スマイルスマイル
起きる。順子は、ぐったりと眠っている。トイレへと向かう。顔を洗い、歯を磨く。夫婦。という現実。俺も、しっかりしなくては。記憶って戻るのか。俺は鏡を睨みつけ、ベッドで眠る、順子を見た。きれいだ。本当にきれい女だ。俺はタバコに手をやって、灰皿に灰を落とす。人間ってなんだ。
「おはよう」
「おはよう、ちょっと、順子、お前、疲れてないか」
「そうだね。まあ、いいよ。新幹線で眠るから」
「そうか」
順子もタバコに火を点けて。今日から鳥取か。順子は、服を脱ぎ、俺にキスをする。そして、昨日、デパートで買った、服を着こむ。黒いコートに身を包み、笑う、順子に噓は、なし。俺も、赤いコートを着込む。二人でチェックアウト。何故だか、怖くなった。すべてをすべてを俺は無くすのではないかと。順子の耳を見る。全てが美しい女だ。順子の助手席に座り、香山家へと車は走り出した。俺は、順子を愛している。順子は俺を愛してくれている。運転席でいくつかの笑みを浮かべる順子。香山家に車は到着。順子は車庫入れ。
「楽しい、新婚旅行にしようね」
「おう」
順子に頭を下げる、強面の男がひとり。順子はその男に手をふって。俺達は鎌倉駅へとタクシーに乗った。
旅か。人生なんて、あっという間なのであろうか。俺達は横須賀線に乗り込む、鳥取への旅路を。人生って、早いものなのなのであろうか。電車の中、順子は俺の肩に抱き着く。眠ってしまおう。眠ってしまおう。東京駅に着くまでは。
「圭吾さ、起きて。東京だよ。東京」
「おう、おはよう。しかし、眠いよ」
「まあ、いいんじゃない」
「お前って適当だな」
「適当がイチバンいいんだよ。人生って」
東京駅の人ごみの中、みどりの窓口で切符を買う、順子。いよいよ、始まるな。新婚旅行。俺と順子は新幹線に乗り込んだ。
「ねえ、スーツケースにすればよかったね。私の鞄も圭吾の鞄もぎゅうぎゅうづめだよ」
「そうだな。姫路に着いたら、順子、スーツケース、買ってくれ」
「うん」
新幹線が動き始める。流れる景色。俺は、思った。適当に考えよう。順子の言うように。順子が笑い、俺の頭を撫でる。時間は流れる。車窓を見る俺。横で眠りに就いた順子を確認して俺も眠った。
車内アナウンス。「姫路、姫路です」。そうか、スーツケースか。鞄を抱えて、俺達は新幹線を下車。すると。見えた。見えた。これが姫路城か。デカい。