僕の人生は今は何章目ぐらいだろう
「な、カネオダ」
「何、カネオダ」
湖の前。あった、あった。『ラーメンカネオダ』。俺は順子の左頬に手をあてた。
「順子」
「圭吾。いよいよ、結婚報告だね」
「うん。マイワイフ」
こみあげてくるものがあった。順子は、こんな俺を愛してくれている。さあ、挨拶だ。夜に世。俺は駐車場に車を停めて、金色の看板を見上げた。カネオダ。そして、来店。すると、白髪のおばあちゃんが言ってくれた。
「いらっしゃい。兄ちゃん。ようこそ、カネオダへ。私、ここの店長、鐘尾陀聖子。カネオダセイコだよ。兄ちゃん。金を出せ。なんちゃってね」
「笑えないよ。おばちゃん、とんこつラーメン、二つ」
「おばちゃん、おばちゃん。私の事、誰だかわかるかな」
「えっ。順子ちゃん。もしかして」
「うん。そうだよ、香山順子が旧姓の藤原順子。結婚したよ」
「順子の旦那の圭吾です。藤原圭吾です。おばちゃん。俺、幸福者」
「おめでとう。順子ちゃん。これ、コーラ二本、おばちゃん、急いで、ラーメン、作るね」
俺の人生は順子と、ずーーーっと一緒。譲れないんだ。順子だけは。結婚、結婚。嬉しそうに微笑む順子とおばちゃんとの会話を。時間よ、止まれ。カネオダ、カネオダ。鐘尾陀聖子さん。素敵なラーメン屋さん。




