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呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
9/27

Hエンド

召喚者「聖剣の鍛冶屋」

 一人の筋骨隆々の身長の低い老人が倒れていた。

 急ぎ神官が近づき、気つけ粉を吹き入れると、彼は呻りつつ上体を起こした。

 そして周りを状況を見て、彼は少し狼狽えた。

 その様子を見て、神官に抱えられ立つ老人の前に王は立ち、まずいきなり召喚などをしたことを詫びた。

 そして、世界が危機的状況であることを告げた。

 気候変動、増える地震、村を襲うなど活発化する魔物、極め付けは集団行動で国を潰す魔物の軍団。

 それらのすべてを引き起こした存在、魔王を討伐せねば世界は魔物に飲まれてしまうと王は老人に伝えた。


「って言われてもなあ。」


 老人はポリポリと頭を掻き、首をかしげた。


「お願い致します、『救世主』よ、この世界をお救い下さい。」

「でもよ、王様、俺は勇者でもなきゃりゃ魔術師でもない、鍛冶屋だぜ?俺の世界を救った勇者の剣を打ったことはあってもよ…。」 

「勇者の剣を打った!なんてすばらしい!なんでも欲しいものは言ってください!すぐに用意をさせますので!」


 そう言うと、王は大臣に命令し、即座に『救世主』の家と炉を用意するように命じた。

 あわただしく大臣と文官が出ていく中、老人は王と面と向かって話をしていた。

 

「ご命令とあれば魔王を討てる剣を作りますが…。私はあくまで打つだけですぜ。」

「それで構いません。とにかく、一刻でも早く剣を打っていただきたいのです。」


 わかりましたよとぶっきら棒に王に伝え、老人は神官に支えられ王宮離れを出ていった。

 大臣の仕事は早く、翌日には炉付の家が老人に用意されていた。

 そして同じように老人も仕事が早く、家に住んで三日で魔王を討つ剣を作り上げてしまった。


「確かに剣は作りましたがね、これは正しい者が使わないとただのなまくらですぜ。ま、後は王様の方でやってくださいな。」


 老人の希望により、また離れの魔法陣を使い彼は元の世界へと戻っていった。

 王宮居た人々は、老人に多大なる感謝の言葉をかけ、彼を見送ったのだった。



 王は魔王の討てる剣、通称聖剣の使い手を探す為、奔走する日々が始まった。

 まずは騎士団や高名な剣士などに使わせたが、誰一人大根すら満足に切れるものはいなかった。

 続いてならず者が多いが確かな技量を持つ傭兵たちを集め、剣を握らせたが、彼らでは人参すら切ることができなかった。


「この剣が使えるのは何も騎士様とは限りません。罪人や奴隷、はては女子供の可能性だってある。」


 老人の残した言葉に従い、王は王都に居る人間をすべて集めて剣を握らせたが、彼らではジャガイモすら両断できなかった。

 そして、王とか離れた街、開拓村、はては隠れ里などに赴き、王はこの国すべての人間に剣を握らせたが、誰一人として牛蒡すら満足に切ることはできなかった。

 とても暗い顔をした王は、老人が最後に残した言葉が頭の中で木霊していた。

 

「もしかしたら、もう死んでいる可能性もありますがね。ただ、そうなったら次の使い手を剣が勝手に定めるようにはなってますが…。」


 王は誰も剣を持てないことに絶望し、魔物に殺されるならと自ら毒杯を仰ぎ、玉座の間で命を絶った。




 元人間の王都だった廃墟で、一人、いや一匹の魔物が探検と称して遊んでいた。

 人間を滅ぼし魔物だけになったこの大陸では、廃墟で遊ぶことが普通に行われていた。

 魔物が玉座の間に入ると、そこには朽ちた椅子に座るミイラと床に刺さった錆ひとつない剣があった。

 なんとなしに剣に触れ、両の手で引き抜くと、剣はまるで抵抗を感じさせず引き抜け、魔物が剣を一振りすると、斬撃が飛び廃墟が一部切り取られた。

 心なしか、剣が光っているようにも見えた。

 この魔物、のちに剣の悪魔と呼ばれた彼は、剣を引き抜いた一年後、憎き人間の仇、暴虐な魔王に反乱を起こし、その心臓を貫いたのだった。



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