第百三十五話 結婚初夜 ジークフリートとフェリシア(二)
ジークに抱かれたフェリシアは荒い息遣いのまま、力無くベッドに身体を横たえる。
ジークはフェリシアの傍らに横になると、フェリシアに腕枕をして抱き寄せる。
汗だくでようやく呼吸が整ったフェリシアが、ジークの瞳を見詰めながら力無くジークに尋ねる。
「・・・私は、貴方の、・・・何なのですか?」
ジークは、エメラルドの瞳でフェリシアを見つめ返しながら優しい笑顔で答える。
「愛しい妃だ」
フェリシアは、フェリシアの事を『玩具』や『慰み者』ではなく『愛しい妃』と答えたジークの言葉に安心する。
フェリシアは安心すると、ジークを見詰める瞳に涙が浮かんでくる。
ジークは、自分を見詰めながら涙ぐむフェリシアを見て、焦り出す。
「どうした? フェリシア? シーツの汚れなら気にしなくて良い。こうなるのだ。気にするな。・・・すまない。痛かったのか?」
あれこれと自分の心配をしてくれるジークに、フェリシアは胸が一杯になる。
「・・・いいえ。嬉しいのです」
フェリシアの言葉を聞いて、ジークも安心する。
「そうか。なら良かった。それと・・・」
ジークの言葉にフェリシアは訝しむ。
「それと・・・?」
「そなたの毛を剃ったのは、バレンシュテットの習わしではない」
フェリシアは驚く。
「ええっ!?」
「私の趣向だ」
ジークの言葉にフェリシアは絶句する。
「ジーク様の・・・趣向?」
ジークは悪戯っぽく笑いながらフェリシアに告げる。
「毛を剃ったのは、他言無用だ。・・・・二人だけの秘密だぞ?」
フェリシアは、頬を膨らませながら耳まで真っ赤になってジークに告げる。
「恥ずかしくて誰にも言えませんよ! 『毛を全部剃られました』なんて!」
フェリシアは、真っ赤な顔で頬を膨らませたまま上目遣いにジークを見詰める。
ジークは、膨れるフェリシアを抱き寄せると優しく頭を撫でる。
「ふふ。すまなかったな。許してくれ」
二人は、そのまま眠りに就いた。
--翌朝。
ジークは、寝ているフェリシアを起こさないようにベッドから出ると、入浴して公務に向かった。
フェリシアが目覚めると、既にジークは居なかったがベッドにはジークの温もりが残っていた。
フェリシアは、昨夜着ていたバスローブを羽織ると、ジークの部屋を出て自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると女性士官がフェリシアを出迎える。
「お帰りなさいませ。フェリシア様」
「ただいま」
自室に戻ったフェリシアに、女性士官は恥じらいながら遠慮がちに尋ねる。
「・・・で、いかがでした?」
フェリシアは、女性士官から何を尋ねられているのか意味が判らず、素っ頓狂な声を出す。
「え?」
女性士官は頬を赤らめながら、再び尋ねる。
「・・・殿下との初夜です。 いかがでした?」
フェリシアは、真っ赤な顔で恥じらいながら答える。
「・・・それは、二人だけの秘密です」