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やがて、3人は目的の建物の前に辿り着いた。
やはりその建物も真っ白で正方形に似た形をしている。
YOUが両開きの扉の向かって右手側を押し、彼に続く形でルリ-フリルラとチェーレも中へと歩みを進めた。
1階はロビーのように視界が開けていてこれといったモノも人もなく、3人は2階へと続く階段へ向かう。
特別長くも短くもない階段を上りきると、そこには中央にガラス張りの仕切りがされている研究室があり、それを囲むように四角い道を作っている廊下、そしてその廊下を挟んだ壁側には一辺に2部屋ずつ、こちらはガラス張りではなく建物の外観と同じように真っ白な壁と扉の部屋が配置されていた。
廊下でも中央の研究室でも、白衣姿の人たちが忙しそうにそれぞれの仕事に務めていた。
中央の研究室には、言葉では言い表しがたいような大きくて複雑な形をした機械がいくつも置かれている。
「なんやよお分からへんけどすごいな……」
YOUがぽつりと声を漏らしたが、他の2人は何も答えなかった。
少しの間3人が呆然と立ち尽くしていると、壁際の部屋の1つの扉が開き、そこから彼らが唯一見知っている姿が現れた。
「研究所へようこそ。どうだ、なかなかにすごいだろう」
少し得意気ともとれる博士の声。
YOUはなかなかなんてもんちゃうで、と返し、研究室の人や機械の動きに目を奪われているルリ-フリルラとチェーレの方へと視線をやった。
博士は2人の表情を見てふっと微笑み、
「今あそこでやってるのは魔力の大きさを測る研究だな」
「魔力の大きさ?」
そこでやっと視線を博士の方へと向けたチェーレは、不思議そうに大きな目を瞬かせる。
「ああ。魔術ってのは使う人、まあ魔術師のことだな。その人よっても使う魔術の種類によっても力の大きさが全然違ってくるんだ。それが魔術師にとっても魔術を受ける対象に向けてもどう影響を与えていくのかってのを1つ1つ数値化してるんだ。機械は透明じゃないから見えないと思うが、あん中には今実験に協力してもらってる魔術師が入ってる」
「へえーっ」
文字通り目をキラキラと輝かせて再び研究室に目を向けるチェーレ。
対し、ルリ-フリルラは博士の言葉が全く頭に入ってきていないようだった。
それを察してか、
「見学なんだから別に実験の内容なんてちゃんと理解しなくても大丈夫だぞ」
と、博士は付け加えた。
そして、ちょうどその言葉の終わりと共に実験にキリがついたようで、研究員の1人が慣れた手つきで巨大な機械のロックを解除し、中から人を引っ張り出した。
引っ張り出されたのは10代半ば頃の少年だった。
オレンジ色の髪にところどころ黒いメッシュが入っていて、髪の一部はピンク色の玉が2つ並んだヘアゴムで括られている。
端正な顔立ちをしており、黄色い目の下から頬にかけては左右非対称の黒いラインが走っていた。
そんな彼を特に印象付けていたのは、華やかな髪でも顔立ちでも首から下げられた真っ赤なネックレスでもなく、明らかに機械仕掛けでありながら生まれつきのモノのように滑らかに動く銀色の右腕だった。




