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18!  作者: ミズキカオル
6.七瀬壱斗と親友と
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 壱斗とは高校1年生の春、クラスメイトになったことによって出会った。

 壱斗はまあ俺が言うのもなんだけどはっきりと言ってしまえば地味な顔で、瞳のオレンジ色は綺麗だったけど細くて目立たず、ツンツンとハネた黒い髪や太めの四角い黒縁眼鏡が彼の印象を重たくしているのは確かだった。

 そんな外見とは裏腹に、性格は明るく華やかで、よく笑うし友達思いのいいやつだった。

 俺も壱斗もどちらかといえば真面目な生徒だったのもあってか、勉強の話もくだらない話もたくさんして結構すぐに仲良くなった。


 胡桃とは違うクラスだった(というかあまり双子で同じクラスにされることは無いらしい。俺としては好都合だった)から、しばらくの間はたまに行方不明になる胡桃を探しに行っていたことを除けば特に何事もない生活を送っていた。

 そんなある日、どういうきっかけだったかは覚えていないけど胡桃と壱斗が出会った。

 覚えてないくらいだからきっと何気ない日常の1コマだったんだろうけど、俺はその時の胡桃の表情だけははっきりと記憶に残っている。

 あんなに人間らしい表情をした胡桃を見たのは、あの時が初めてだったからだ。


 高校でも胡桃は“不思議な子”として噂され、距離を置かれていた。それでも壱斗は気にせず彼女と接してくれた。

 俺の姉だったからなのかもしれないけど、きっと彼にはそんな理由づけは必要なかったんだと思う。

 七瀬壱斗はそういうやつだった。

 一方、胡桃は壱斗と出会ってから明らかに様子が変わった。

 前述の通り彼女は壱斗の名前を一発で覚えただけではなく、今までの浮遊癖が何故か急にぐっと減った。

 さらに、壱斗の前では今まで見せなかった表情をころころと変えて見せた。

 胡桃は壱斗に恋をしていた。

 それは意思疎通なんかできなくてもはっきりと分かった。


 壱斗は今までの胡桃のことをあまり知らないからか、“話すと普通に笑ったりするかわいい女の子”という認識でいたようで、彼女の恋心には気づいていないようだった。

 2人は俺という共通の知り合いがいることを除けばそんなに接点があるわけでもなかったし、変に口出しして関係に水を差すのもあれかと思って壱斗には胡桃の気持ちについては話さなかった。

 もちろん、胡桃にも。


 進級して2年生になっても、胡桃と壱斗の関係は良くも悪くも無難なままだった。

 それでも胡桃は幸せそうだったし、壱斗も俺や他の友達といる時と同じように楽しそうにしていた。

 だから2人の関係がこれからどう変わっていっても、俺は2人をずっと見守っていようと思っていた。

 だけどそんな日々は唐突に終わった。

 壱斗はいなくなってしまった。


 事故現場には大量の血と、大量の赤い薔薇の花びらが落ちていたらしい。

 その薔薇は壱斗が持っていたのか、それとももう1人の被害者、山田国生(やまだくにお)くんが持っていたのかは分からない。

 赤い薔薇は、胡桃の好きな花だった。


 壱斗の死体が行方不明という情報が流れてから、胡桃は再び変わってしまった。

 ぐっと減っていた浮遊癖がかなり酷くなり、学校も行かずどこでもないどこかへ行ってしまう日が増えた。

 もちろん、壱斗といた時のような表情は見られなくなった。


 これは俺の予想にすぎないけど、胡桃は壱斗を探しているんじゃないかと思う。

 行方不明といっても壱斗は確実に死んだと判断されているし、俺も認めたくはないけど事故の状況からしてそうなんだろうと納得している。

 だけどきっと、胡桃はそれを受け入れられていない。

 なんといっても、彼女が初めて心を動かされた人物であるから。




 そんなこんなで、今日も俺は胡桃を探している。

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