「上手いって、何が? えっち?」


 ナディアは笑いながら答える。


「えっちもそうだけど、・・・男女間のやり取りというか、駆け引きについてよ」


 エルザは驚く。


「え? そうなの?」


 ナディアは解説し始める。


「そうよ。 ・・・一つ目のポイントとして、ルイーゼは、アレクの背中を洗ったりして、()()()()()()()()()()()()()は、ルイーゼが主導(リード)しているじゃない?」


「うん」


「けど、()()()()()()()()()()()()ルイーゼを抱こうとしたら、ルイーゼはアレクに主導(リード)させているのよ」


「うん」


「ルイーゼは、()()()()()()()()()()というスタイルなの。ルイーゼが()()()()()()()()()んじゃなくて。・・・あくまで、アレクを主人として男として立てて、『女である私は、貴方に征服され、支配され、従います』って感じね。・・・ルイーゼに限らず、人間の男尊女卑社会だと、女はそう振る舞った方が男の人からの寵愛を受けられるのね」


「な、なるほど・・・」


「つまり、私やエルザみたいに強引にアレクの上に(またが)ったりしたらダメって事ね」

(※第九十二話 襲撃、肉食女子 参照)


 エルザは、眉間にしわを寄せて、苦虫を噛み潰したような顔をする。


「む~」


 ナディアは解説を続ける。


「二つ目のポイントは、抱かれて『達している』、または『一緒に達している』っていう点ね」


「それなら私もナディアも大丈夫ね。アレクに抱かれたら、不感症でない限り、普通の女なら満足しちゃうわよ」


「ルイーゼは、アレクに抱かれて『達している』、または『一緒に達している』っていう事で、男の人が本能的に持っている『性欲』だけでなく、アレクに『女を満足させられる男』として、『攻撃欲』『征服欲』『支配欲』『承認欲』といった理性的な欲求も満足させているの」


「な、なるほど・・・」


「幼馴染という絆や、二人の互いの愛情が更にお互いの気持ちを昂らせているから、あの二人の交わりは、きっと、麻薬のような快楽でしょうね」


「ルイーゼがアレクの『第一夫人』になっているのは、伊達じゃないって事ね!」


「私達じゃ、あの二人の間には入れないわ。・・・って、そろそろ、二人が浴場から出てきそうよ」


「ヤバ! 戻らないと!」


 エルザとナディアは、浴場の覗き見を終え、他のメンバーのところへ戻る。







 アレクは、ルイーゼを背負いながら、浴場から他のメンバーのところへ戻って来る。


 トゥルムはアレクに話し掛ける。


「隊長、風呂に入って、スッキリしたようだな」


 アレクは苦笑いしながら答える。


「まぁね」


 アレクに背負われているルイーゼを見て、ナタリーが驚く。


「どうしたの、ルイーゼ!? 真っ赤な顔して・・・、長湯で上せたの?」


 ルイーゼは、上せたような真っ赤な顔で恍惚(こうこつ)として汗ばんでおり、ぼんやりした表情でナタリーの方を向いて答える。


「・・・そうみたい。ごめんなさい。先に休むわ」


 アレクはルイーゼを背負ったまま、二人が寝るテントへと向かって行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ