暴威ごっこ
順子。嗚呼、順子。順子の車が、学校に着く。ここが、俺の母校、北高なのか。何も知らない俺。煙草にかじりつく。校門をくぐる。すると、短ランと太いズボンの男が俺に近づいては、言った。
「圭吾、お前も今日、早いのか。ちょっと、煙草、わけてくれよ」
「いいけど、あんた、誰」
「はっ」
「だから、あんた、誰」
「圭吾、お前、俺に喧嘩、売ってるのか、なんだ、お前」
「俺、あんたのこと、覚えてないんだよ」
すると、その男に、顔を殴られた。えっ、鼻血。痛いよ。俺は、その男を殴り返す。何だ、コラ。
「俺は、坂口竜太郎様だよ。圭吾、二度と俺に顔、見せるな、このナルシストが」
「あいよ」
俺は、痛む鼻を気にする。鼻血が止まらん。車に戻ると順子は言う。
「圭吾君よ、病院、行こうよ」
「はっ、こんなの、ただの鼻血だよ。病院なんていいよ」
「でもさ」
「順子よ、俺ん家に戻ってくれないか」
「いいけど、あんた、どうするの」
「ぐっすり、眠りたい」
「はあ。じゃ、私ん家に来ない」
「いや、いいわ」
二人の車が鎌倉の俺の自宅に向かう。止まらないな、この鼻血。畜生、さっきの竜太郎って男、俺の友達だったんだろうな。俺には記憶はないけれど。嗚呼、眠りたい。順子は言う。
「圭吾君さ、私と結婚してくれない」
「はっ。結婚って」
「お願い。形だけでもいいからさ。私、こう見えて、寂しいんだ。ね。何でもするから、お願い。圭吾君」
「わ、わかった」
順子は、いきなり、泣き出した。俺は、決めた。順子に尽くそうと。これだけのイイ女、そんなにみつからないからな。結婚か。順子の涙の理由ってなんだろう。
そうこうしてると、鎌倉の自宅に着く。俺は、順子にキスをして、家の中へと入る。すると、親父にいきなり、殴られた。
「何、するんだよ。えっ」
「圭吾、お前みたいなチンピラに食わす金を俺にはない。母さんとも話した。お前、出て行け。それにあの女、なんだ」
「俺の女だよ。わかったよ。出て行きゃいいんだろう」
「何が、俺の女だ。金も世帯もないのに、偉そうにしやがって、ギターだけ持って、出て行け。もう二度と帰ってくるな」
親父は俺に、ギターを渡しては玄関の扉を閉めた。もう、決めた。俺は、順子と人生を共にする。