第百五十八話 野営訓練(三)
「そんなに驚く事は無いでしょ? 私の裸なら毎晩見ているのに。それに・・・」
「それに?」
「前は、よく一緒にお風呂に入っていたじゃない」
「それは幼い頃の話で、オレとルイーゼと母上の三人で風呂に入っていた話だろ!」
ルイーゼは、驚いて狼狽えるアレクの姿を見て、口元に手を当ててクスクス笑うと、身体をお湯で流して浴槽に浸かる。
浴槽に浸かりながらルイーゼは、照れて背中を向けているアレクの背中を見ると、天を仰ぎ、満天の星空を眺める。
二人だけの空間に、引いては寄せ、寄せては返す、穏やかなさざ波の音が聞こえる。
ルイーゼは、アレクに話し掛ける。
「綺麗ね。満天の星空。・・・それに波の音。落ち着く」
「ああ」
ルイーゼは浴槽から上がると、アレクの背中を洗い流し始める。
アレクは驚く。
「ええっ!?」
ルイーゼは悪戯っぽく笑いながらアレクに告げる。
「私、見たわよ~。アレクが、あの二人にローションを塗っているときの顔。・・・鼻の舌を伸ばしてニヤニヤしてた。・・・アレクは、ヌルヌルなのが好きなのかな~って思って」
アレクは慌てて否定する。
「い、いや! そんな事は無いよ!!」
「・・・嘘ばっかり」
「はは・・・」
ルイーゼの言葉にアレクは苦笑いする。
ルイーゼは、自分とアレクの身体の石鹸を洗い流すと、椅子に座るアレクの前に跪いてアレクにキスする。
ルイーゼは、うっとりとアレクの顔を見詰める。
「アレク。・・・私の皇子様」
アレクが呟く。
「ルイーゼ・・・」
ルイーゼは、うっとりとアレクの顔を見詰める。
アレクは、自分を見詰めるルイーゼの目を見ると、ルイーゼの目がアレクに切実に訴えていた。
「抱いて欲しい」と。
アレクは、椅子から立ち上がると、二の腕を掴んでルイーゼを立ち上がらせる。
「ルイーゼ。両手をここに・・・」
アレクは、ルイーゼに浴槽に使っている木の樽の縁に両手を着かせると、後ろからルイーゼを抱く。
交わりを終えたルイーゼは、浴槽の木の樽の縁に掴まったまま、ガックリとその場にへたり込む。
アレクは、ルイーゼを気遣う。
「大丈夫かい?」
「アレク、腰が抜けて動けないの。・・・どうしよう」
「ちょっと待ってね」
アレクは、動けないルイーゼの身体をタオルで拭くと服を着せ、自分も身体を拭いて服を着ると、ルイーゼを背中に背負う。
ルイーゼはアレクに背負われたまま、その首に腕を回して呟く。
「アレク。ありがとう」