No5
「シルヴィアが『中』に引きこもってしまった原因は、コンラット様に振られたことが大きいのではないかと思うのです!」
天使なお嬢様は今日も美しいし可愛い。
「なので、コンラット様にお会いして、今までの行動を謝罪をしてわかってもらえれば、シルヴィアも『外』へ出てこられるんじゃないでしょうか!」
こんな無理難題を言われても──…。
俺は真っ白になりかけた頭を整理する。
コンラット様はお嬢様の元婚約者。しかも無理やり婚約し、束縛し、しつこく付きまとい、粘着したあげく、振られてしまった。謝罪して許して貰えるかな?
もう悪魔なお嬢様から解放されて聖女様とくっついたんだから、そっとしておいてあげたい気持ちにかられる。
「ですので、ロイ!シルヴィアとコンラット様が会えるよう、手配して頂けませんか?」
そんな…まっすぐな瞳で見られたら──
「はい!お任せください!お嬢様!!」
断るなんて出来るはずがない──。
俺のバカーーー!!絶対面倒くさいやつだぞ、これ。
そう思いつつも、コンラット様とは婚約破棄の手続き上、一度会うことは可能じゃないか、とか、会う算段を付けてる自分もいる。
「私はシルヴィアを説得します。きっと大丈夫です。上手くいきますよ。」
でも…。もし、悪魔なお嬢様が『外』に出てきたら…。天使なお嬢様はどうなるの?
消えてしまうのかもしれないと思うと…、凄く怖くなる。失いたくない。このまま、このままずっと…
泣きそうになるほど、黒い思いが止まらなくなる。
でも、天使なお嬢様は自分が消えてしまうことは当たり前だし、悪魔なお嬢様のことを幸せにしたい、そう考えているようだった。
「お嬢様、俺はお嬢様が大好きです。」
ふいに口から出た言葉に、お嬢様も俺も吃驚する。どうしよう。もう溢れ出したら止まらない。
「ろ、ロイ?」
「今のお嬢様が何者でも、俺は、あなたが好きです。あなたの幸せを願ってる。」
伝えたい。あなたに救われたこと。こんなにも、大切に想ってしまったこと。一番、一番あなたを大事にしたいこと。あなたが自分が消えてしまっても構わないと思っていても。