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ルリ-フリルラとチェーレが出会って数日が経った。
チェーレはルリ-フリルラにどこから来たのかとか、これまでどうやって過ごしていたのかとか、あまり詮索する気はないようだった。
彼女も彼に自分の昔話はしなかったが、彼女の自然の友達のことについては楽しそうに話してくれた。
一見同じように見える草花1つ1つにも人間のように違う性格があること、数多くある風の中でも少し生意気だけど気前のいい風が彼女によくしてくれていること、公園の大木はとても優しく、いつも親身になって話を聞いてくれる母のような存在であること。
どの話もルリ-フリルラにとって新鮮なものであったため、彼はチェーレの話にしっかり耳を傾けていた。
それが彼女にとって嬉しかったようで、いつも話し終わると嬉しそうに微笑んでいた。
しかし、ルリ-フリルラは彼女に言われたようにずっとその場にいたわけではなかった。
チェーレは大木の上で夜を過ごすと言っていたし実際にそうしていたが、ルリ-フリルラは寝る必要がないため、彼女と同じように目を瞑っているだけではとても退屈だった。
チェーレが寝静まると、ルリ-フリルラは大木から降りて、彼女と出会う前と同じように夜の街を当てもなく彷徨って過ごした。
そして、別にそうする義務はなかったが、律儀に朝がくる前に彼女の元へと戻っていた。
そんなある日、突然チェーレが街に行ってみたいとルリ-フリルラに伝えた。
「いきなりどうしたんだよ」
よく分からないといったような視線を彼女に向けるルリ-フリルラに対し、チェーレは瞳を輝かせて彼に言うのだった。
「私、あんまり街には行ったことがないの。たまに行くこともあるんだけど、風さんがついてきてくれても1人じゃ心細いこともあって……。でも、今はルリちゃんがいるから大丈夫かなって思うの!」
「そう……。別に行くのはいいけど、その格好って結構目立つんじゃないか?」
ルリ-フリルラが指摘したように、彼女は片翼を抜きにしても正直街にいる人間からは浮いてしまいそうな格好をしている。
しかし、彼女の返事は案外あっさりとしていた。
「大丈夫だよ。街の人たちはみんな、自分のことで忙しいみたいだから」
確かにルリ-フリルラが見た街の人間たちは忙しなく歩いていたが、そういうものなのかといまいち納得できなかった。
しかし、今のところルリ-フリルラ自身もそれなりに過ごせているし、案外そういうものなのかもしれない。
「はあ、分かったよ。で、いつ行くんだ?」
一息ついてからそう言ったルリ-フリルラに対し、
「今から!」
「えっ?」
チェーレは満面の笑みでそう答え、目を丸くするルリ-フリルラを気にする様子は見せず、くるりと体を街の方へと向けた。
「ねえねえ、ルリちゃん」
「なんだよ」
「手、繋いでもいい?」
人通りが多くなってきた頃。
不安そうな表情を浮かべるチェーレがルリ-フリルラにそう訊ねてきた。
手を繋ぐとなると、自然と相手が自分に触れることとなる。
人間が触れることのできない体のルリ-フリルラにとって、それは彼が人間ではないとバレてしまうため望ましい質問ではなかった。
「……駄目だ」
「どうして?」
「どうしても」
「服の裾でも駄目?」
「駄目」
「そっかぁ……」
数回のやり取りの後、チェーレは明らかにしょんぼりと俯いてしまった。
ルリ-フリルラは若干心苦しくなったが、こればかりは仕方がないと思うしかなかった。
なんとなく気まずい空気が流れたまま2人で歩いていると、
「自分めっちゃかわええやん。せやのにそんな顔してたらもったいないで?」