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作者: 椅稲 滴

 ピン、と広げたときに、親指の先から小指の先までが、ちょうどゴミ箱の直径くらいの手だ。

 中指の先っぽから第三関節までが、文庫本の横幅くらい、甲はうっすらと産毛におおわれている。人差し指と中指の第二関節と第三関節の間には、なぜか親指側の反面だけに生えている。

 手のひらには、ごくごく小さな水疱が散見される。左手の方が多い。少し前には親指の横っ腹と右手中指の腹にもあったが、いつのまにか破れて、水疱があった場所には死んだ皮が白くいびつなサークルを作っている。

 人差し指を目に向けて指すと、関節に対して爪が少し傾いでいた。

 右手中指のペンだこは、言われてみても分からないほどに、柔らかく小さかった。

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