第50話
宰相は兵士達に指示を出すと市内の探索に向かわせた。生き残りのヴィーマの掃討と市民達の救援がその目的だ。
そして兵士達が居なくなると今度は蒼穹の元に近寄った。宰相が傍に来るとユーグレナは臣下として二人の前で膝をつく。
宰相は蒼穹に一言、言った。
「色々と災難だったな」
「ああ、うん……でも色々あって何とか助かったよ」
「フッ……それは良かった」
友の無事にプロテウスも安堵の笑みを浮かべる。
「それとユーグレナに一言だけ言わせてくれ。君の姉さんに会った。子供達と一緒に無事だったよ」
その言葉にユーグレナは目を見開いて必死に喜びを堪える。
「ユーグレナ、こういう時は大きな声で泣いて良いんだよ」
「そうだ、上役の許可など必要ない。身内の生還の歓喜を誰が止められようか」
「あ、ありがとうございます……」
そう二人に諭されるとユーグレナは顔を隠しながら大粒の涙を何度も流した。そんなユーグレナの背中を蒼穹はそっと撫でた。
「ところでスガイソラ。お前に一つ聞くがこの石畳の上のスライムの死体は何だ? しかも尋常な量ではないぞ。それに青は我が宰相家の色……何かあったのだ?」
プロテウスが珍しく困惑している。
「それにユーグレナの話では貴様、兄上と一緒と聞いたが……もしや兄上に何かあったのか?」
プロテウスの不安が募っていく。勘のいい彼の事だ。多分、ここであった事におおよその見当を付けているはずだ。
そんな彼の前で蒼穹が語り始める。
「あの……実は……」
蒼穹は正直にこれまでにあった事実を打ち明ける他なかった。




