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第48話

 終わってみればそれはブロムランド建国以来のヴィーマによる王都ミネア・トラウンへの大侵攻作戦だった。

 その戦災で王都の中のノームの居住区の大半とワイズマーの居住区の一部が破壊された。

 死傷者の数はまだ判明してはいないが凄まじい数に上るはずだ。それは王都の郊外の墓標の数がまた増える事を意味する。

 そんな中、青い巨人は宰相邸の前へとたどり着いた。

 宰相邸も戦災を受け屋敷一部が破壊されていた。

 だがそれでも蒼穹とナベカムリにとってそれは懐かしい景色だった。

「俺たち……帰ってきたんだな……」

「嗚呼、懐かしきかな我が家の…………」

 そうナベカムリが言いかけた途端、蒼穹の体は急に変調を来した。

青色の皮膚が小刻みに震えだし全身の力が抜けていく。

「どうした、ナベカムリ?」

「巨人の姿が保てない……」

「嘘?!」

 ナベカムリの答えに蒼穹が驚愕する。

 だがその直後、痩せっぽちの体は支えきれずに片膝を突くと全身が溶解する様に崩れ落ちていった。

「うわぁあ!」

 全身が崩壊していくというよりも高い所から落ちていく。そんな感覚に蒼穹は戸惑う。

「痛て!」

 蒼穹が思わず呻く。それは石畳と体が衝突した痛みだ。

 やがて周囲から青いドロドロの物体が流れていくと、蒼穹は自分の体が外の空気に晒されている事に気付いた。

「どうなんてるんだ?」

 蒼穹が周囲を見渡すと青いドロドロの物体が溶けたゼリーの様に広がっていた。

 そして改めて自分の体を眺めてみる。

「戻っている……元の体だ……」

 肌の色も骨の位置も髪の長さまで寸分たがわず元の自分だった。

 どういう訳か知らないがナベカムリの体が溶けるのと引き換えに元の体が再生したのだ。

「じゃあ元に戻ったって事か?……」

 とにかく、ナベカムリの体内から解放された。恐らく、魔力がなくなって融合している意味がなくなったのだ。その事実に蒼穹は複雑な表情を浮かべる。

 だが一方で別の不安が気持ちを駆り立てた。

「そうだ……ナベカムリだ! ナベカムリ!」

 蒼穹は目の前で大きな水たまりの様に広がったドロドロの青い物体に触れた。それは間違いなくナベカムリの変わり果てた姿だった。

 そして両手で何度も何度も掬ってみせる。

「ナベカムリ! ナベカムリ! ナベカムリ、返事しろよ!」

 しかし何度呼び掛けてみてもナベカムリから返事は帰ってこない。

「そんな……死んじまったのか?」

 その事実に蒼穹は声を震わせた。

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