第百四十三話 準決勝戦ユニコーン小隊vsバジリスク小隊
--夜。
アレク達は、寮の食堂での祝勝会を終え、それぞれ入浴して自分の部屋に戻る。
入浴を終えたアレクとルイーゼが寮の食堂で談笑していると、同じく入浴を終えたエルザとナディアがやって来る。
エルザが口を開く。
「アレク! エルザちゃんに『おやすみ』のチューして!」
エルザにキスをねだられ、アレクはエルザの頬に軽くキスする。
アレクからキスされたエルザは、満面の笑みを浮かべていた。
「次は私ね! お姉さんは、今日の試合で頑張ったんだから!」
そう告げると、ナディアがアレクの前に出て来る。
ナディアは、アレクの首に両腕を回して抱き付くと、アレクの口にキスする。
「・・・んんっ」
アレクとナディアが唇を重ねてキスをするのを見て、エルザが不満を口にする。
「ああっ! ナディア! 自分だけ、ズルい!」
アレクとのキスを終えたナディアは頬を赤らめ、恍惚とした表情でエルザに告げる。
「ふふ。試合で頑張った私へのご褒美よ! ご褒美!」
「うぅ~」
エルザは、不満そうに頬を膨らませて上目遣いにナディアを見る。
エルザとナディアの様子を見たルイーゼがアレクと腕を組み、アレクに微笑み掛ける。
「さぁ、アレク。部屋に戻りましょ。 ・・・おやすみ、エルザ。ナディア」
ルイーゼはエルザとナディアにそう告げると、アレクと腕を組んで二人で自分達の部屋へと歩いて行く。
ナディアは、不満気に自分達の部屋に歩いて行く二人の背中を見送るエルザを諭す。
「エルザ。ルイーゼはアレクの『第一夫人』よ。諦めなさい」
「うぅ~」
アレクとルイーゼは、自分達の部屋に戻る。
部屋に戻ると、アレクは自分のベッドに横になる。
ルイーゼは、仰向けに寝ているアレクの上に乗る。
ルイーゼは、アレクの胸の上からその顔を見上げ、両手で頬に触れながら甘える。
「アレク。キスして」
アレクは、身を乗り出して求めてくるルイーゼにキスする。
「んっ・・・、んんっ・・・」
アレクは、キスしながらルイーゼの頭を撫でて抱き締める。
キスを終えたルイーゼは、自分を抱き締めるアレクの首元に顔を埋め、頬擦りする。
「ルイーゼ。今日は頑張っていたね」
「うん」
アレクとルイーゼ。
親からの愛を実感できなかった二人は、互いの温もりを求め、必要とし、愛し合っていた。
--翌朝。
アレク達は、寮での朝食を済ませると、練兵場に向かう。
歩きながらアルはアレクに尋ねる。
「今日の準決勝は、どこの小隊と戦うんだ?」
アルからの問いにアレクは答える。
「・・・いつもアルが調べてくれていたから、オレは調べてないぞ?」
アレクからの答えを聞いたアルは驚く。
「・・・マジか!?」
「うん」
練兵場に着いたアレク達は、対戦表を確認する。
アレクは口を開く。
「ユニコーン小隊の対戦相手は、・・・っと、・・・バジリスク小隊?」
アレクの言葉を聞いたアルは驚く。
「バジリスク小隊!? まさか、貴族組が相手か!」
アルとアレクの会話を聞いたエルザは口を開く。
「バジリスク小隊って!? ・・・あの、オカッパ頭の居る?」
アレクは答える。
「そう。・・・キャスパー・ヨーイチ三世男爵の小隊だ」
アルは呆れ気味に軽口を叩く。
「あの『お漏らしキャスパー』の小隊かよ!? ・・・ところで、試合会場の地形はどうなんだ? 塹壕戦、屋内戦ときて、今回は?」
ルイーゼは答える。
「『野戦』って、書いてあるわ」
アルは喜びの声を上げる。
「『野戦』かよ! やっと、オレの出番だな!」
トゥルムもアルに続く。
「うむ! 私の出番でもあるな!」
アルが使っている斧槍や、トゥルムが使っている三叉槍は、『野戦』のような広い戦場でなければ、活躍する機会が無かった。
アレク達の前に案内役の女性が現れ、口を開く。
「準決勝試合を行う小隊は、試合会場『野戦』へ移動して下さい!」
アレク達は試合会場『野戦』へ移動して現地に到着すると、試合会場でキャスパー達バジリスク小隊と鉢合わせする。
二つの小隊は、試合会場の中心でにらみ合う。
キャスパーは口を開く。
「フッ! 賎民ども! 今日こそ『目上の者に対する礼儀』というものを教えてやる!」
アルはキャスパー達をからかう。
「な~にが『目上の者』だ。お前ら、前衛四人が揃って従騎士で、剣も衣装も四人で御揃いって、演劇でやってる『ナンとか戦隊』の真似かよ? 四人で合体ポーズとか決めてくれるのか?」
キャスパーは怒りをあらわにする。
「ほざけ! 賤民が!」
エルザはアルに加勢する。
「アル。あんまり苛めちゃ、ダメよ! ・・・彼、また、お漏らししちゃうじゃない!」
ナディアは含み笑いを漏らす。
「プッ。お漏らしキャスパー・・・」
エルザとナディアの言葉にアレク達は笑い出す。
笑われたキャスパーは、怒り心頭でオカッパ頭の髪を振り乱しながら甲高い怒声を上げる。
「うるさーい!」
アレク達ユニコーン小隊は、笑い声を上げながら旗のある本陣の位置に歩いて行く。
バジリスク小隊は、怒り狂うキャスパーを他の前衛三人が抑えながら、旗のある本陣の位置に歩いて行く。
ナナイから贈られた手甲を両手に装備しながらルイーゼは声を上げる。
「そろそろ、始まるわよ!」
試合開始の合図の空砲が鳴る。
『開戦』の時であった。




