第百三十七話 試合前日
--夕刻。
アレクは、ルイーゼとナタリーに『今日は早く休む』と頼んで早めに夕食を済ませると、入浴して部屋着に着替え、自分の部屋でベッドに横たわる。
・・・眠れない。
外がまだ明るい事もあるが、原因は、昼間、エルザがアレクに食べさせた精力料理『すっぽんと赤まむしのにんにく添え、魔法薬トッピング』の串焼きであった。
その効果は絶大で、アレクの身体は火照っていた。
アレクは、『明日は試合があるから早く休まないと』と思うが、気分的にも落ち着かない。
アレクは、ベッドの中に潜り込んで考える。
(早く寝たいけど、眠れない。・・・収まらない。・・・どうする?)
眠れないアレクがベッドの中でモゾモゾとしていると、ノックする音がしたのと同時に部屋のドアが開けられる。
「アレク、もう寝たの?」
女の子の声に、アレクは慌てて飛び起きる。
「ルイーゼ!? ・・・って、エルザか」
アレクの部屋に入って来たのは、エルザであった。
エルザは、ベッドに腰掛けるアレクに悪戯っぽく告げる。
「ルイーゼじゃなくてゴメンね! エルザちゃんでした~!」
エルザは、頬を赤らめながらアレクに告げる。
「ア~レ~ク~。ギンギンでしょ!? 昼に食べさせた屋台の精力料理の効果は、バッチリね! ・・・ひょっとして、今、一人でしようとしてた??」
アレクは慌てて否定する。
「いや、してないよ!!」
エルザは、恍惚とした表情で告げる。
「アレク。私の部屋に行きましょ」
エルザの言葉にアレクは頷く。
「うん」
エルザは、アレクの手を取って自分の部屋に連れて行くと、アレクをベッドの上に押し倒してキスする。
「もう一晩中、離さないんだから! んんっ・・・」
アレクはエルザを抱く。
アレクがエルザを二度抱き終えると、エルザは腰が抜けて動けなくなる。
エルザは、荒い息でアレクに告げる。
「はぁ、はぁ、はぁ。・・・アレク。ごめん。・・・私、もう無理」
その時であった。
「エルザ、部屋に居るの?」
ノックする音と主に部屋のドアが開けられる。
「エルザ? ・・・アレク!?」
部屋に入って来たのは、ナディアであった。
驚いたナディアは口を開く。
「・・・二人とも、まだ明るいうちから?」
アレクは気まずそうに答える。
「ま、まぁね」
エルザも気まずそうに口をつぐむ。
「ううぅ・・・」
二人の様子を見て、ナディアは察したようであった。
「は、はぁ~ん。さては。・・・アレクに精力料理を食べさせて、部屋に連れて込んで、えっちしたまでは良いけど、エルザ自身が持たなかったようね?」
ナディアの言葉は、図星であった。
エルザは、悔しさから涙目になってナディアに言い訳する。
「だって! だって! 精力料理であんなに凄くなるなんて、思わなかったもん! しょうがないじゃん!」
エルザの言い訳を聞いたナディアがアレクの前に回って覗き込む。
「・・・そんなに凄いの??」
アレクは、ナディアに苦笑いしながら答える。
「・・・収まらないんだよ」
ナディアは、勝ち誇ったような顔でアレクに告げる。
「良いわ、アレク。お姉さんが満足させてあげる。・・・こっちに来て」
ナディアは、アレクを自分のベッドに座らせるとアレクの隣に座る。
エルザは、悔しそうに二人を見詰めていた。
「ううぅ・・・」
ナディアは、アレクをベッドに押し倒して上に乗り、耳元で囁くとアレクの首に腕を回してキスする。
「・・・アレク。寂しかったわ。・・・んんっ」
アレクは、ナディアを抱く。
ナディアは、エルザと同じように腰が抜けて動けなくなる。
ナディアは、アレクの胸の上で汗だくでぐったりとして、アレクの胸に頬を付けながら荒い息で呟く。
「はぁ・・・、はぁ・・・、もぅ・・・、ダメ・・・」
アレクは、ナディアの頭を撫でながら労る。
「ナディア。ありがとう。無理しなくて良いよ。だいぶ収まってきたから」
「ごめんなさい、アレク。・・・凄すぎるわ」
アレクは、ナディアをベッドの上に寝かせると、二人の部屋を後にして自分の部屋に戻る。
アレクが自分の部屋に戻ってベッドで横になっていると、程なく夕食の片付けと洗い物を終え、入浴を済ませたルイーゼが部屋に戻って来る。
「ふ~。終わったわ」
「お帰り」
「ただいま」
「ルイーゼ・・・」
アレクがルイーゼに今までの経緯を話すと、ルイーゼは口元に手を当ててクスクスと笑い出す。
「あの二人も、これで少し懲りたでしょ? いーっつも、いやらしい事ばっかり考えているから、たまには良い薬よ」
ルイーゼは続ける。
「良いわ。・・・アレク。ちょっと待っててね」
そう言うとルイーゼはアレクと同じベッドの中に入ると、両手でアレクの頬に触れて額にキスする。
「・・・アレク。私が傍に居るから」
「ルイーゼ。すまない」
「いいの。謝らないで。アレクは『私の皇子様』だから」
ルイーゼは、アレクの頭をその胸に抱き、改めて決意する。
(アレクを帝国第二皇子に戻す! たとえ私がどうなろうとしても!)
その夜、二人は三度交わり、アレクはようやく安息を得る事ができた。