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ふんふんと鼻歌交じりに機嫌よく歩みを進めていくYOUに対し、痺れを切らしたからか手渡された見慣れぬモノに対する好奇心からか、とうとうチェーレが彼を呼びとめた。
「YOUくんっ」
「んー? なんや?」
呼ばれてすぐチェーレの方にくるりと体を向けるYOU。
そんな彼の純粋な疑問を浮かべた表情を見て、チェーレは少し恥ずかしそうに何度か瞬きをしたが、やがて真っ直ぐに彼の瞳を見て話し出した。
「私ね、学校に行ったことがないし誰かに勉強を教わったこともなくて、文字が読めないの。ずっと絵と見比べて歩いてたから、なんとなく今どの辺りにいるのかは分かるんだけど……」
「それならもっと早よ言ってくれればよかったやん! 俺がちゃーんと教えたるで!」
しゅんとしたように視線を落としてしまったチェーレに対し、YOUは力強い声色でそう言った。
そして続ける。
「誰かに読み書きを教えるようなことなんて今までなかったけど、こんなかわいい女の子に教えられるんなら本望やな。死んでからでもええことってあるんやなあ」
「YOUくん、ありがとね」
柔らかい笑顔を浮かべて礼を言うチェーレに、YOUはそんな礼なんていらんと答え、
「まあ教えるっちゅーても今この場で詳しくどうこうできるわけではないからな。えーっと、ちょっと地図こっち向けてみ? 今俺らはこの辺りにいるってのは分かるか?」
「うんっ」
「おお。で、ここが俺たちが目指してるとこで、この建物の絵の近くに書いてあるこの文字が“研究所”って読むんや。とりあえず今はこれだけ分かればええか?」
「うん、ありがとう!」
今度は眩しい笑顔を見せたチェーレを見てつられたように満足そうな笑みを浮かべたYOUは、今まで話に全く入ってこなかったルリ-フリルラの方へと視線を移す。
彼の眼鏡越しに視線が重なったルリ-フリルラは、なんとも表しがたい表情を浮かべていた。
「なんや、ルリも分からへんってか? 男に手とり足とり教える趣味はないんやけど……どうしてもって言うんならまた一から説明したるで?」
ルリ-フリルラ自体に性別の区分はないのだが。
そんなことをYOUが知るはずもないし、ルリ-フリルラ自身もあまり気にしているところではなかったのでその点には触れなかった。
ルリ-フリルラは、彼のいかにも偉そうな物言いに対する返答はせず、パンフレットを渡されて地図を見た瞬間から疑問に思っていたことを口にした。
「このいっぱい並んでる白い四角はなんなんだ?」




