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第百五十四話 表彰式、その後

--夜。


 士官学校で小隊対抗模擬戦トーナメントの表彰式が開催される。


 学生達は、練兵場に作られた特設ステージ前で整列する。


 皇帝ラインハルト、皇太子ジークフリート、帝国魔法科学省長官のハリッシュ夫妻など帝国政府や帝国軍の首脳と、ジカイラ夫妻などの士官学校の教官達が特設ステージの壇上に並ぶ。


 壇上で司会者がトーナメントの結果を発表する。


 優勝したアレク達ユニコーン小隊と、準優勝したルドルフ達グリフォン小隊が壇上に呼ばれる。


 皇帝であるラインハルトから、アレクに優勝トロフィーが、ルドルフには準優勝のトロフィーが授与される。


 授与が終わると、帝国政府や帝国軍の偉い人達からの長い話が続いた後、無事、表彰式が終了する。







 表彰式を終えたアレク達は寮に帰り、皆、寮の食堂に集まって一息ついて寛ぐ。


 アレクは、授与されたトロフィーを食堂のテーブルの上に静かに置く。


 魔力水晶(マナ・クリスタル)で作られたトロフィーは、刻印された「優勝 ユニコーン小隊」の文字と、小隊メンバーの名前を淡い青白い光で浮かび上がらせる。


「おぉ!」


「わぁぁ!」

 

 ユニコーン小隊のメンバーはアレクも含め、皆、優勝の興奮冷めやらぬ様子でテーブルの上のトロフィーを眺め、浮かび上がる文字を覗き込む。


 アレクは口を開く。

 

「・・・優勝したんだな。オレ達」


 アルは得意気に答える。


「ま、帝国騎士(ライヒス・リッター)十字章(クロス)を授与されたオレ達なら、優勝は当然だな」


 エルザも得意気に口を開く。


「エルザちゃん、頑張ったもんね!」


 ナディアもエルザに同調する。


「お姉さんも頑張ったんだから!」


 ナタリーも口を開く。


「皆で頑張ったから優勝できたんだよね!」


 トゥルムはナタリーに同意する。


「そのとおりだ。一人一人が持てる力を発揮したからこその優勝だ」


 ドミトリーも口を開く。


「御仏の加護と日々の修行の成果だろう」




 その後、アレク達ユニコーン小隊は、食堂でささやかながら祝勝会を開く。


 トゥルムは、アルコール度数の強い部族秘伝の蒸留酒を持ってきて皆に振る舞い、ドミトリーも帝国の北部から取り寄せたというエール酒を皆に振舞った。


 アルコールが入った事で、皆、饒舌になる。


 酔ったナディアは口を開く。


「アレク~。私、見たわよ」


 ナディアの言葉にアレクは訝しむ。


「・・・何を?」


 ナディアは続ける。


「グリフォンの僧侶の女の子を縄で縛っていたでしょ?」


 アレクは、ギクリとする。


「え!?」


 アレクが捕まえたグリフォン小隊の僧侶の女の子を縄で縛ったのは事実であった。


 ナディアは酔って赤くなった顔を、更に赤らめて続ける。 


「あの霧の中で、ルイーゼと、縛った女の子と、三人で・・・してたのね! もぅ・・・エロい! エロいわ!」


「ええっ!?」


 お嬢様育ちで男女の睦事の知識に乏しいナタリーは、疑問に思い尋ねる。


「『三人でしてた』って、何を?」


 エルザは、ナタリーにしたり顔で教える。


「三人でえっちしてたってことよ!」


「ええっ!? さ、三人で・・・えっち・・・するの?」


 エルザの説明を聞いたナタリーの顔がみるみる赤くなる。


 ナタリーは、恥じらいながら質問を続ける。


「その・・・ルイーゼって、いつも縄で縛られてから、・・・してるの?」


 ルイーゼも恥じらいながら答える。


「私は・・・アレクが、そうしたいって言うなら・・・」


 アレクは、必死に否定する。


「いや、してないし! そんな趣味無いって!」


 アレクが必死に否定する姿を見て、小隊の皆は笑い出す。




 小一時間ほど祝勝会続いたが、酔いが回ったドミトリーとトゥルムは自分の部屋に戻り、アルとエルザは酔い潰れてしまっていた。


 アルはナタリーが介抱し、エルザはナディアが介抱しながら、それぞれ自分の部屋に連れて行く。




 祝勝会の後、食堂には祝勝会の後片付けをするルイーゼと、一人残ったアレクが居た。


 後片付けを終えたルイーゼが一人で佇むアレクの傍らに来る。


「ふぅ・・・。やっと終わった」


「ルイーゼ」


「んん?」


「トーナメントに優勝したことで、父上は私を認めてくれただろうか?」


「陛下はアレクを認めていたわよ。・・・トロフィーを渡す時の、あの陛下の笑顔を見たでしょう?」


「ああ。そうだったな」


 アレクは立ち上がると、後ろからルイーゼを抱き締めて耳元で囁く。


「ルイーゼ。・・・君が傍に居てくれて、支えてくれたからここまでやってこれた。次に父上と話せる機会があったら、『君と一緒になりたい』と伝えるよ。きっと、許してくれると思う」


 ルイーゼは、自分を抱き締めるアレクの手に自分の手を重ねる。


「・・・アレク」


「ルイーゼ。ありがとう」


 ルイーゼは、アレクが士官学校に入学してから、ずっとアレクの傍で甲斐甲斐しく食事の支度をしたり、身の回りの世話をしたりして、献身的にアレクを支え続けてきた。


 想い人であるアレクからの感謝の言葉に、ルイーゼは胸が一杯になり目頭が熱くなる。


 ルイーゼはアレクの方を振り向くと、アレクにキスする。


 目に涙を浮かべるルイーゼを見てアレクは尋ねる。


「・・・泣いてるの?」


 ルイーゼは笑顔で答える。


「・・・嬉しいの」


 




--時間を少し戻した練兵場の片隅


 練兵場の片隅でルドルフは、母親と会っていた。


 ルドルフは、俯きながら口を開く。


「母さん・・・、オレ・・・」


 ルドルフの母親は、そう言い掛けたルドルフの言葉を遮り、はっきりと言葉を口にする。


「準優勝だって立派よ! よく頑張ったわ! ルドルフ! ・・・貴方のお父さんが、どんなに喜ぶことか」


 ルドルフは俯いたまま続ける。


「オレは優勝したかった。・・・勝ちたかった。・・・勝って、名前を上げて、父さんを探したかった」


 落ち込むルドルフに、母親はしたり顔で片目を瞑って告げる。


「大丈夫よ。立派になった貴方に会いに来るから」

 

 ルドルフの母親がそう話すと、身なりの良い老紳士が二人の元に現れ、尋ねる。


「・・・失礼。ティナ・ヘーゲル様とルドルフ・ヘーゲル様でいらっしゃいますか?」


 ルドルフの母親ティナ・ヘーゲルは、老紳士に答える。


「はい」


 老紳士は、恭しく一礼すると、話を続ける。


「申し遅れました。私は、皇宮で侍従を務めさせて頂いておる者です。・・・皇帝陛下が『お二人に会いたい』と申されております。・・・どうぞこちらへ」


「はい」


 ティナは、侍従に即答すると侍従の後に付いていく。


 侍従からの話にルドルフは驚愕する。


(皇帝陛下が、オレ達に会いたいって!? どういう事だ?)


 二人は、侍従の後を付いていく。


  

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