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声の主は3人の背後に立っていた。
灰色の瞳は目尻が鋭く吊り上がっており、堅く結ばれた口に真っ直ぐな眉と、初見でも彼が気難しそうな人であることは容易に想像できた。
焦げ茶色の髪は少し長く左右にハネていて、前髪は完全に目にかかるほどの長さだ。
白いカッターシャツに赤いネクタイ、グレーの袖のないセーターを身にまとっている様子から、恐らくそう遠くない範囲の学校に通う学生なのだろう。
「うわっ……」
小声を漏らしたYOUの声はその場の誰の耳にも届かず、ルリ-フリルラとチェーレは不思議そうに見知らぬ少年を見つめていた。
少年はルリ-フリルラとチェーレを一瞥すると、真っ直ぐにYOUを視界に捕えて口を開いた。
「お前はここで何をしてるんだ、K?」
「え……あ、えと……。ど、どちらさまデスカ」
氷のように冷たく淡々と言い放った少年に対し、YOUは視線も声の調子も完全に不安定だった。
少年はそんな彼の様子に眉1つ動かさず、次の言葉を紡いでいく。
「馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。俺には視えてんだぜ?」
「うわあああああしくったああああああああ!」
YOUはその言葉と同時に、文字通り膝から崩れ落ちた。
一方、少年はくだらないモノを見るような視線を彼に突き刺している。
「かえで! どないしてこんな時間に外出歩いてんねん! 学校は!?」
かえでと呼ばれた少年は、YOUの質問に淡々と答える。
「今ちょうどテスト期間だからな。午前で終わった」
「あーもう! そんな時期かい! すっかり忘れてたわ! テストなんてもう俺には関係あらへんもんな!」
ダンダンと地面に拳を叩きつけるYOU。
変わらずかえでは冷めた表情でYOUを見下ろしていたが、
「えっと、YOUくんとあなたはお知り合いなの……?」
ふいに挟まれたチェーレの言葉を聞いて、その場にいる彼女以外の3人は視線を移動させた。
ここで初めてチェーレと目が合ったかえでが特に何も言いそうな気配が無かったため、YOUが一息ついて説明を始めた。
「こいつは宮脇かえでいうて、俺が生きてた頃の友達や。生まれつき霊感が強かってん、死んでしもたけどあの世に行かれへん人たちが視えるらしいで。せやからかえでに会うたらいくら容姿が変わってても俺やってバレる気ぃしてて会われへん時間選んだつもりやってんけど……」
「そうだったんだね」
頷きながら大きな瞳を瞬かせてかえでを見つめるチェーレに対し、かえでは居心地が悪そうに視線を逸らした。
「死んだ人が視えるなんて全然いいもんじゃない」
吐き捨てるようにそう言うと、彼は再びYOUの方に視線を向けた。
「ていうかお前その体は誰のだ? ひょっとして事故で行方不明になったやつのか?」
「そ、そうやけど……。なんか死んだ時めっちゃ焦ってすっといったらすっと入れただけやねんで!」
相変わらずYOUの説明は分かりづらかったが、かえでは生前の付き合いの成果か霊の知識が通常の人より豊富だからか、決して理解していない様子ではなかった。
「それはどうでもいいけど、いくら外見を変えても気づかれるのは時間の問題だと思うぜ」
「なんや博士と同じようなこと言うて! 俺今のとこめっちゃ上手く生きてるで!?」
「早速生前の知り合いにバレてるのにか?」
「うっ……」
かえでの正論に、YOUは言葉を返せなくなってしまった。
かえでは呆れたように一息つくと、お前は知らないだろうけど、と前置きをしてから話し始めた。




