仕事と訓練と成果
今日から使用人ライフ。
俺に何すればいいか教えてくれる先輩達を紹介する。
「人数過剰だから究極何もしなくていいっすよ☆」
お気軽に豪快なことを言うのはサアサさんもちろんエルフで金髪碧眼の美少女。なんだが周りも基本美〜なので多分標準。あと、エルフは金髪碧眼がメインらしい。女神様のような薄桃がかった白髪というのはかなり希少らしい。日本人の国に生まれながらの金髪が産まれるようなものなようだ。
「サアサ!よしなさい。我々の職務に限りなどありません!」
こっちのキチッとした感じの先輩はローザさん。もちろんエルフ。そして金髪碧眼。見分け方としてはサアサさんはなんかポワワーンとしてる。ローザさんはできる女秘書みたいな感じ。で、俺はどっち派かというと……
「その通りだと思います!エリシア様が何か働いていらっしゃる限り、我らの職責は果たされているとは言えません!究極的にはエリシア様は何もしなくていいという状況を作らなくてはいけないのです!」
「っあなた!新人なのによくわかってるわ‼︎コレはこれは鍛え甲斐がありそうね!」
がぜん張り切るローザさん。
「ううっまたそっち側が増えたっす。こっち側はどんどん減っていくのに理不尽っすよ。」
絶望的な表情になるサアサさんが俺には理解できない。
女神様のために働けるんだぞ?何を悲観する必要があるというのだ。
そうして俺の使用人ライフが始まる。
どの仕事もほぼ初体験な俺にはきつい仕事だが、女神様のためとなると思えば軽いもんだ。
そんなこんなで昼休憩となった。
早速女神様に貸していただいた攻撃魔法の教本を紐解く。
まずは俺が使えて、戦いに比較的有利な風魔法。
ふむ
ふむふむふむ
ふむふむふむふむふ「昼休憩はおしまい!次の仕事を教えるからついてきなさい。」
「はいっ!」
次の仕事は皿拭きだった。
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「初めてのお仕事はどうでしたか?」
「これまでに経験のないことばかりで大変でしたけど楽しかったです!」
そう言うと女神様はにっこり微笑んで、
「 よかったです。それでは、風属性魔法についてはどうですか。」
「はい。順調です。初歩のものはだいたいできるようになりました。」
「さすがです。これからも頑張ってください。」
「はいっ!」
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使用人の仕事に慣れてくるとこれは確かに人数過剰だと思った。
ちょっと仕事し終わるたびにやることを探すことになる。
そして、次何しようかと思い悩んでいたあの日、女神様に声をかけられた。
「コウイチ君。少しついて来てください。」
彼女に連れてこられたのは訓練場と思しき場所。
そこには筋肉隆々な男エルフが待ち構えていた。
「よう。お前が将来有望な新人か。しごいてやるから覚悟しろよ。」
ちらりと女神様の方を見ると、こくりと頷かれたので、これは女神の試練ということなんだろうと認識した。
「はっ!心得はあまりないのでお手数をおかけすると思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします!」
めちゃくちゃスパルタで剣術を叩き込まれた。
学生の時に授業で剣道をやった時より覚えがいいと感じたのは加護のおかげか、スパルタ故か。
筋肉男エルフさんはオルガさんというらしい。
「お前治癒魔法が使えるんだってな?なら疲労回復も使えるだろ?休憩のたびにそれかけとけ。その方が強くなりやすい。」
オルガさんにはそうアドバイスされた。
以前に思っていたことは正しかったようだ。
ちなみに治癒魔法が使えない人は使える人に治癒してもらって効率をあげるらしい。
それを聞いて、どうも治癒魔法が使えるかどうかは才能依存なんだろうか?と思った。
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ある時は使用人、ある時は見習い剣士、またある時は見習い魔法使いな生活を続けていたある日、大変嬉しいことに女神様にレイニーとのお散歩についてこないか、と誘われた。
ニコニコしながらついていくと、その喜びは途端に恐怖に変わった。
そう。レイニーのお散歩コース=恐怖の象徴の群生地である。
あの恐怖が蘇る。膝が笑う。心臓が早鐘を打つ。
そんな俺の様子を知ってか知らずか女神様は微笑んでおっしゃった。
「特訓の成果を見せて下さい。」
女神様は俺がやつを倒すことをお望みなのだ。
俺は女神様のためと恐怖を押し殺し、奴から一歩距離を取り、風属性魔法『エアカッター』を構築する。
バシュッ。ズバッ。ビチャッ。
「ひっ。……あ?あれ?」
奴は飛び散ってくごがなくなった。
「おめでとうございます。やはりスライムは楽勝でしたね。あと二、三匹試したあとは、ホーンラビットを探しに行きましょう。」
どうやら俺はトラウマを乗り越えたらしい。