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第十一話 先輩学生達

 士官学校の授業は、一般教養から剣術、騎乗、体術、魔法、武器や防具、道具の使い方など基礎について幅広く行われた。


 午前中の授業が終わり、昼休みの鐘がアレク達の居る教室に聞こえてくる。


 アレクが授業で使っていた物を片付けていると、教室にガラの悪い者達が入ってくる。


 アレクは、制服をだらしなく着崩して誰かを探しているような彼等を、不思議そうに眺めながらアルに尋ねる。


「なんだ? あいつら?」


 アルがアレクに答える。


「やべぇ! 先輩達だ! アレク、目を合わせるんじゃねぇぞ!」


「先輩?」


「そうだ! ああやって、新入生に目立つ奴がいないか、探し回ってるのさ! 目を付けられたら厄介だからな」


「ふぅ~ん」


 アレクとアルが話していると、先輩学生達がアレクの前に集まってくる。


 先輩学生の一人が口を開く。


「お前か? 補給処で乱闘騒ぎを起こしたのは?」


 先輩学生の言葉にアレクが驚く。


「へ?」


 アルが先輩学生とアレクの間に割って入る。


「いやぁ~。先輩、勘弁してくださいよ。オレ達は『絡まれた側』なんですよ!」


 アルの言葉に先輩学生は、怪訝な顔をする。


「絡まれた側?」


 アルがアレクを掴まえて、デタラメな言い訳をし始める。


「先輩! コイツ、女の子みたいな顔してるでしょ? だから、あいつらに絡まれちゃって! ホラ! 見てください! コイツの顔のココ。殴られて青アザが出来ているでしょ?」


 そう言うと、アルはアレクの顔の青アザを指差して先輩学生に指し示す。


 アレクの顔の青アザは、皇宮でメイドに悪戯して父ラインハルトに殴られた時のもので、補給処での乱闘で出来たものでは無かった。


 ミミズ腫れこそ引いていたが、青紫色に変色した跡は薄くなっていたものの、まだアレクの顔に残っていた。


 先輩学生は、アレクの顔を覗き込み、アルの言い訳を確かめる。


「・・・本当だ。痛そうだな」


 アルは愛想笑いを浮かべながら、先輩学生に同意を求める。


「でしょ?」


 先輩学生は、フンと鼻を鳴らして両腕を組むとアレク達に告げる。


「騒動を起こすような新入生がいたらシメてやろうと思ったんだが、お前達じゃなさそうだなぁ」


 先輩学生とアレク達のやり取りを聞き付けた小隊のメンバーがアレク達の元に集まってくる。


 蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムがアレクに話し掛ける。


「どうかしたか? アレク?」


「いや、別に」


 先輩学生達は、集まってきた亜人達のいる小隊のメンバーを見て驚く。


 特に蜥蜴人(リザードマン)のトゥルムは、先輩学生達よりふた回り以上大きい体躯があるため、先輩学生達は肝を潰したようであった。


 アレクの前にいる先輩学生が仲間に告げる。


「こ、こいつらじゃねぇ! おい! 向こうだ! 行くぞ!」


 そう言うと先輩学生達は、アレク達の教室からぞろぞろと出ていった。







 安心したアルがアレクに話し掛ける。


「ふぅ。何とかなったな」


 アレクがアルに尋ねる。


「あの人達に目を付けられたら、何かあるのか?」


 アルが答える。


「先輩達に目を付けられたら、後で呼び出されて、集団で袋叩きにされるぞ! ……関わらないほうが良い」


「そうなんだ」


 納得いかないといった表情のアレクに、アルが笑顔を見せながら話す。


「けど、先輩達、トゥルム達を見てビビっていたみたいだな! 傑作だった!」


 アルの言葉に傍らのトゥルムが不満げに答える。


「人間から見て、そんなに怖い顔しているのか? 私は??」


 アレクが説明する。


「いいや。トゥルムの体格が先輩達より大きいからさ」


「そういう事か」


 アレクの説明にトゥルムは納得したようであった。


「むぅ……それでは、自分では抑止力には、なりませんねぇ」


 ドワーフのドミトリーは悔しそうに武術の型をやってみせる。


 体の大きさでは、ドワーフは人間の三分の二くらいの身長しか無いためであった。


 ドミトリーの言葉にアレク達小隊のメンバーは、笑い出す。


 ナディアも人差し指を立て、片目を瞑って自慢気に話す。


「なぁに。さっきの不良達がまた来たら、今度は火蜥蜴(サラマンダー)を差し向けてやるんだから!」


 アルがナディアにツッコミを入れる。


「それじゃ、学校が火事になるだろ!」


 ナタリーも口を開く。


「それなら、いざという時は、私の睡眠雲(スリープクラウド)の魔法で!」


 再びアルがナタリーにツッコミを入れる。


「教室のみんなも眠っちまうよ!」


 アルのツッコミに小隊のメンバーは、再び笑い出した。








--放課後。


 一日の授業が終わり、アレク達は寮に帰る準備を始める。


 アルがアレクに話し掛ける。


「やっと、今日の授業が終わったな」


「ああ。いろいろと今日は助かったよ。アル」


「なぁに。大したことはしてないさ」


 突然、一人の学生がアレク達の教室に駆け込んで来た。


 学生はアレクを見つけると、アレクの元に駆け寄って来て、助けを求めてくる。


「大変だ! 頼む! 助けてくれ!!」


 アレクが助けを求める学生をよく見ると、補給処で乱闘した相手グループの学生の一人であった。


 アレクが驚いていると、アルが学生に尋ねる。


「どうしたんだ?」


 学生は、呼吸を整えると口を開く。


「ルドルフが先輩達に連れて行かれたんだ!」



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