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呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
14/27

Mエンド

召喚者「勇者の子孫」

 翼に剣が書かれた紋章の鎧と盾を持つ、若くがっしりとした好青年がそこに居た。

 意識がなくうつ伏せに倒れていた彼だったが、しばらくすると頭を摩って起き上がるのだった。

 そして、周りをきょろきょろと見わたす彼に、王は近づき、そしてフードを取った。

 王を見た彼は驚き、足元に置いてあった剣を乱暴につかむと、いきなり王に向かって切りかかる。

 しかし、その剣は王を傷つけることは叶わず、彼の前に躍り出た近衛兵によって防がれた。

 

「王よ、いかがいたしますか。」


 ギリギリと彼の剣を片手で防ぐ近衛は、王に問うた。

 

「やれやれ、今回も失敗とは…。適当に膾切りにしておけ。」


 近衛は短く答え、もう片方の手で、青年を言葉通りの膾切りにしたのだった。

 急ぎ神官が駆け寄り、王の無事を確認する。

 もし、もし玉体に何かあったら、大きな問題になるからだった。

 王は近くにあった椅子に腰かけ、宮廷魔術師の筆頭を呼び寄せた。


「のう、かれこれ10回は召喚を行っておるが、本当に『救世主』来るのか。」


 人の脊髄と剥いだ顔の皮で作られた杖を持つ、二頭身の緑の魔物は王にそう問われた。


「王よ、もともと召喚は人間が作りし魔術。なれば人の『救世主』が現れやすいのも致し方ありません。しかし、過去には異世界の王を呼び出したこともある、きちんとした魔術です。」

「ふむ、それもそうか。では、少し時間をおいたのち、再度召喚を掛けようぞ。」


 王が皆に言葉を伝えると、皆かぶっていたフードを外す。

 鬼、狼男、トロールなど魔族の顔がそこから現れた。

 彼らは待ち望むのだ。

 人によって住処を追われる彼らを救う『救世主』が現れるのを。

 何度失敗しても、彼らは召喚を行う。

 人によって蹂躙されない平安を時を得るまで。

 『救世主』を待ち望むのだ。


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