No10
「ところで、何であんたはあの子に会いに行かないわけ?心配してたじゃない」
「お嬢様の侍従ですので。お傍を離れるわけには─」
「ふーん…。そんなに従順な奴だっけ?いいわよ。許可するわ。それとも、会いたくないのかしらね?熱い告白したものね。」
前言撤回。お嬢様は悪魔です。
わかってて言ってますよね。そうですよ、今更会うのが照れくさいんです。
俺のこと覚えてるかも分からないし。
マイル先生の妹さんってことはお貴族様でしょう。孤児の俺とは身分も釣り合わないし。
色々考えて、はい。ビビりました。
会いに行けるはずがない。
「あの子、後遺症でしばらくは自分で動けないのよ。会いに行ってあげれば?ってか命令よ。さあ、行きなさい!!」
お嬢様に背中をど突かれ、部屋から出される。いい性格だよね、全く。
彼女の部屋の前でウロウロしているとドアが開き、マイル先生が顔を見せる。
「ロイ、全く仕方がない子だね。昔から変わらないんだから。早くあの子に会ってあげて」
部屋に押し込まれ、ドアが閉まる。すみませんね、ビビりなもんで。
ゆっくり視線を上げると、ベットに横たわる彼女が居た。
本当に…天使様みたい…。
恐る恐る近づくと、彼女の目が開く。
「遅いですよ!ロイ!待ちくたびれました!」
開口一番それ?え…ナニコレ天使?むくれてる姿も可愛いんですけど!!
ってか…俺のこと覚えててくれたのか。ジワジワと嬉しさが体中に溢れてくる。
「言い逃げはずるいですよ。ロイ」
いや、逃げたのはどっちかって言うとあなたですけどね。
「私、しっかり覚えていますからね!あなたの言葉。目覚めたら絶対に言いたいことがあったんです!」
少し怒ってる姿も可愛いなー。
もう本当天使だよね。
もう生きてる彼女を見れるだけで満足です。多くは望みません。心に聖域を張るようにこの気持ちも封印…──
「あなたが好きです」
できない───!!!!
え─!!!!どうしてこうなった!!?天使様が…俺のことを…
「先に言ったのはロイですからね!幸せにしてくれるって!シルヴィアも証人です!!もう逃げられませんからね!一生つきまといますからね!」
恥ずかしいのか顔を真っ赤にして言う天使様を俺は昇天するような気持ちで茫然と眺める。
え…?一生つきまとうってっ…プロポーズ!!?え…そーいうこと!!?
可愛すぎる…!!
でもまずは…──
「嬉しすぎて死にそうです。天使様、まずはお名前から教えていただけますか?」
「そうですね。エリシア。エリシア・ルーエントです。エリシアと、呼んでください」
「天使様、いいえエリシア様…。あなたがどのようなお姿でも伝えたいことがあります───…」