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18!  作者: ミズキカオル
7.会えない霊
33/33

 山田国生(やまだくにお)は約一月に事故死した。

 勢いよく突っ込んできたトラックとコンクリート塀の間に挟まれ、体は素人目では誰だか判別不可能なほど酷い有様になってしまった、らしい。

 というのも、一応死体は現場から回収されたものの、とても人に見せられる状態ではないとの遺族の判断で、葬式の時は誰もあいつの体と対面しておらず実際どれほどの酷さだったのか、少なくとも

俺たち同級生は誰も知らない。


 山田国生がいなくなってからの教室はとても静かだった。

 さすがに時間の経過によって元に戻りつつはあっても、やつがそこにいた時ほどの活気はそこには無い。

 あいつはまごうことなき人気者で、常に周りに男女問わず人が集まっていて騒がしいほど賑やかだった。

 誰彼構わず気さくに話しかけ、それは“死んだ人間が視えるらしい不気味なやつ”と距離を置かれていた俺に対しても同じだった。




 昔はその差に全然気づいていなかった。

 物心ついた頃には死んだ人間も当たり前のように視えていたし、足が地面についていなかったり足元が透けていたりしても、そういう人もいるものだと思いこんでいた。

 昔から人と話すことは得意な方ではなかったが、話しかけられたら最低限は応えていて、当時はまだ小さかったからか余り過干渉されることもなく、すれ違った近所の人に挨拶しているような感覚でいた。


 でも、さすがにその状態は長くは続かず、やがて両親や親戚、それ以外の人たちからも“何もないところに向かって1人で喋っていておかしい”と指摘されるようになった。

 その時は周りの人たちが視えていないことに対して疑問を持っていたものの、やがて自分にだけ視えているのは未練を残した死人の姿だと知り、少なくとも周りで同じように彼らが視えている人はおらず、確かにおかしいのは自分の方だったのだと理解した。


 次第に周りの生きている人間は俺を極力避けるようになり、逆に死んだ人間――すなわち幽霊の方は都合が良くなったからか、自身の未練絶ちを手伝ってほしいと声をかけてくるようになった。

 最初こそ暇つぶしで適当に付き合ったりもしたが、1つ解決するだけでもとても面倒なことが多く、しかも我も我もと霊が集まってきて手に負えなくなり、一度ついに大きく怒鳴り散らしてしまったことがあった。

 ちょうどそれを聞いていた親に精神異常なのではと疑われ病院で検査を受けたが異常はなく、それ以降両親からの俺に対する不信感は一層高まったように思う。

 いっそこれは精神異常で、今まで視えていたモノは全て自身の幻覚だった方がよっぽど良かったことか。


 そんなことがあろうとも霊側からしたら知ったことではなく、変わらず話しかけてくるやつは絶え

なかった。

 相手の生死に関わらず極力接触は避けようと思っても、それは決して完全に避けられることではない。

 こちらが拒絶してもずかずかと踏み込んでくるようなやつも少なくはない。

 山田国生もその1人だった。

 それでもやつは、きっと後にも先にも1人といない“友”と呼べる存在だった……かもしれない。




 あいつは顔も頭も運動神経も良く、前述の通り人気もあり、よく冗談を言っては自分も周りも笑っているようなやつで、何においても平均以下の俺からしたら何不自由なく過ごしているように見えたし、実際の言動からしても特別不満なことがあるような様子はなかった。

 それでもやつは今、確かに霊としてこの世に存在している。

 霊が他人の死体を借りて生きた人間のように生活するなんて話は聞いたことすらないから分からないが、恐らくあいつにも思い残していることがあるはずだ。


 もし思い当ることがあるとしたら――。

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