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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

私が乙女ゲームのヒロイン・・・絶望だぁ!!!

作者: 小雨
掲載日:2017/02/23

乙女ゲームの設定とかいろいろ大分曖昧。突破的作品。

 「どうして」

鏡に映った自分の姿に私は絶望した。深い碧の瞳に茶色の髪。手入れのされていないその髪はぼさぼさで伸び放題で、所々汚れている。最も汚れているのは髪だけではない。体中、頭の天辺から足の先まで汚れに汚れている。着ている無地の麻で出来たワンピースは穴だらけで、煤だらけ。誰も見向きもしないような孤児。そのはずだった。鏡なんてもちろん身近にはなくて、自分の顔なんて今まで見たことがなかった。自分の髪が茶色いことは知っていた。でも、自分の眼が深い碧なのもやや垂れ気味なのも鼻が思いのほか小さいのも唇の色がやや薄いピンクなのも知らなかった。一つだけ予想と同じだったのは自分の頬が痩せこけていたことだった。まぁ、碌な食べ物を食べてこなかったのだから、やせ細っていることなんて分かりきっていた。ここ数日にいたっては水以外口にしていなかったのだから当然と言えば当然だ。でも、それでも、まだ私は餓鬼のようにお腹に水が溜まって膨らんでいないだけ、食生活はまともなのだろう。でも、そこではない。食べ物がなくても、見た目が悪くても、そんなことはいくらでも我慢できるからいいのだ。

 問題はこの見た目だ。

 この世界で生まれ変わって、七回目の秋が来て、冬になる前に食い扶持を稼ぐためにこのゴミ捨て場で金目の物を拾っていた時に見つけたのだ。少しヒビが入っただけの鏡。前世では当たり前にあった鏡は生まれ変わってからは一度も目にしたことのなかったものだ。私は惹かれるように自分の姿を見た。そして、前世を思い出した。私の前世を思い出した。私は前世で同性愛者の女だった。いや、同性愛者なのは今も変わらないけれど。それは置いておいて、前世で私は私の幼馴染に恋をしていた。彼女は可憐で優しくて、少し背が低めでそのことを気にしていてそれなりに運動神経がよくて、確か体力テストは万年Bで、成績は中の上、得意科目は数学、苦手科目は科学・・・それから、と、違う。彼女の魅力は語っても語ってり尽くせないけど、そこではない。

「カナ・・・リア。私の名前、カナリア」

そして、この見た目。多分、前世で流行っていた乙女ゲーム『君のために僕は生きる』のヒロインだ。きっと普通の人なら、喜んだのだろう。だが、その事実は私にとってはとても辛い。だって、乙女ゲームの恋愛対象って男子なんだもの。憎むべき相手。私の敵。私が愛した彼女は同性愛者ではなくて異性愛者で、だから、私は幼馴染として、親友として接していた。そんな彼女が愛した男は彼女を愛さずに、私を愛して、そのせいで私は彼女から、嫌われて、いや、本心ではなかったかもしれないけれど、一時でも、一回でも、彼女の口から私を嫌う言葉を聞いた。それは絶望だった。絶望でしかなかった。私が本当にヒロインならばこれから私は四方を男どもに囲まれて生きなければならないということだ。絶望だ。絶望でしかない。死にたい。

 でも、ここで死んでしまうということは、私と結ばれるべき女性との出会いを拒絶するということでもある。それにここが乙女ゲームだという確証もない。前世と違う世界なのは魔法が存在するから確実だ。魔法を使える人は少ないけど、確かに存在する。現に私が使える。三年前、魔法を使える人を見つけてそれに憧れて自分にも使えるかなってやってみたら使えた。嬉しかった。でも私はこの力のせいで、王立魔術学院に入らなければならない。あと、五年は有余があるけれど。そこで、私は男どもに囲まれて暮らす羽目になってしまう。

 嫌だ。そんなの嫌だ。でも、ゲームの中で悪役と呼ばれていた彼女たちは魅力的だった。もし、彼女たちに出会えるならば、出会いたい。いや、そもそもで乙女ゲームの世界だとしても大丈夫だ。私は同性愛者なのだから。

―――グ、ググルきゅう

「とりあえず、ご飯食べたい」


―*************―

 前世を思い出してから五年たった。私は十二歳になった。貧乏な私の家に王立魔術学院の入学案内と制服が届いた。父と母は泣いて喜んだ。いや、両親は健在ですよ。度々、食料なくなるし、水しか口にできないことあるし、食い扶持稼ぐためにゴミを漁ることもあるけれど両親は健在だ。両親ともに働きづめだ。なのに家が貧乏なのは両親の体が弱すぎるせいです。一日働くと二日寝込むのです。そのせいです。さぼってるわけではないと、信じています。

「カナリア。パパは嬉しい。お前に魔法の才能があったなんて。制服も似合ってるぞ」

「本当に似合ってるわ、カナリア。ママも嬉しい。将来は安泰ね」

私の母は美人だ。湯あみもできないことも多いから、体中煤だらけで痩せこけているけれど私の母親は原石だ。澄んだ碧の瞳にウェーブのかかったくすんだ(くすんでいるのは湯浴びができていないせだ)茶髪。性格も最高で、包容力があって、最高の母だ。なのにどうして、こんなの(父)と結婚したんだろう。いや、二人がいなければ私は生まれなかったし、父は家族思いで優しいけれどそれなりにそこそこ格好いいけれど。こんな甲斐性なしに惚れなければこんな苦労はしなかっただろうに。いや、でも彼女は幸せだって言ってたけれど。幸せらしいけど。

「うん。ありがとう母様、父様」

「「カナリア、頑張って」」

二人の言葉を聞きながら、私は家を出た。

 そして、入学式。生徒会長が挨拶のために前に出て、悟った。

「あぁ、本当に乙女ゲーム『君のために僕は生きる』の世界だったんだ」

ため息とともに小さく呟く。生徒会長、紅い髪と紅い瞳で格好いい、この国の王子さま、名前はアルバード、アルフォース・・・なんか忘れたけどアルなんちゃらだ。アルなんちゃら・リフォース。名前はともかく氏は正確だ。国の名前と王族の氏は同じはずだから。婚約者はガーネット・カルディ公爵令嬢。深みのあるワインレッドの髪を肩口で切り揃えていて、瞳は透き通った赤色。肌が白くて、すらっとした背は高めで、頭脳明晰で、魔法の腕も確かで、気品のある素晴らしい女性。筆舌に尽くしがたいほど素晴らしすぎる女性。そうであるにもかかわらず、ゲームの中ではあばずれヒロインに婚約者を奪われ、その地位を剥奪され、親に恥さらしと罵られ、陸の孤島と呼ばれる南の修道院送りにされてしまう不憫すぎる女性。まぁ、私は王子などに近寄る気はないから、彼女のこの結末は回避されるはず。

 でもなぁ、ガーネット様とはお近づきになりたいんだよなぁ。一度だけでもいいからあの方の澄んだ鈴のような声でカナリアと私の名を呼んでほしい。ガーネット様が私を好きになってくださったら、いえ、嫌われてもいい。私のことをその他大勢の生徒の一人ではなく、一個人として認識してくださるのなら向けられる感情がどんなものでも受け入れられるのに。でも、彼女の幸福を願うなら、私は彼女に近づいてはいけないのだ。私は遠くから、彼女が王妃となるのを見つめていこう。

「では、諸君。素晴らしき学園生活を送ってくれたまえ」

と、いつの間にか入学式は終わっていたらしい。生徒の流れに従って私も会場を出る。とりあえずはこちらから何もしない限りは関わらずに済むだろう。

 それよりも今は寮にいかねばならない。入学式にぎりぎりで間に合ったせいで、まだ自分の部屋に行っていないのだ。同室の子、可愛いといいな。

「ったぁ、と」

同室の子がどんな子なのか思い描いていたら転んでしまった。早く起き上がらなければ憎むべき敵(男)に接触をはかられてしまう。そう思って私はさっと立ち上がる。そして、何事もなかったように歩きだす。

「待ってください。大丈夫ですか。お嬢さん」

何か、野太い野郎の声が私を追うようについてくるような気がする。でも、きっと私ではない。私の華やかな学園生活に男は要らない。可愛くて優しくていい香りのする女の子に囲まれてウハウハな生活を送るのだ。あぁ、でも私みたいな底辺女が近づいたら迷惑だろうか。というより、私臭いとか大丈夫だよな。入学案内が届いてからは毎日湯浴び・・・いえ、水浴びをしていたおかげで、それなりに清潔なはずだけど。もしも寮のお風呂がいつでも這入れてタダなら、真っ先に入れてもらおう。いや、同室の子の挨拶や先に入寮している女性の先輩方に挨拶することが先だろうか。いや、こんなみすぼらしい恰好で挨拶に行くのはどうなのだろうか。いや、服は制服を着ているから立派なのだけれども。

「待ってください。先ほどそこで転んでいたお嬢さん」

誰か、転んでいた人なんていたかしら。それよりもこの学院の生徒数は確か女生徒だけで四百人ほど。その中にたった一人でもいいから私の同胞が同性愛者がいて、その一人と愛し合うことができたならば、私は本望だ。

「カナリアさん。お待ちください」

確実に呼ばれた。おそらく私だ。いや、同姓同名の別人かもしれない。けれど、周りにその名を聞いて立ち止まる生徒はいない。絶望だ。名前を呼ばれた以上は無視できないじゃないか。何せ私はど貧乏な平民なのだから。覚悟を決めて、振り返る。

「お呼びになりましたか」

振り返った先にいたのは銀色の髪に灰色の眼の男子生徒。おそらくは攻略対象の一人だろう。銀髪と言うことは彼の婚約者はおそらくハウライト・レーゼン伯爵令嬢。銀の美しい髪を持つ麗しい令嬢。と、ハウライト嬢に思いをはせている場合ではない。今は目の前の憎むべき敵を片さねば。

「えぇ。先ほど転んでいましたが大丈夫ですか。カナリア嬢」

「大丈夫です。貴方様が気にするようなことではございません。ところで、何故私の名前を知っておられるのですか」

「あぁ、貴方は有名ですからね。平民でありながら貴重な魔力を持ちこの学院への入学を許可されたカナリアさんですよね」

「えぇ。そうです」

そうか。この学院には制服があるけれど、着用の義務はない。制服を着るのなんて貧乏な平民ぐらいだ。制服を着ている=平民=カナリアとなるわけか。

「あ、わたくしの自己紹介がまだでしたね。わたくしの名はシルヴァ・アッドフィセン。今後ともよろしくお願いいたします」

よろしくなんかするかバーカ。死ね。くそ男子。

「えと、既に存じあげているようですが私はカナリアです。平民ゆえ、氏はありません。貴族の方の眼に余らぬよう生活するつもりですので、何卒ご容赦ください。それでは失礼いたします」

形式的に名乗って私は踵を返す。は、敵の殲滅に十秒以上もの時間を要してしまった。さぁ、私の素晴らしき寮の同室の女子に会いに行こう。足を速めて、敵が何も言わないうちに私は銀髪の野郎が言葉が聞こえないところまで移動する。

 着いた。立派な寮だ。いや、この寮は学院の四つある女子寮のうちの最も貧乏な人の住む寮だから他に比べて規模は小さいし、設備もそこまで充実していない。

「失礼します」

寮の扉を開けて、中に入る。中はシンと静まり返っていた。まさか、誰もいないなんてことはないよな。

「えと、今日入寮の新入生ですか。名前を」

寮長さんらしき女性が奥から出てきた。ふくよかな体躯に白髪。年のせいで皺の多い顔に可愛らしい笑みを浮かべた女性。おばあちゃんって、抱き着きたくなるが我慢、我慢。

「カナリアです。平民のカナリアです」

「あぁ、制服ですしね。平民か。貴方の部屋は二〇一号室です。同室の方はもういらしてますので」

「わかりました」

私はそう言って二階へ上がる。中央の階段を上って左手の一番奥の南側の部屋が二〇一号室みたいだ。そこの前でノックする。

「入りなさい」

その言葉に扉を開ける。左右に別れておかれた二つのベッドの右側の一つにその女性はいた。綺麗な亜麻色の髪は腰の辺りで切り揃えられていて前髪は長いようで右側に流している。瞳は深い橙色、着ている服はセピア色のドレス。ドレスには詳しくからよくわからないが上半身はぴっちりと体の線に沿っていて、スカート部分は広がっておらず、ロングスカートのようだ。丈は足首辺りまで靴はパンプスとか呼ばれるものだろうか。派手な美しさではないが静かな美しさがある。

「失礼します。私、今日から貴方と同室になりますカナリアです。平民ゆえに不躾な真似をすることもあるかもしれませんが、どうかその時は厳しいご指導のほどをよろしくお願い致します」

腰を九十度に曲げてお辞儀をする。

「そう。私はリリーヌ・アドレイス。貴族とはいっても地位は男爵です。ほとんど平民と変わりません。まぁ、一つ今の貴方の注文に答えるとするならば、そのお辞儀は平民がするものです。失礼にはあたりませんが多少目立ちます。お辞儀はこのようにすると良いでよ」

リリーヌはそう言うと自身のスカートの裾を持ち上げて、左足を半歩下げて膝を軽く曲げる。

「教えていただきありがとうございます」

私はそう言ってリリーヌ嬢の真似をする。優しい。なんて優しいのだろうか。あぁ、このお淑やかで優しくて上品で綺麗でまるで、前世で愛した彼女にどこか似ている。いや、決して彼女はリリーヌ嬢ではないし、リリーヌ嬢だって彼女ではない。面影を追ってはいけない。前世の私と今の私がやはり別人であるように。そうだ。前世は前世、今は今。そう、私は今カナリアとしてこのリリーヌ嬢に恋をしようとしかけている。いや、すみません。飛躍しました。今は確かな友情を抱きかけているだけです。

 一ヶ月が経ちました。あれから何度かゲームの中での攻略対象が声をかけてきましたが、失礼にならない程度に言葉を返して、さっさと踵を返していました。リリーヌ嬢とはかなり親しくなれました。親しくなれているよね。好かれてはいないかもしれないけどよく話しかけて貰えるし、同室だし、お傍にいても邪険にされないし。眼中にないだけかもしれないけれど。それでも、彼女の言葉は優しくて私の心に響いて、私は彼女に恋をしました。決して報われないけれど。それでもいい。彼女が幸せになれるのならば、この恋は実らなくていい。彼女は彼女の婚約者クロスフォード・レックス子爵と幸せになるのです。

 それと今のところ、どのルートにも入っていないから、彼らの婚約者の未来は安泰だけど、彼女たちはそれで幸せなのだろうか。ヒロインとの恋に落ちて、制約結婚の意味も忘れるような馬鹿男どもと結ばれて彼女たちは幸せになれるのだろうか。こうなれば、彼女たちを私の魅力で篭絡させて・・・私にそんな魅力はない。そうだ。同性愛者が同姓に気持ち悪く思われずに、異性愛者の同姓を振り向かせ、夢中にさせ、恋をさせるためにはその同性愛者には相当な魅力が要請されるのだ。いや、そもそもで、複数の人間に(恋愛的な意味での)好意を寄せられながら、一人を選ばないなんて失礼にもほどがある。ありすぎる。私が真剣に愛せるのはリリーヌ・アドレイス男爵令嬢だけだ。一方的な片思いに過ぎないし、仮に彼女が私と同じでも家同士の婚約を反故にするわけはないけれど。せめて、将来的にも彼女のそばにいられらいいのに。

「カナリアさん、貴方、かなりもてるわよね」

「いえ、リリーヌ様。そのようなことはございません。皆さま、平民である私が物珍しいだけです。私はただの珍獣です」

「そのようなことはないと思うけれど。まぁ、貴方から近づこうとしているわけではないのは見ていれば分かるから大丈夫だと思うけれど気をつけなさい」

「はい。ありがとうございます。リリーヌ様」

あぁ、今日もリリーヌ様の言葉が微笑みが眩しい。


 三ヶ月が経ちました。学院はもうすぐ長期の夏季休暇となります。この学院の夏季休暇八月初めから九月末までの二月とのこと。休暇中に自分の家に帰ろうとすると往復だけで一ヵ月する距離に住んでいる人もいるらしく、この長期に渡る休みは主にその人たちのためと言った側面が強いらしい。

「カナリアさん。貴方、夏季休暇はどうするのかしら」

私はリリーヌ様の問いに答えようと口を開こうとして

「カナリアの予定?それは是非僕も聞きたいなぁ。ねぇ、教えてよ」

割り込んできた紫の髪の男に心の中で〝死ね死ね光線”を打っておく。リリーヌ様はため息をついていた。

「モラド様、突然乙女の会話に割り込まないでいただきたいですわ」

「おっと、これは失礼しました。リリーヌ嬢。何せ我が愛しのカナリア姫のことだったもので」

「姫?リリーヌ様、どうやらモラド様は私たちには見えない高位の姫君とお話のようです。お邪魔してはいけませんし、部屋に参りましょう」

「あら、そうですわね。カナリアさん。モラド様のお慕いする姫君と同名の貴方がいては話がややこしくなりそうですわね。それでは、参りましょう」

リリーヌ様と一緒に私は寮へと向かう。え、紫男ですか?彼が用があるのは私ではなく、カナリア〝姫”ですから。平民の私とはかけ離れた存在ですわ。

 夏季休暇に入った。両親の様子を見に家に帰り、生存を認し、覚えた初級魔法で家の修繕をした。それから、家の近くのパン屋で休暇が終わるまで毎日働く。リリーヌ様に二ヵ月も会えないのは寂しいけれどリリーヌ様も領地で父や母、兄の仕事を見習いながら手伝えることを手伝うと言っていたから、私も頑張るのだ。もちろん課題も忘れない。・・・あと、くそどうでもいいけどバイトを始めて四日ぐらいに攻略対象という名の憎むべき敵が店の近くに来るのを見たから販売ではなくキッチンのほうに移してもらった。そして、私は休暇の最終日のバイトが終わり、二か月分のバイト代を貰い、二割だけお金を抜き取って残りを全部母に預ける。

「「カナリア、ありがとう。ごめんね。私たちの虚弱体質のせいで苦労をかけて」」

「大丈夫だよ。二人とも私はもう学院に戻るね」

休暇最終日の今日はバイトは午前中で終わったから今から歩けば夜には寮に着ける。

 夜、私が寮に着くとリリーヌ様はもう部屋に戻っていた。

「カナリア。お帰り。私はこれからお風呂に行くけれど一緒に行くわよね」

「お久しぶりです。リリーヌ様。もちろん私も一緒に行きます」

二ヵ月ぶりのリリーヌ様。そして、一緒にお風呂。寮に備え付けのお風呂だから二人きりではないけれどそれでも、リリーヌ様と一緒にお風呂・・・鼻血出そう。


 十ヶ月が経った。リリーヌ様との中は順調だ。あくまで、友人としてだけれども。リリーヌ様とクロスフォード様との仲も良好だ。もともと二人の家は古い付き合いで二人も子供のころから仲が良かったらしい。家同士の結びつきの強化などの政治的な意味合いもあるかもしれないが二人の場合は恋愛的意味合いも強いかもしれない。ちなみに、ゲーム的要素の方は好感度が下がりそうなことを片っ端からやったかいがあって憎むべき敵(攻略対象)とは距離を置くことができた。進級試験にも合格、私たちは無事に第二学年へと上がれた。・・・ちなみにこの学院は通常なら四年で卒業である。

―*************―

 入学してから四年経った。今私はきちんとこの学院の最上学年に所属している。もちろん、リリーヌ様、クロスフォード様も一緒である。魔法の腕もかなり上達した。そして、今日私たちは卒業する。

「そういえば、カナリア。貴方卒業後はどうしますの」

「私ならレックス領で呪い士として働く予定です」

「あぁ、貴方は魔法の中でも特に呪いの類が得意だものね。・・・えっ!?レックス領で働くって、クロスのところってこと」

「えぇ、そうですよ。リリーヌ様。ちなみに私が呪い士として、レックス家に仕えるものとして言い渡されている初任務はリリーヌ様とクロスフォード様の結婚式の準備手伝いです」

「それは当日も参加してくれるのよね」

「招待状を頂ければ」

リリーヌ様の笑顔に私は今日も癒されている。

 

カナリアは記憶力はあるはずなのに男性の名前が基本的に覚えられません。ただし、父親とクロスフォード様は別です。父は言わずもがな、クロスフォード様はカナリアが愛するリリーヌ様が大切になさっている方だから。とりあえず、リリーヌ様の大切はカナリアにも大切だからリリーヌ様の大切に含まれる男性の名なら覚えられる。

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