森の魔女②
お久しぶりです。
異動等で仕事に追われてました。
やっと一息つきました。
新章突入します。
俺は、パーゼル侯爵邸に到着した。応接室に執事に通され、エミルとレミゼに甲斐甲斐しく世話をされながら・・・あれ?普通は後ろのメイドさんとかがしてくれるのではないの?…「あのー、エミル様?「エ・ミ・ルです。」あっはい、エミル、後ろのメイドさん達の仕事とってない?」と恐る恐る聞くと「賢者様は命の恩人なので、私達がお世話すると伝えています。メイド達は私達の補佐で居てもらってます。」と返答を受け、俺はエミルとレミゼに世話をされながら邸宅の主を待った。部屋の扉がノックされ、執事が一礼をし入ってきた。扉は閉めずに「主の準備が整いました。こちらへどうぞ。」と言い、俺達は執務室らしきところへ案内され、執事のノックとともに、「入れ。」と一言返事とともに、重厚そうな扉が開き、部屋奥の椅子?めっちゃ豪華な革張りのソファーに座るパーゼル侯爵らしき人と対面した。
パーゼル侯爵は「エミルよく無事で帰ってきた。レミゼも護衛ご苦労。」と言い、エミルを傍に呼び、レミゼを労った。エミルとレミゼの首輪に気づくと、俺の事を睨みつけ「で、貴様は私に娘を買えと交渉に来たのか?」と言い、威圧してきた。俺はこの程度の威圧は受けないが、エミルもレミゼも周りの執事&メイド達 が恐怖に顔色が染められ、メイドに至っては、腰が抜けている者までいた。
「はじめまして、パーゼル侯爵。娘様達の値段交渉に来たのではありません。侯爵と私以外は恐慌状態に陥ってますので、その威圧をやめてもらえませんか?」と返事をすると、威圧的な空気が一気になくなり、「ほう」と一言もらした。
「お父様、お父様の事大嫌いになります。説明をきかず、このような事をして!」とエミルが怒り出すと、明らかに狼狽し「ちがっ、こらはだな」としどろもどろに言い訳をエミルにしていた。
場の空気が冷静に話せるようになり、立ち直った執事&メイド達が世話をやいてくれるなか、娘の状況説明で、頭を下げてきた。「先程は娘の首輪を見て、冷静さを欠いた。すまなかった。」俺は、威圧に怯まないトコを見て、威圧を解除した経緯とか考えると、嘘やろ!とツッコミしたくなった。
エミルとレミゼの状況も理解し、エミルが俺が賢者様と同じ魔法が使えると言ったら、俺が賢者様だという話に食らいつき、いきなり俺の手をつかむと、2階の奥の部屋まで連れていった。ホント連行はきつい。俺、何か悪いことしたっけ?
部屋を開けると、死臭が襲ってきた。
「妻だ!原因不明の奇病に侵され、もってあと数日だと思う。娘には今回の帰省で教えるつもりであったが、助かるのなら、元気な母親の姿を見せてやりたい。どうか助けて欲しい。」と頭を下げてきた。
俺としては多分出来ると思う。貴族には関わりたくないが、妻を思う。また、娘を思う気持ちにこたえてやるのも俺かな?位の気持ちになっていた。
「わかりました。ただし条件があります。まず、なぜ完治したのか話さないこと。元々病気すらなっていないでいきましょう。次におそらくこの状態は呪いです。奥様の身体に直接触れますが、不敬罪とか言わないで下さいね。最後に、呪いの解呪には、反呪で呪いをかけた者に呪いがかえりますので、かけた者達には十中八九バレます。私の事を出さずに言い訳を考えておいて下さい。いいですか?」
俺は一気にまくし立てた。
侯爵は全てを飲むと返答し、妻のそばまで行った。
俺は追随するようにベッドで横になっている侯爵夫人の元に行き、神眼で観察した。
名前︰アリアナ・フォン・パーゼル
称号︰侯爵夫人・深窓の婦人
状態︰腐人病(呪い)
と出ていた。
腐人病とは、ゾンビやグール等の死人系魔物に傷を負わされた場合に発症する事があるが、簡単な癒し魔法で治る。症状が進行すれば、上級癒し魔法程度では回復出来なくなる。
しかし、他の方法があり、傷を負わなくても、死人系魔物を触媒に【呪い】をかけると、回復不可の腐人病になる。まぁ普通ではね。
俺は侯爵の許可を得て、夫人の身体を直接触り、呪いを根源を探した。呪いで掛かった場合は、呪いを解除し、癒せば治る。まぁ最上級の解呪と癒し魔法が必要だが…。
俺は、背中の肩甲骨部分に根元を見つけ、「聖なる音よ!呪いを砕き給え!福音!!」「完全なる癒し!」と立て続けに唱えた。
※【福音】は聖属性の音波で、不浄なものを空間ごと浄化する魔法で、呪いといったものには、根元を起点に発動させることにより、消滅させる事が出来る魔法である。
立て続けに唱えたのは、考えてもわかると思うが、腐人病は内蔵も腐る…ゾンビなら生きていても、人間なら死ぬよね?
侯爵夫人は光ったと思うと、呼吸も落ち着き、めちゃくちゃ綺麗な人に戻った。
俺は隣に佇むパーゼル侯爵を見ると、侯爵は目に涙を浮かべ、俺の手を取り、膝まづき、嗚咽混じりに「賢者様、ありがとうございます。賢者様、ありがとうございます。」と繰り返した。
俺は、パーゼル侯爵に「出来る事をしただけです。奥様の手を取ってあげて下さい。」と伝え、侯爵の手を解き、部屋を後にした。
俺は、外に居た執事さんに「誰も入らせないように。」と伝え、エミル達が待つ部屋に戻った。
エミル達は俺の姿を確認するなり「お父様に何もされなかった?」「怪我はないか?」等々色々言ってきたが、大丈夫だよと返答をし、メイドさんが淹れ直してくれた紅茶をすすりながら、侯爵が戻ってくるのを待った。
時間にして、半刻もしたころに、部屋がノックされ、執事さんが入ってきて、「主と奥方様が戻られました。」と告げ、扉を大きく開け放った。
扉の開いた先には、偉丈夫といって差し障りのない自信に満ちたパーゼル侯爵と少し痩せた感はあるが、綺麗な侯爵夫人がいた。
エミルは母親の姿を見ると「お母様ー。」と呼び、抱きついた。そして「お父様が私達の恩人にひどい事をするのです。お母様も何か言って下さい。」と速攻チクリやがった。
侯爵夫人は「まぁまぁ、あらあら。」とのほほんと答え、パーゼル侯爵からあらましを聞いたと思うような返事で「お父様も大変だったのですよ。私も貴女たちが首輪をつけて帰ってきたと聞いて、大変驚きましたよ。」と優しくエミルを撫でながら諭していた。
侯爵夫人は、俺に向き直り「賢者様、この度は大変ありがとうございます。」と一礼し、エミルとともに、いつの間にかソファーに座っていたパーゼル侯爵の横に座った。レミゼ?レミゼは侯爵達が入ってきた後は、護衛の立場よろしく、扉前で置物と化してますよ?
俺は賢者様と呼ばれる程立派な人間?ではないので、シドと呼んでほしいと言い、エミル達にも呼ばないようにと何度もしたような説明をすると、シド様で統一された。様もいらんのに…再度侯爵にことのあらましを伝え、なんとか街まで来て欲しいと伝えると、馬車の手配をする等の話になったので、俺の便利魔法を伝え、即効行ける事を伝えると、また感謝された。
侯爵に、なんとか2人の奴隷解放方法はないかと聞かくと、森の魔女なら出来るかもと有用な情報を得る事が出来た。
貴族って厄介もいれば、まともの者もいますよね?