Mエンド
召喚者「勇者の子孫」
翼に剣が書かれた紋章の鎧と盾を持つ、若くがっしりとした好青年がそこに居た。
意識がなくうつ伏せに倒れていた彼だったが、しばらくすると頭を摩って起き上がるのだった。
そして、周りをきょろきょろと見わたす彼に、王は近づき、そしてフードを取った。
王を見た彼は驚き、足元に置いてあった剣を乱暴につかむと、いきなり王に向かって切りかかる。
しかし、その剣は王を傷つけることは叶わず、彼の前に躍り出た近衛兵によって防がれた。
「王よ、いかがいたしますか。」
ギリギリと彼の剣を片手で防ぐ近衛は、王に問うた。
「やれやれ、今回も失敗とは…。適当に膾切りにしておけ。」
近衛は短く答え、もう片方の手で、青年を言葉通りの膾切りにしたのだった。
急ぎ神官が駆け寄り、王の無事を確認する。
もし、もし玉体に何かあったら、大きな問題になるからだった。
王は近くにあった椅子に腰かけ、宮廷魔術師の筆頭を呼び寄せた。
「のう、かれこれ10回は召喚を行っておるが、本当に『救世主』来るのか。」
人の脊髄と剥いだ顔の皮で作られた杖を持つ、二頭身の緑の魔物は王にそう問われた。
「王よ、もともと召喚は人間が作りし魔術。なれば人の『救世主』が現れやすいのも致し方ありません。しかし、過去には異世界の王を呼び出したこともある、きちんとした魔術です。」
「ふむ、それもそうか。では、少し時間をおいたのち、再度召喚を掛けようぞ。」
王が皆に言葉を伝えると、皆かぶっていたフードを外す。
鬼、狼男、トロールなど魔族の顔がそこから現れた。
彼らは待ち望むのだ。
人によって住処を追われる彼らを救う『救世主』が現れるのを。
何度失敗しても、彼らは召喚を行う。
人によって蹂躙されない平安を時を得るまで。
『救世主』を待ち望むのだ。




