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第60話

すると目の前で立体映像の光のモニターが開いた。

 モニターには、アクセスコードの設定と艦長の登録が外されております。コードと艦長を再登録の上、再び起動してください。と日本語で表示された。

「アクセスコードか……なるほどねぇ」

 蒼穹の口元に微かな笑みがこぼれる。

「判るのか、蒼穹?」

「まあね、幽霊の正体見たり枯れ尾花ってな。ナベカムリ、これから神様の正体って奴を明かしてやる!」

「何だと?」

「アクセスコード、ダイラタント、艦長、菅生蒼穹……再起動!」

 蒼穹が再び叫ぶと画面は起動画面へと変わり今度は機械音声が返ってきた。

「ようこそ。こちら宇宙戦艦リーカ。船体番号824ー251ー6873、艦長菅生蒼穹。間違いは御座いませんか?」

「ビンゴ! OKだ」

 蒼穹が嬉しそうに手を叩くと部屋の中は更に明るくなり椅子の座り心地が完璧な物に変わる。下手をすればうっかり眠ってしまいそうだ。

「蒼穹……これは何だ? 私には神の声が聞こえた気が……」

「神様じゃない。ナビゲーションの機械音声だ」

「判るのか?」

「完璧に理解している訳じゃないが充分だ」

 そうナベカムリに答えると蒼穹は物怖じせず機械音声に質問した。

「リーカ、お前に聞く。お前は何者だ」

「艦名リーカ、艦種宇宙戦艦、船体番号824ー251ー6873、艦長、菅生蒼穹」

 音声は同じ言葉を繰り返す。

「お前は宇宙戦艦なのか?」

「はい」

「神様じゃないのか?」

「そのような情報は含まれておりません」

「現在までの経歴を教えろ。出来るだけダイジェストで」

「宇宙歴43415年、銀河連邦宇宙軍、第2547次宇宙軍軍備増強計画における高速宇宙艦隊の中核として計画される」

「宇宙歴43417年、宇宙軍第14工廠、通称西之島工廠にて起工」

「宇宙歴43421年に就航、銀河連邦宇宙軍、第106宇宙艦隊所属となる」

 機械の声はそう答えながら自らの経歴に答えていく。

 蒼穹とナベカムリはそれを息を飲みながら聞き入っていた。

 それはまるで神話における真実が読み解かれていく様な作業だった。

 同時にその中から浮き彫りにされた多くの事実を前に興奮する。

 現在の時間は宇宙歴46673年、蒼穹の居た時代から換算すれば約数万年後。暦を作ったのは銀河連邦と呼ばれる銀河系の約3割を版図に持つ超巨大国家だ。

 そして最も重要な事実。この世界は……異世界ダイラタントは異世界などではなく、地球から遠く離れた辺境の未開惑星だった事だ。

 事の起こりは三千年以上前、惑星探査の名目で宇宙戦艦リーカはダイラタントのある未開宙域に単艦航海に出た時だった。

 だが航行中、原因不明の事故に遭うのだが、その際、リーカは動力部を中心に重大な損傷を来たし自力による恒星間航行を断念した。

 そしてこの惑星ダイラタント、銀河連邦の公式名称PLU75411142cに不時着したのだ。

 乗員は惑星不時着後、救難マニュアルに従って転送装置……ブローム達の言うリーカの環によって惑星を脱出。救命艇による恒星間航行で宇宙軍基地のある宙域まで帰還予定と記されていた。

 その乗員達が無事に帰還できたかどうかは記されていない。主要な記録は乗員が脱出したところで途切れていたからだ。

 後の記録は戦艦リーカの自動修復の報告が延々と書き綴られている。リーカは惑星不時着後、約十年で全ての修理を完了すると軍規に則って軍籍を凍結し動態保存という形で自身を封印した。再び宇宙軍に回収される日の為に。

「そして幾年幾星霜、この星の神と崇められ結果的にヴィーマに掘り起こされるまでに至ったって訳か……」

「我等、ブロームの記録は何か記されていないか?」

「ちょっと待ってくれ。おい、スライムの様な生き物の事で何か記録はないか?」

 蒼穹が問い掛けると音声はすぐに資料を提出した。

「艦内使役生物。デッキスレイブ……これの事じゃないか?」

 光のモニターに記されたのは饅頭型をした半透明の生き物だった。それはまさしくこの星で生きるスライムだった。

「スライムにスレイブか……何かほかに記録は無いか?」

 蒼穹の質問に音声は記録用の立体動画を提示した。

 そこでは乗員らしき人間達と楽しそうに戯れる多くのデッキスレイブの姿があった。

 人間達には笑顔が溢れ、その光景は平和そのものだ。

「おお……」

 ナベカムリは感嘆の声を上げる。彼にしてみれば神と始祖達が戯れる天国での風景でも映ったのかもしれない。

 一方、蒼穹にとっては映像に映る未来人が自分と姿かたちがまるで変わらない事の方が嬉しかった。

「きっと彼等はこの星を脱出する際、何らかの理由で連れていけないデッキスレイブ達をこの惑星に解き放ったんだ。そのデッキスレイブの末裔がブローム達、この惑星で定着したスライムなんだ」

 その中で、スライム達は唯一、持ち運び可能だったリーカの環を運び出し環の神殿を作った。多分、この地に再び乗員達が訪れてくれる事を願っての事なのだろう。

 だが残念ながらそのリーカの環から乗員達が現れる事は無く、ある種のタイムマシンの様な力を発揮すると地球上のあらゆる時間と場所と繋げ召喚物をブローム達にもたらした。

「その延長線上に俺が居たって訳か……」

 それは憶測でしかないが蒼穹はそれが正解だと信じる事にした。

 でなければブローム達が三千年経った今でも人間を神だと崇める理由が見つからなかったからだ。

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