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呼び出し英雄物語  作者: 東京多摩
10/27

Iエンド

召喚者「勇者(二回目)」

「いってぇ…。いったいなんなんだ?」


 剣を携え皮を蝋で固めた鎧を着込む、一人の若い剣士が魔法陣の中央に居た。

 フードの人々が歓声を上げると、剣士は即座に剣を抜き、フードの人に切先を向けた。


「ええぃ、今度は邪教集団か!?来るなら来やがれこのやろう!」

「いえいえ、私どもは邪教なんて者ではありませんよ、『救世主』。」


 そう言って、被っていたフードを取り、王が剣士の前で膝をついた。


「『救世主』よ、どうぞ世界をお救い下さい。」


 そう言って、頭を垂れるのだった。

 事情が呑み込めない『救世主』に、一人の大臣が近寄り、世界の状況を説明した。

 世界の生ける生命をすべて消さんと、邪神が復活を果たしたこと。

 この世界における勇者や剣豪、騎士団をいくら差し向けても、皆失敗したこと。

 そして、最後の手段として、異世界から邪神を倒せる『救世主』を呼び出したこと。


「つまり、俺にその邪神を倒せってことかい?」

「左様でございます。」

「なるほどねえ…。」


 『救世主』は、一度体をよく伸ばすと、王と向かい合った。


「俺は、実はこんなのが二回目なんだ。だからな、今回もその邪神ってやつを倒してきてやるよ。」


 フードの一団はわっと歓声を上げるのだった。

 翌日、早速とばかりに『救世主』は何人かの護衛と共に旅立った。

 王や城下町の人々は皆、祝福をもって勇者の旅立ちを見送った。

 それから、ひと月、ふた月、半年たっても勇者は帰ってこず、段々と人々は不安になってきた。

 そんな最中、護衛の一人が、こっそりと王宮に戻ってきた。

 彼からの報告は、「失敗した。」とただ一言だった。

 『救世主』は「邪神には弱点がある。そこを突けばすぐに終わるさ。」と何度も言っていた。

 しかし、邪神と対峙した際、その弱点、心臓を貫いても、邪神は平然としていた。

 弱点のわからない邪神に対抗できない『救世主』は殺され、護衛も自身を残して皆死んでしまったと、彼は涙ながらに話したのだった。



 それは、邪神が世界のすべての生命を消す、おおよそ一か月前の結末であった。



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