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呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
13/27

Lエンド

召喚者「末期患者」

 一人、病院服姿の男が倒れていた。

 急ぎ神官が近づき、治癒の奇跡を施したが、男は手遅れであった。

 宮廷魔術師や王の間で召喚の不備不手際を糾弾、また魔族が迫る問題にどう対処するか一悶着ある間、召喚された死体は王都はずれの医療院に運び込まれた。

 そこでは、異世界の人間がどのような作りをしているか知りたい研究員がこぞって集まり、公開人体解剖が行われていた。

 直管に近い腸や三角定規のような肝臓、四角い心臓などまさに異世界といった作りに、研究員たちは歓声を何度も上げるのだった。

 そして、変わった臓器と共に、体の中央にある黄色く丸い臓器がトレーの上に取り出された。

 他の臓器はそれなりの意味や結論が導き出されたが、その黄色い臓器だけは一切の結論が出されなかった。

 しばらく研究員同士で相談があったのち、臓器そのものを解剖すると言った結論が出た。

 そして、一人が小さいナイフを持ち、臓器を慎重に割ったのだった。

 中には黒い液体が詰まっており、トレーの上に液体が広がった。

 おおっと歓声があがった時、臓器を解剖した研究員が解剖道具を巻き添えに倒れた。

 何事かと他の研究員が近寄ろうとしたが、彼らもその場に倒れていくのだった。



 彼らが解剖した臓器、この世界で言うところの「毒袋」は、各種のウィルス、菌を体内で隔離しておくための臓器であった。

 本来、召喚された者の世界では死んだ人間を必ず燃やす義務があった。

 毒袋の中身を、一切漏らさないための処理である。 

 そうとも知らず空気が触れる空間で開けた毒袋は、その世界の人間を数秒で殺すには十分な強毒性の細菌が多く居た。

 そして、その細菌は、空気に乗り、近くの街を飲み込み、王都、平野、魔王の城、この世界すべてを覆い、すべての生き物が息絶えた死の星になったのだった。

 そう、死せる『救世主』により、この星は誰も争わず、明日の心配も無い、それはそれは平和な星へと姿を変えたのだった。

 

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