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Fエンド
召喚者「勇者」
揺り籠が一つ、魔法陣の真ん中にその姿を現していた。
「揺り籠…?」
ローブの内、誰が言ったかわからないが、その場に居た全員が思った疑問であった。
王が命じ、一人の若い神官が揺り籠に近づく。
彼女は揺り籠にかかっていた、真っ白で清潔な布を取ると、中に居た『救世主』が声を上げた。
正確には泣き声であったが。
彼女は咄嗟に『救世主』を抱き上げ、小さい頃自らの弟にしたように体を揺すって疳の虫を治めた。
「『救世主』が、赤ん坊か…。」
近衛兵の隊長が、小さく言葉を漏らした。
今、王国は魔物の脅威に晒されている。
この子が『救世主』だとしても、成長して魔王を倒す前に、先に王国が魔王によって滅ぼされるだろう。
そんなことが分かっているからこそ、ローブの一団は、誰も、何も言わず、ただ神官にあやされている赤子を見るだけだった。
静まり返った王宮離れは、赤子をあやす神官の、美しい子守唄がただ木霊するだけだった。




