表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェバル保管庫  作者: レスト
剣と魔法の町『サークリス』 前編(旧)
33/144

間話3「サークリス剣士隊の英雄 クラム・セレンバーグ」

 ユウがアリスを背負い、ヴェスターから必死に逃げている頃。


 コロシアムでは、魔法隊及び剣士隊の合同隊と襲撃犯たちによる激しい戦闘が行われた。


 そして、多くの一般人と幾分の隊員の犠牲の末、襲撃者のほぼ全ては死亡あるいは逮捕されるに至ったのだった。


 ただ一人、ヴェスターを除いて。


 部下の一人が、指揮に当たっていたエリック・バルトンに報告する。


「制圧完了しました。ただし、主犯の男は依然逃亡中の模様。目撃情報によれば、そいつは謎の爆発魔法を使うようです。どう致しましょうか?」


 腕を組んで話を聞いていたエリックは、即座に指示を飛ばした。


「直ちに捜索隊を配備しろ」

「はっ!」


 そのとき一人の男が、周りの兵たちに目立つ位置へと歩み出てきた。


 彼は短く整った銀髪と、がっちりと鍛え上げられた身体を持ち、右の頬には大きな傷跡があった。年齢は中年くらいだろうか。眼光は鷹のように鋭く、背中には立派な剣がかかっていた。


 彼は、堂々とした口調で言った。


「その男の捜索だが――この私に任せてはくれんか?」


「おお! あなたは!」

「英雄、クラム・セレンバーグ!」

「龍殺しだ!」

「来ておられたのですね!」


 方々から、歓迎の声が上がる。


 クラム・セレンバーグ。剣士隊一の実力者にして、龍殺しを称される英雄の登場だった。


 数年前、サークリスの付近に巨大な黒龍が襲来したことがあった。そいつは魔法をほとんど通さぬ特殊な鱗を持っており、魔法使いたちはすべからく無力だった。鱗を貫くことができる剣を持つ者たちは、非常に広範囲に渡る強力な龍のブレスによって、全く近づくことが出来なかった。


 誰もが絶望したそのとき、ブレスを神業のような動きで回避し、一瞬にして龍の心臓を貫いて仕留めたのが、このクラムであった。その活躍は今もなお語り草となっていた。


 エリックはそんな彼に頼もしさを感じながら、彼の提案を認めた。


「ありがたい。クラムさんになら、私も安心して任せられますよ」

「そうか。では承った。早速行くとしよう」


 クラムは数人の部下を引き連れて、コロシアムから出ていった。




 クラムたちを見送ったエリックの元に、燃えるような赤髪の青年が現れた。アーガスだった。


「お前、バルトン家のエリックだろ」

「オズバイン家の長男殿か。あなたの活躍がなければ犠牲者はさらに増えていただろう。制圧にご協力感謝する」

「なに、礼を言われるほどのことじゃない。それより、ユウ・ホシミという子の状況はわかるか? オレの決勝での対戦相手だった子だ」


 エリックは部下の報告をまとめた紙を見ながら、あくまで公人として事務的に言った。


「手元の情報によれば、混乱の最中で行方不明になったとのことだ」

「行方不明だと」


 ややショックを受けた様子のアーガスを見たエリックは、今度は個人としての顔を滲ませた。

 

「私は彼女の担任をやっていてね。真面目な良い子だよ。無事だといいのだけど……」

「そうだな……教えてくれてありがとよ」

「ああ」


 エリックから離れたアーガスは、心配を顔に浮かべながらぽつりと呟いた。


「ユウの奴、上手く逃げられてればいいんだが……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ