表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勇者が召喚されたって?

作者: ゆき

設定


クロウ(♂)

15歳主人公。普段は農業やってる。ごくふつうの村人。


リナ(♀)

15歳クロウの従妹。一応婚約者。

噂話大好き。普段は実家の食堂の手伝いをしている。たまにクロウの手伝いする。


勇者

異世界から召喚されたらしい勇者。ほぼ出番なし。


魔王

存在するとは言われてるけど・・・。




最初に自己紹介しておこう。俺の名前はクロウ。15歳でこの村で畑をやってる。

両親はいない。たまに畑を襲いにくる動物を罠にかけたりもするが、基本的に毎日穏やかに生活しているどこにでもいる村民である。両親がいないので当然の事ながら朝食も自分で作る。

今日も一日がんばるかーと思いながら朝食の目玉焼きを作っていると、


「クロウーーー!クロウーーー!いるーーーー!?」


婚約者でもある従妹のリナが大慌てでドアを蹴破りながら入ってきた。

そろそろドアが壊れそうなので丁寧にあけてほしいと思ったが口には出さない。どうせ言っても無駄だし。


「なんだよリナ。朝はおはようございますだろう。」


「それどころじゃないの!聞いて聞いてビッグニュース!!」


興奮した彼女はやっぱり人の話は聞いてくれない。いつもどおりだった。

仕方なく俺は彼女のニュースを聞くことにした。


「はいはい。それで何があった?」


「あのね!とうとうやっちゃったの!」


(めんどくせぇ……)


「いいから落ち着け。目玉焼き食うか?」


「落ち着いてられないよ!食べる!!」


「なら準備するからテーブル座って言いたい事まとめろ。

 興奮しすぎで何が言いたいかわからんぞ。飯食いながら聞くからさ」


「えー……まあしょうがないか。待ってる!」


というわけで彼女の分まで朝食を用意することにする。

飯作ってる間に少しは落ち着くだろう。そうであってほしい。




「「いただきます」」


半熟目玉焼きとサラダとパンという簡単なメニューだが、

毎日作ることを考えればこんなもんだろう。


「今日もおいしいね!クロウはいい主夫になれるよ!」


「嫁予定のお前のが料理上手だろう。なぜ俺に作らせようとする?」


「あたしのはお店用だから作るの大変なの!」


実家の食堂の事を言ってるんだろうが、そこで出せるレベルの料理を

面倒と言いますか。旦那においしいもの食べてもらおうって気はないのか。

まあまだ結婚までは期間はあるとはいえ、少々考え物である。


「それにほら、クロウの料理はおばさんの料理と似てるんだもん。

 うちの料理よりおいしかったし!」


「母さんなぁ……料理上手だったし、そう言われれば悪い気はしないか」


こういうところで死んだ母との繋がりがわかるのか。なんか嬉しいな。

違う、そうじゃねぇ。


「それでだリナさんや。ビッグニュースってのはいったいなんなんだ?」


朝食も食べ終わり、食後のお茶を飲みながら彼女に聞く。

リナは満腹満足といったとろけた笑顔から一転「はっ!」と表情を変え、

また落ち着きがなくなってしまった。


「そーだった!まったりしてる場合じゃないよ!

 クロウ!大変なんだよ!やっちゃったんだよ!!」


「だから何をやっちゃったんだよ。つまみ食いがばれたのか?

 それともへそくりでもばれた?お金使うことなんてあんまりないけど」


「そんなんじゃないよあほちん!!

 あのね!勇者召喚だよ!!」


あほちんはひどい。この子はもうちょっとおしとやかにならないものか。

ってなんだ?勇者召喚?


「勇者召喚?なんじゃそりゃ?」


「おかーさんたちが話してたんだけどね!なんでも王都で異世界の勇者召喚の

 儀式が行われたらしいの!魔王倒すためにだってさ!」


リナの食堂にはお客さんのために新聞が届けてもらってる。話題にことかかない

王都が発行してる新聞は食堂には欠かせないのだ。高いので俺はとってないが。


「ふーん。召喚される勇者も大変だな」


何も知らずに召喚されたんだろうからまったく勇者とやらにはいい迷惑

だろうな。本当ご苦労様です。


「ふーんってそれだけ!?ビッグニュースじゃない!?」


リナは興奮が止まらない。何がここまで彼女の琴線に触れたのだろう?


「いいかリナ。よーーーく思い出せ。ここはどこだ?」


「……最果ての島って言われてるルクレチオ島のファミリアの村です……」


「よくできました。そしてもうひとつ。魔王が現れてから50年たったけど、

 この島で何か変化したか?少なくとも俺が生まれてからは日常は変わって

 ないと思われるんだが」


「……とくになにも変わってないです……」


「だろう?ってことで今日も畑仕事だ。魔物がこなければいつもどおりだ」


「えー……まあそんなものなのかなぁ?」


リナは納得してないようにも見えるが王都いくのに船乗り継いで一年以上も

かかるこんな場所で暮らしてればそんなものである。


「死んだ父さんが言ってたけど、魔王が世界を侵略し始めたってときも

 この村はとくに何も変わらなかったらしいし」


「おじさんが?」


「そう。一応小さな島とはいえ、多少の魔物はでるし海にも魔物はいるって」


「うー……でもでも!」


「門番もハンターの人もいるし、そこまで大事になったことはないだろ」


いざ襲ってきたらみんなで退治にいくことになるし、そんなのは過去数年に

2~3回あったかないかくらいだ。まったくもって平和である。


「まあ勇者とやらがこんなとこまで来るわけでもないし、そんなもんだ」


「……それもそーだね!それじゃいつもどおりお野菜ちょうだい!」


俺はリナの実家の食堂にうちの畑の野菜を出荷しているのだ。

両親が死んでも一人で暮らしていけてるのはこれで収入があるからである。

俺は色々世話になってるし、届けるだけでいいと言ってるのだが、リナのお母さんのリサさん(おばさんというと叩かれる)に


「お金はあったほうがいいわよ。たまに行商人さんも来るんだし、

 そういうときに何も買えないのも大変よ」


と説得され、この形に落ち着いた。本当ありがたい話である。

ただ娘に変な入れ知恵するのはやめてほしいとは思う。いつか結婚するとはいえ、

いきなり風呂に突撃してきたり、寝ようと思ったらベッドに入り込んでたりは

本当に驚く。てか鍵かけてるのに何で入ってこれるかがわからない。

しかもそのまま泊まっていくし。


「はいはい。今から準備するから待ってな。どうせリナじゃ運べないんだし」


「はーい!」


どうでもいいが、こいつは自分の家で朝飯食ってるんだろうし、うちでも

食ってるんだよな?なんでこれで太らないんだろう?


「クロウ?どしたの?」


「なんでもない。畑行くか」


リナの細っこい体をじっと見てるとリナが不思議に思ったのか声をかけてきた。

うん。こいつがおかしいだけだな。そう思うことにしよう。





……2年後……



「ねぇねぇクロウ!聞いて聞いて!」


「今度はなんだ?」


相変わらずリナは騒がしい。これが来年の成人の儀が終わったと同時に

結婚する相手だと思うとやっぱりちょっとだけ頭痛い。まあ好きなんだけど。

でも今日はいつもと違うな。なんか怒ってる?


「勇者っていたじゃん!今うちの食堂に来たんだけどね!」


「ああ、あの召喚されたとかいうのか。こんな何もない村までわざわざ来たんだ。

 大変なんだなー」


「そんなのはいいよ!あんなのが勇者だなんてがっかりだよ!」


何があったか知らないがそんなもんだと思う。所詮うわさと現実は違うものだ。


「ほらお茶でも飲んで落ち着け。なんか勇者がやったのか?」


とりあえずリナを落ち着かせて何があったのか聞いてみる。


「うちの食堂でご飯食べたあとにね。勇者が声かけてきたんだよ。

 『お前可愛いな。よし俺のものになれ!』だってさ!

 婚約者いるって言っても『勇者の嫁の一人になれるんだぞ?

 そのほうが幸せになれるに決まってる  だろ!』とか言ってんの!頭にきたよ本当!!」


うわぁ……そりゃ怒るわ……こいつそういうナンパだいっきらいだしなぁ……

まあ俺もリナがそんな扱いされてちょこっと頭にはきてる。


「そりゃひどいな。俺のリナをバカにしてやがる。殴っといたほうがいいか?」


「俺のリナ……俺のリナ……えへへ……」


一瞬であほの子になった。大丈夫だろうか?いや、大丈夫じゃないと思う。


「帰ってこーい。で、そのあほ勇者はどうした?」


「はっ!それでね!頭にきてひっぱたこうとしたんだけどね……」


ん?何やらかしたんだ?


「おかーさんが『あんたのようなあほにくれるために娘を育てたんじゃない

 食事代はいらないからとっととでていけ!フライパンでひっぱたくぞ!』

 って……追い出しちゃった」


「なんというか……リサさんすげぇな」


勇者相手でもそこらのナンパ客と同じ扱いである。すごいね。

こんな村まで来て食堂で追い出される勇者とか笑える。


「まあリサさんが怒ってくれたんだからいいや。どうせ勇者が来たところで

 畑の野菜は育ってはくれないし、何も変わらないだろ。

 むしろナンパの分だけ面倒になっただけだ。ほっとけ」


「そうだよね!失礼しちゃう!」


「まあしばらくはうちに来てろよ。外で追い出された勇者と鉢合わせしても面倒だろ。

 俺はどうせ畑仕事するからうちにいるし。あとでリサさんには言っとくから。」


「やった!クロウありがと!」


これでもリナのことが心配なのである。ちょっと疲れるが。

まあちょっと早い結婚生活だと思ってしばらくがんばりますかね。

しかし勇者もバカだねー。こんな小さな村でやらかせば一瞬で広まるのに。

勇者なんだから歓迎してもらえるとでも思ってたのかね?




「ねークロウ。さっきおかーさんとこに行ったら教えてくれたんだけどね」


「おーお帰り。帰ってきたらまずはただいまだぞー」


もはや定番となってるやりとりである。この子は挨拶を忘れることが多い。

あれから結局2年。リナはそのまま俺の家に居ついてしまった。

そのまま結婚となったのでリナはもう嫁である。ある意味勇者のせいだ。


「なんかね。勇者が魔王討伐に失敗したらしいよ?」


「へー」


「それで王都は大混乱だってさ。新聞にかいてあったみたい」


「そうなんだ。まあうちの村には関係ないよな。いつもどおりだ」


「それもそうね。それじゃ畑手伝うねー」


田舎の村にすむ俺たちの日常は今日も続いていく。




いかがでしたでしょうか?


いくら勇者といえども遠く離れたところで実行された儀式とかはあまり関係ないと思ってしまうと想像しながら書いて見ました。


この勇者召喚や勇者の動向などを戦争や海外の問題と置き換えてみるとちょっと恐ろしいなと思います。

恐ろしいニュースでも所詮テレビ越しのニュースであって自分には関係ないと思ってしまう。

そんな表現をしたくてこんな形にしてみました。


現在コロナで国内も国外も大変ですが、所詮自分には関係ないと思ってしまっていませんか?

じゃなきゃあんなに自粛ムードなのに家族でスーパーいったり観光したりはしませんよね?

この物語の主人公のクロウくんのように「関係ない」ではなく、自分にも関係するかもしれないって

思うべきなんですけどね・・・


まあそんなことを思いながら書き上げてみました。やっと形になった・・・。


初作品なので拙い点も数多くあると思いますがご了承ください・・。


それでは、また。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うん。 『読み慣れている』故の読み易さがある作品でした。 [気になる点] ポンコツ美少女なリナちゃんのモデルは、作者さんですかぁ?(笑) おばさ…じゃなかった、リサさんの方のモデルだった…
[良い点] 作品自体も読みやすいし、行間の開け方や文字数も読みやすいのが良いですね。 本文読んだ後の後書き読んだ後にまた本文読めば「……成る程」って、自然に頷くほど色々考えさせられましたし、文体から「…
[良い点] 結末まで読み、 「勇者負けたなら、あんたらの生活もそのうち危うくなるだろ。そんな呑気にしてていいのか」 とツッコミをいれたくなりました。 そして後書きを読んで、なるほど!と思いました。 後…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ