トラウマ
「い、異世界キター!」
俺、高良幸一は今ちょっとアレな理由で異世界にいる。
周りは一面の緑色。大草原のようである。
「おーこれが異世界かー!おー!おー?お?」
ひとしきり感動に浸って、少し落ち着いて思う。
「……どうすればいいんだ?周りなんもないけど、草以外。」
そう。辺り一面緑色。ほんとなんもない。村どころか人影もない。木もないな。サバナ気候ってとこかな?
てか暑い。汗の量がヤバい。死ぬ。
急いで脱ぐ。上はシャツ一枚、下はズボンをまくって半ズボンにした。が、依然暑い。
サバナ疑惑が確信を帯びてきた。
「村とか見つけて水もらわねぇと死ぬなこれ……。」
異世界きてその死に方が選択肢に入るのはどうかと思う。
「んーこういう時はお約束のチート機能『マップ』!!」
……特になにも起こらないな。
『マップ』はなしか、まぁあれチートすぎるもんな……。
気を取り直して、他のお約束を試してみよう。
「『ステータス』!!』
狙うは特殊スキル。あわよくば現状を解決してくれるやつ。最悪水魔法でも可。
目の前にステータスプレートと思しきものが現れた。
名前:コウイチ・タカラ
年齢:18
レベル:1
生命力:100
力:93
敏捷:99
体力:105
魔力:100
スキル:料理Lv1 裁縫Lv1
その他:時空の神の加護
……特になんとかなりそうになのないな。
強いて言えば『神の加護』ってやつか?
けど、唱えても、念じても、触っても何にも起きないんだよな……。
あと、このステータス高いのか低いのか……
スキルに至っては料理と裁縫って……しかもLv1。結構得意なつもりだったんだが……。
あれ?今んとこチート要素『ステータス』と加護だけじゃね?
加護に期待が高まるな。
と、考え事をやめて一旦現実に戻る。
何はともあれ行動を起こさねば始まらない。
改めて辺りを見渡す。
相変わらずなにもな、ん?
今、遠くの方で何か動いたような気がした。
行ってみよう。
近づいて見てみると、そこには直径1メートル程の水色の水溜りのようなものがあった。
「なんだこれ?あれ?よく見ると動いて……」
と、突然その緑色の水溜りが俺に向かって飛びついてきた。
「うわっなんだ!?てっえ!?服が溶けてる……!!」
すんでのところで回避。
いや、緑色の水溜りとかばっちいし……とかのんびり考えられていたのもそこまで、服が一部溶かされていることに気づいた。
大幅に距離をとる。
え?なにあれ?あーもしかしてあれってあれか?世にも有名な雑魚モンスターの代名詞スライム……え?雑魚?どの辺が?
じりじりプール掃除前のプールのような色をした水溜り改めスライム(仮)がこちらに向かって蠢いてくる。
それに合わせてこちらもじりじりあとずさる。
え?どうすればいい?闘う?どうやって?装備もないし……そもそも攻撃効くの?
と、更に一歩後ずさった瞬間。
ビチャッジュワッ
「うわぁぁぁ!?」
後ろにもう一匹?スライム(仮)がいた。知らずに突っ込んだ左足の靴底がとけた。
「ひっ」
頭の中が真っ白になる。
なにも考えられない。
感情が恐怖一色にぬりつぶされていく。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
弱くわからないまま逃走した。100メートルぐらい離れてようやく一息……
ビチャッジュワッ
今度は右の靴底がなくなった。
「ひっひぃぃっ」
逃げる。転ぶ。ビチャッ……
「うわぁぁぁあぁぁぁ!?」
スライム(仮)はトラウマとなって俺の魂に刻み込まれた。




