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3日後の昼過ぎ頃。
約束通り、ルリ-フリルラとチェーレとYOUの3人は博士の家の前に集まった。
ルリ-フリルラは少しでも魔術に関わることから遠ざかりたいからさっさと行って帰ってしまいたいと思っていたが、チェーレとYOUはとても楽しみでわくわくしているという気持ちが表情に表れていた。
「ほな、早速行くで!」
「わーい! 楽しみだなーっ」
YOUがこっちだと言って歩き始め、その後ににこにこと微笑んでいるチェーレと少し不安げな表情のルリ-フリルラが続く。
YOUはルリ-フリルラの微妙な表情を感じとったのか、にやにやと悪戯っぽい笑みを見せて問いかける。
「なんやルリ、ひょっとして魔術が怖いん? それとも事故現場に行くのが怖いん?」
「はあ? 何だよそれ」
そう答えたルリ-フリルラの表情は不満げなものに変わっていた。
「どうしても嫌っちゅーんなら帰ってもええんやで? そしたら研究所まではチェーレと2人っきりやしなー」
「もーっ、YOUくんそんなこと言わないでよぉ。私はルリちゃんにも来てほしいからね? もし本当に怖くても、私もYOUくんもいるから大丈夫だよ!」
YOUにからかわれ、チェーレに慰められ、ルリ-フリルラは何て言葉を返したらいいのか分からなくなっていた。
いっそこのまま2人と別れてしまいたいほどだったが、このまま去ってしまったらなんだかYOUに負けたような気持ちになりそうで悔しかったし、自分を見つめるチェーレの瞳の力か、何故だか彼をその場から離れさせようとしなかった。
「別に怖くねーよ。でも、俺は魔術にいい印象は持ってない」
「ふーん? ま、ほんまに怖なった時はいつでもお兄さんに言いや?」
「誰がお兄さんだよ……」
得意げな表情で自分を指していたYOUに対しルリ-フリルラは呆れた声を漏らしていたが、本人はもう彼の方に見向きもしていなかった。
既に歩き出していた2人を見て、ルリ-フリルラは一息ついてから歩みを進めた。
「ここや」
YOUがそう言って歩みを止めた所は、彼の話の通りT字路の突き当りだった。
さすがに一月経ったからか現場に事故の形跡は残っていなかったが、そこには数多くの花が供えられていた。
その大部分が赤い薔薇であることに気づいたチェーレが不思議そうに目を丸くする。
「どうしてここにはたくさん薔薇が置いてあるの?」
「ああ、俺赤い薔薇が好きやってん。ほんまは薔薇はこういうとこに相応しくないって聞くけど、きっとみんな俺に気ぃ使って供えてくれはったんやろ」
そう答えたYOUが穏やかに微笑んでいるのを見て、チェーレもつられて頬を緩めた。
「ここにいるお花のみんなも、ちゃんと分かってるみたい。ここにお花を置いていった人たちの分も一緒に事故のことを悲しく思ってるよ」
「なんやチェーレ、不思議なこと言うなあ」
チェーレの言葉に対し、YOUが不思議そうに目を瞬かせた。その言葉を聞いたチェーレは一瞬ハッとしたように目を大きくしたが、すぐに落ち着いた表情を見せてルリ-フリルラに話した時と同じようにYOUに自分のことを話した。
「私ね、声が聞こえるの。ここにある薔薇のお花たちも、隣に生えてる草のみんなも、今はふいてないけど風の声も。みんな人と同じように話をしてて、私が話すとちゃんと答えてくれるんだよ」
「へえー。なんやよう分からんけどすごいな! こんな体になっといて言うのもあれやけど、不思議なこともあるもんやな」
「信じてくれるの?」
大きな瞳で見つめるチェーレに対し、YOUはニカっと笑顔を見せた。
「俺は信じるで! この世にはよお分からんもんがいっぱいあるし、まだ出会ってそう経ってはないけどチェーレが嘘つくようなやつとも思えへんしな」
「……ありがとうっ」
チェーレがそう言って目を細めた刹那、
「こんな墓でもないとこに花なんか供えて、片付けるやつの身にもなれって話だよな」
ルリ-フリルラでもチェーレでもYOUでもない声が、彼らのすぐ近くから聞こえてきた。




