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No7


宿屋も併設された飲み屋で、昼間は閉まって客が居ないようで、ガランとした飲み屋のスペースにお邪魔する。

思いっきり擦り剝けた膝をおかみさんが手当してくれる。優しさが染みますね。本当。



「何とお礼を言ったら良いか。ありがとうございます。」


「いいんだよ。久々にいいこけっぷりを見られたしね。また夜にでも飲みに来て大金落としてってくれれば」


「はい。必ず伺います。」


まあ、営業上手なこと!その際には沢山注文させて頂きます!



「おかみさん、ただの世間話ですけど、お客さんの中に夢魂病の家族が居る人なんていませんよね。」


「ははは、そんな伝説みたいな病気聞いたことも無いね。」


「そうですよねー」


やはり簡単にはいかないか。心折れそうだなー。頑張れ俺。


「毎日教会でお祈りしているイケメンなら知ってるけどねー。家族でも病気になったのかね~。祈る姿は本当いい男だよ本当。」


「それ、どこの教会ですか!!?」


藁にもすがる思いで情報を聞き出す。この近くの教会だ。おかみさんにお礼を言って教会へ向かう。どうか…、どうか…、希望が繋がりますように…──!!




「何故だ。」




何故、教会であの男が祈っているのか。どうしよう、声かけていいのかな…。いや、勇気を出せ。





「あの、コンラット様…でしょう…か。」




「うむ。サインか?今は私用で祈りにきているのだが…。仕方あるまい」



どうしよう。何故俺はコンラット様にサインを貰っているのだろう。状況を整理しろ。とにかく、聞くしかない。


「ありがとうございます。覚えていないかもしれませんが、私はアルマージュ商会のロイと申します。シルヴィアお嬢様の侍従をしております。」



「何と!!何用だ!!」



一気に険悪なムードになる。そうだよね、せっかく逃げ切れた元婚約者の侍従が何用だって思うよね…。お願い、斬りかからないでね!!




「お嬢様の件ではご迷惑をおかけしました。本当に申し訳なく思っております。悪魔みたいなお嬢様によく付き合ってくれたと感謝の思いでいっぱいであります。」


「……。」


「お嬢様も心を入れ替えまして。コンラット様には謝罪をと望んでおられました。毎日教会で熱心に祈られているとのこと、ご家族に何かあったのではないかとご心配されていました。」


まあ、心を入れ替えたというより魂が変わってたんだけど。物は言いようだ。何か…情報をしゃべってくれるだろうか。


「あの悪魔が殊勝なことだな。信じられない。俺の家族のことまで思うとは、まだ婚約者気取りか!!おぞましい。まだあの恐怖を忘れられず、毎日悪魔祓いを受けてるというのに!!」


「あー、本当申し訳ないです。そこまでの心のダメージを…。うちのお嬢様本当すごい執念でしたもんね。あのころのお嬢様は…。でもあなたに振られ、少し変わってきましたよ。それだけは分かって欲しいです。」


何故お嬢様の肩をもってしまうのだろう。あんなに悪魔だと思ってたのに。


天使なお嬢様の影響で、変わり始めたお嬢様を…なぜか悪く言われたくないと思ってしまう自分に驚いている。



「お前も大変であったのだな…。よくあの主人の下で勤め続けているものだ」



何故か凄く同情された─。


それからコンラット様の愚痴を聞き、お嬢様によって植えつけられた傷を共有する内に何故だか友情が芽生えてしまった。…え?どうしてこうなった…?



「いやー、ロイ、お前は本当根性のある奴だ。あの悪魔のやり口は巧妙で、本当に恐ろしくて…。今でも夢に見るよ。この思いを共有できる相手が居るだけで、こんなにも頼もしいとは!!感謝する!!」



コンラット様、本当に溜まってたんだな…色々すみません。落ち着いたら美味しいお酒を飲みましょうね!!同志とはこのような者なのかと…固い絆ができました。




「恋人のセレナにも心配させてしまってね。セレナも聖女として様々な治療を行っていて大変なのに、私のことも心配させてしまった。今日は笑顔で会えそうだ。」



セレナ様とは、聖女様でコンラット様の現婚約者である。本当、お幸せに!!




「セレナも大変なんだ。毎日懇願しにくる者がいるみたいでな。夢魂病なんぞ、魂の行方が分からなければ聖女の力を持ってしても治癒することなぞ叶わないというのに…──」



ぼそっと言われたその言葉に、俺は前のめりになる。何だって…?ここに、希望の光が見えた気がした。





「コンラット様!!その話、詳しくお聞かせください!!」







ああ、神様、女神さま、天使さま!!

どうかお願いします。

この希望の光がお嬢様へ繋がっていますように!!!







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