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「さて、今日はこの辺にしておこうか。俺もそろそろ次の実験の準備に取り掛かりたいしな」
と、博士。
壁に掛けられた時計を見ると、時刻はすっかり夕刻となっていた。
「もしまた魔術や実験のことを知りたいと思ったら、今日みたいにそこまで忙しくない時だったら見学は歓迎するよ。まあ実験の見せられる範囲は限られてるけどな」
博士はそう続けてから立ち上がり、自身が腰掛けていた椅子をくるりと回し長机の下へと収めた。
YOUもつられるようにして立ち上がると、ぱたっと椅子を折り畳んだ。
そして、チェーレに立ち上がるようにジェスチャーで促し、立ち上がった彼女が腰掛けていた椅子も手際よく畳み、自身が使っていたものと重ねる。
「ほれ、お前も」
「……ああ」
今度はあまり気乗りしないような表情で、立ち上がったルリ-フリルラの椅子も同じように畳んでまとめた。
「置いとく場所は適当でええやろ」
「ああ、ありがとな」
博士はYOUに礼を言ってから、扉の方へと向かい戸を開けた。
「3人とも気をつけて帰れよ」
ルリ-フリルラ、チェーレ、YOUの3人は、チェーレが寝泊まりしている公園まで来ていた。
ここまでの道中で、YOUはチェーレから自然の友達との話や、ルリとは最近出会ったばかりであることを聞いていた。
「へえ、ここがチェーレの暮らしてる公園か。今まで生きてきたけど、こんなとこあるって知らへんかったな。あ、もう今は死んでるんやけど」
「えへへ、綺麗な所でしょ?」
「せやな。ええとこやと思うで」
広々と開けた景色を眺めながら言うYOUに対し、チェーレは誇らし気に、しかし少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。
ルリ-フリルラは、そよそよと吹く風によって草花が揺れる音をぼんやりと聞いていた。
「今日はもう日が暮れちゃうけど、またよかったらYOUくんも遊びにおいでよ」
と、チェーレ。
「おう。死んでから学校も宿題もなくて暇やし、チェーレに会えるんやったらいつでも行くわ。……またかえでに会ったらなんて言われるか分からへんから、出歩くのちょっと怖いけどな」
YOUはそう言って少し困ったように笑い、じゃあそろそろ帰るわと言って歩き始めた。
「ばいばーい、またね!」
チェーレはYOUの背中に向かって姿が見えなくなるまで大きく手を振り、ルリ-フリルラはそんな2人を静かに眺める。
チェーレは振っていた手を下げると、ルリ-フリルラの方を向いてふふっと無邪気な笑みを見せた。
「今日はいろいろあったね」
「そうだな」
「……ルリちゃんも、いつか昔のお話してくれる?」
「えっ……?」
不意の問いにルリ-フリルラが驚いたように視線を移すと、自身をまっすぐと見つめるチェーレの大きな瞳とぶつかる。
「――なんてねっ。変なこと聞いてごめんね」
チェーレは軽い調子でそう言うと、慣れた手つきで大木の幹を登っていった。
「私、今日はもう寝るね。おやすみ」
残されたルリ-フリルラは大木の方を見つめて一息つき、その場を離れて歩き始めた。




