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呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
2/27

Aエンド

召喚者「革命戦士」

 緑の薄汚れた長ズボンに赤いチェックシャツ、ぼさぼさの整えていない頭髪を持つ丸メガネの男が魔法陣の中心にうつ伏せで倒れこんでいた。

 彼は手に液体の入った一升瓶を持ち、肩にかけたバックからは同じものがいくつも顔を出していた。

 おおっ、と小さな歓声が上がり、人々は倒れている男を遠巻きに見ていた。

 しばらくすると、男は頭に手を当て、立ち上がった。

 目の下の隈は黒く、左胸のポケットには小さく赤いバッチがついていた。

 彼は何回か目をしばたたくと、周りを一度ぐるりと見回し、そしてローブかぶる人々を見た。

 一つの塊になっていた人々の中から、一人の中年の男が彼の前に進んでいった。

 彼は警戒し、二三歩後ろに後ずさった。

 そして、中年の男は、下膝をつき、彼をまっすぐに見た。


「救世主よ、よくぞおいで下さいました。」

「きゅ、救世主?」


 中年の男は、自身をこの国の王だと彼に告げた。

 そして、護民官である三人の辺境伯が王族排斥を掲げ反乱を起こしたこと、そこで、異世界の『救世主』たる人間を呼び出し、この窮地を脱しようとしていることを告げた。

 彼は王の話を聞いていくうち、だんだんと顔が険しくなっていった。

 彼が、恐ろしく渋い顔をして王に問うた。


「貴様らは、革命を否定するのか。」


 王は一瞬呆気にとられた。

 革命を抑えるために呼んだ『救世主』が、その革命を支持するような発言をしたから、当然と言えば当然だった。

 そして、王は一言、毅然と答えた。


「否定する。革命は政治の混乱しか招かんからな。」

「そうか。」


 彼は、それだけ短く答えると、手に持っていた瓶に新聞紙を刺し、ライターで火を付け、後ろに固まっていたフードの姿の人々に投げつけた。

 真ん中の一人に瓶が当たり割れると、中の液体がまわりに飛び散り、被った人を次々と焼いていった。

 悲鳴が上がる中、彼は無いごとも無いかのように瓶に火を付け、投げつけた。

 いつしか、そこには彼一人が立っており、後は燃えた炎がゆっくりと部屋を舐めるだけだった。




 そうして、皮肉にも体制派が呼び出した『救世主』によって、革命は成功されたのだった。

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