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第百二十話 アジト襲撃、その後

--農業用サイロ 一階


 一階では、ユニコーン小隊の後衛の四人、ルイーゼ、ナタリー、ドミトリー、ナディアは、倒した解放戦線の者達に手枷を付けて拘束していた。


 アレク達が二階に上がった途端、爆発音と共に建物が激しく揺れ、トンネルの中を嵐が吹き抜けたような轟音と共に天井の中心部が下がって来る。


 ルイーゼは叫ぶ。


「みんな! 壁際に行って!」


 ルイーゼとドミトリーは、素早く壁際に身を寄せる。


 ナディアが轟音に驚くナタリーを後ろから抱えて、壁際に身を引く。


 次の瞬間、轟音と共に木造の天井の中心部が崩れ落ちてくるが、犠牲者や怪我人は出なかった。





--農業用サイロ 二階 


 アレク達四人は、解放戦線の男が爆発させた爆弾により、爆発と共に爆風によって石壁に激しく叩きつけられる。


 盾によって爆発による破片の直撃は防げたものの、石壁に叩きつけられた打撲の他、あちこちに軽傷を負っていた。


 サイロは頑丈な石造りのため、建物自体は倒壊しなかったが、アレク達が居る二階倉庫区画は、爆弾の爆風によって、後から増設された木造の天井が突き抜けていた。


 ひと呼吸おいて、アレク達の居る倉庫区画の中心部の木造の床が抜け落ちる。


 爆風で石壁に叩きつけられたアレクが、起き上がりながら声を掛ける。


「みんな、大丈夫か?」


 アルは瓦礫を避けながら立ち上がると、ぼやく。


「クソッ! 痛ッテェなぁ~。・・・耳鳴りがまだしやがる」


 トゥルムも起き上がって来る。


「隊長は無事だったのか」


 アレクは、エルザが返事をしない事に気が付く。


「エルザは!? エルザ! どこに居る!? 無事か??」


 アレクは、周囲を見回し、瓦礫を避けながら叫び、探し回る。


「エルザ! エルザ! どこに居る!? エルザ!」


 やがてアレクは、爆発で吹き飛んだ三階部分の床板の下から、エルザを見つける。


「エルザ!」


 アレクは名前を読んで声を掛けるが、エルザから反応が無い。


 アレクは、瓦礫の中から意識の無いエルザを抱きおこすと、声を掛けながら抱き抱える。


「しっかりしろ! 死ぬんじゃない! エルザ!」


 トゥルムは、アレクが抱き抱えるエルザの口元に手をかざす。


「・・・息はある。気を失っているだけのようだ」


 トゥルムは、大穴の開いた天井を見上げて呟く。


「爆発した爆弾は、上蓋が開けられていたので、爆風は上に向かったようだ。円筒形の石造りの外壁のおかげで、煙突のように上に吹き抜けたんだろう。・・・皆、無事だったのは、不幸中の幸いだ」


 アルは軽口を叩く。


「皆、生きている事は生きているが、満身創痍で無事とは言いにくいな」


 アレクは口を開く。


「とにかく、この建物から出よう」


 エルザを抱き抱えたアレクとアル、トゥルムは、一階に降りる。


 ルイーゼ達は、一階に降りてきたアレク達の元に駆け寄って来る。


「アレク、無事だったのね! ・・・エルザ!?」 

 

 アレクは答える。


「大丈夫。気を失っているだけみたいだ」


 アレク達ユニコーン小隊の八人は、一旦、建物の外に出る。






 ルイーゼは緑色の信号弾を打ち上げる。


 信号弾は、空に大きな弧を描いて飛んで行った。

 

 アレク、アル、トゥルム、エルザの四人は、建物の外でドミトリーに傷の手当を受ける。


 アレクは、意識の無いエルザを地面に毛布を敷いて寝かせ、ドミトリーは回復魔法を掛け、傷の応急処置を施す。


 ルイーゼ、ナタリー、ナディアの三人は、手枷を付けて拘束したトラキア解放戦線の七人の男達をロープで繋ぐ。


 男達の話を聞くと、このアジトには十二人居たとのことであった。


 アレクは呟く。


「・・・他の五人は死んだのかな?」


 アルは答える。


「・・・たぶん」


 




--少し時間を戻した 農家の廃屋


 初代キャスパー・ヨーイチ男爵と、トラキア解放戦線のリーダーであるアクエリアス・ナトは、農家の廃屋の天井裏に居た。


 天井裏はキャスパーの部屋になっており、前の日にキャスパーとアクエリアスの二人で飲んで、そのままキャスパーの部屋で熟睡していた。


 隣の農業用サイロで爆弾が爆発した音で二人は目覚める。


「なんだぁ?」


 目覚めたキャスパーは、屋根の小窓から外の様子を窺う。


 キャスパーの目に綺麗に並んで着陸している四機の飛空艇が見える。


「げっ!? 帝国軍の飛空艇だ!」 


 キャスパーの言葉を聞いたアクエリアスも飛び起きて、小窓から外を見る。


「帝国軍だと!?」


 アクエリアスは口を開く。


「マズい。革命をやり遂げるまで、帝国軍に捕まる訳にはいかない。・・・逃げるぞ」


 キャスパーは尋ねる。


「・・・仲間を見捨てるのか?」


 アクエリアスは答える。


「当然だ。やつらは消耗品だ。兵隊の代わりはいくらでもいる。だが、世界最高の頭脳である、このオレが帝国軍に捕まる訳にはいかない。・・・さっさと、逃げるぞ」


「どこへ逃げるんだ?」


「トラキアのカルロフカさ。本部がある」


 キャスパーとアクエリアスは、農家の廃屋の天井裏から降りると、裏口からこっそりと逃げ出して行った。


 





--キャスパーシティ上空 揚陸艇

 

 ジカイラとヒナは、揚陸艇で上空に待機していた。


 ジカイラの元に伝令が来て、パイロットからの報告を伝える。


「緑色の信号弾を確認しました」


 ジカイラが答える。


「了解! 直ちに信号弾が打ち上げられた地点に向かえ」


 伝令が戸惑う。


「・・・それが、中佐」


「どうした?」


「緑色の信号弾は、四か所、全ての施設から打ち上げられておりまして・・・」


 報告を聞いたジカイラが驚く。


「なんだと!?」


 ジカイラは、コクピットへ向かうと、風防越しに外を確認する。


 緑色の信号弾は、四か所から打ち上げられていた。





 ジカイラが呟く。


「襲撃目標にした四か所の施設全てがトラキア解放戦線のアジトだったとはな・・・」


 ジカイラはパイロットに指示を出す。

 

「近い場所から順番に回れ」


「了解しました!」


 ジカイラとヒナの乗る揚陸艇は、最寄りの信号弾の発射地点に進路を向けた。


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