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「私、ずっと話相手が欲しかったの。だから今の私と話せる人がいるって知った時はとても嬉しくて……今もこうしてお話ができて、とっても嬉しいんですよ。あなたのお名前も教えてくださる?」
と、美沙子。
見た感じではチェーレとほぼ変わらないくらいの身長でありながら自分と同じ目線にいる彼女に、YOUは気のいい笑顔を見せて答える。
「俺は今はYOUっていうねん。あんまかしこまらんでええで。気軽に話そうや」
「はい! ありがとうね」
にこりと微笑む美沙子を見てから、YOUは視線をかえでに移した。
「お前との話の途中やったな。えーと、面倒なやつがどうこうって……」
「こいつのことだよ」
YOUが話を美沙子が現れた前のものに戻そうとして、しかしかえでの言葉によってそれは少し違う方向へと向かっていった。
「ええ!? 美沙子ちゃんが!? めっちゃええ子っぽいやん! まあお前、俺と話すのも面倒そうやったけど……話相手するのが嫌ってことか!? そんなら俺がいくらでも――」
「それもあるけどちょっと違う。こいつには無いんだ」
「何が?」
「記憶が」
「ははっ、記憶かー……ってホンマかいな!」
驚いたYOUが再び美沙子の方を見ると、彼女は少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「今の状態になるまでのことを全く覚えていないの。名前だけは何故か知っていたんだけど……自分がいつどこでどんな風に生きていたのか、どのくらいの年齢でどういう風に死んでしまったのか、全く分からないの」
「そうなんや……」
「でもね、かえでさんのお陰で私は旧政権という時代に生きてたんじゃないかってことは分かったの。少しずつでも、こうやって情報を得ていつか記憶を戻せたらいいなって。例えそれがいいものばかりじゃなかったとしても……。でも、今はあんまり悲観してないんですよ。知らないことが多いってことはそれだけ新しく知ることが多いってことだし、知ることってとても楽しくてわくわくするし!」
「俺としては1日でも早く記憶を戻してここからいなくなってほしいけどな……」
「もう、かえでさんはまたそんなことを!」
むっと頬を膨らませる美沙子をかえでは一瞥する。
YOUはそんな2人を見て楽しそうに笑顔を浮かべた。
「まあええやん。そりゃ早よ思い残してること思い出してすっきりした方がええんやろけど、今楽しめることは楽しんどき。俺もできることがあれば協力するで」
「ありがとう。YOUさんもかえでさんと同じで優しのね」
「いやいや、俺のがかえでよりずっと優しいで! 何たって俺は――」
「余計な話はいいから」
美沙子の言葉に得意げになりかけていたYOUを、かえでが心底うんざりとした様子で絶ち切った。
今度はそんな2人見た美沙子が楽しそうに微笑む。
「こいつ生前の記憶は無いけど記憶力はいいから。ためになりそうなことは適当に教えといてやって」
かえではそう言って、少し疲れたように一息ついた。




