始まりはお賽銭から
早朝、俺の姿は家の近くの寂れた神社にある。
別に俺は信心深いわけでもなければ、ましてここに毎日通っている訳でもない。
そんな俺がなぜ今日に限ってこんなところにいるかというと、今日これからあるセン○ー試験に対して不安だからである。
勉強はしたし、模試ではそこそこの成績を残している。
だが、不安なものは不安なのだ。
多分だが俺は本番に弱い。
そして万が一にも失敗したくない。
この一年我ながらよく頑張った。
だがもう一年は嫌だ。許容できない。
なんとしても今年で受かってしまわなくてはいけないのだ。
というわけで、困った時の神頼みである。
まぁ、そうはいっても神様が願いを叶えてくれるとかそんな甘い願望を持っているわけじゃない。まぁ、貰えたら儲けものではあるが。
ここにきているのは気晴らしだ。神様なんて信じていなくとも神社にまいっておけば気持ちも軽くなろうというものだ。
お賽銭は大奮発する。
なぜならその方がパーとするから。
幸いお小遣いには困ってない。
あの忌まわしい受験勉強のせいでろくに使う機会にめぐまれなかったのだから当然だろう。
いかに頑張ったかこの辺から察して欲しいものである。
ポケットの中の財布を取り出し、賽銭箱の上で逆さにしてふる。
ジャラジャラジャラジャラ
音だけだと小銭ばっかに聞こえるだろうがお札も入っていた。
一万ぐらいぶっこんだのではないだろうか?
「うわっしまった!カード取り出し忘れてた!」
最悪だーと嘆いていると、
パンパカパーン
脳内に直接響くかのようにファンファーレが聞こえた。
「⁇なんだ?」
辺りを見回すが特に何もない。
戸惑っていると、さやに脳内に直接響くかのような声が聞こえた。
『おめでとう。君が今入れた分でちょうど累計1000万円に達したよ。記念に異世界旅行をプレゼントしようと思うんだけどどうかな?』
な、なんだ?異世界だと?
異世界だとぉ!?
「はいっ行きます!」
もう受験なんてどうでもいいね!
俺が勉強頑張ったのは、将来楽に生きるためだ。
俺は楽に生きたいのだ!楽に生きるのが夢なのだ!
異世界とか人生イージーゲームの代名詞のようなところではないか!
いくに決まっているだろう。
『では、転移を開始する。良い旅を。』
目の前が一瞬真っ白になり、次の瞬間俺は風の心地よい大草原に立っていた。