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主にYOUとチェーレがたわいない会話をしながらしばらく歩いていると、やがて大学の研究所が3人の視界に入ってきた。
木と塀と門で大きく囲われた敷地内には、比較的大きめの真っ白で正方形に近い形の建物がいくつも並んでいた。
その様は“小さな白い森”という言葉がしっくりくるだろうか。
3人が正門辺りまで来ると、門番の男性が用を尋ねてきた。
ここは一番まともな返事ができるであろうYOUが答える。
「博士――って言えば分かるか……? えーっと、俺らはここの研究所で働いてはる博士に招待されて来たんですけど」
「ああ、博士のお知り合いの方ですか! どうぞ中へ。研究所の場所はご存知ですか?」
博士、と聞いた途端パッと顔色を変えた門番の様子を見る限り、あの博士とやらはなかなかに顔の広い人なのだろうか。
そんな疑問がYOUとチェーレの脳内で浮かんでいた。
「そうやなあ。こん中全部おんなじような建物ばっかやし、地図とかあれば貸してもらえませんか?」
YOUの言葉に対し、門番はそれなら、と言って大学の簡易パンフレットを3つ取り出した。
「こちらのものは無料で配布しておりますので、よろしければ差し上げます。中を開くとすぐ地図を見ることができますが、もし分からなくなってしまった場合はここに戻ってこられるか、通りかかった学生などに尋ねてみてください」
「おお、ありがとうございます。これめっちゃ分かりやすそうなんで迷わす行けそうですわ」
YOUがパンフレットを受け取りながらそう言って、自分の分を除いた2つのパンフレットをルリ-フリルラとチェーレに手渡した。
もう一度門番に礼を言ってから、ほな行くで、と2人に声をかけて歩き出したYOUの晴れやかな表情とは裏腹に、パンフレットを両手で固く握りしめた残り2人は眉間にしわを寄せて難しそうな表情をしていた。
「なんだこりゃ……」
「も、文字が読めない……」
今回3人が博士に誘われて訪れた施設内には、魔術の研究について専門に学ぶ大学と、その手を極めた研究家が実際に研究をおこなう研究所が併設されている。
大学は2年で卒業となり、基本的に学生は卒業と共に併設された研究所の研究員となる。
しかし、もともと魔術師自体の数があまり多くないこともあり、ここに通う学生も大多数が自ら魔術を扱うことはできない。
そのせいか、単純に魔術に関わりたいという興味本位で入学してくる学生も少なくなく、半数近くは1年と経たないうちに姿を消してしまうのであった。
また、この大学に進学したからといって研究に生涯を捧げることを選ばない学生ももちろんいるため、結局大学からストレートに研究所に入ってくる人数はかなり少なくなってしまう。
だからといって外から独学で研究所に入ることも容易ではなく、魔術の研究に対する需要と供給は常に釣り合わない状態となっていた。




