貴族に巻き込まれました③
流石、貴族様......そう、エミルやレミゼはどっからどーみても貴族様......。
エミルは長旅といえど、簡素ながらも着飾っており、貴族の令嬢様......。
レミゼは鎧の表面に無数にある傷すらも神々しく見え、鎧に掲げられた紋章が誇らしく見え、貴族としての箔をさらに高めている.......。
俺は?腰にショートソードは差しているもの、上下.....布製の服......。
宿場町【トレイル】は、引退した冒険者が開拓した町らしい.....。
今から100年程前の事なので、当時の魔獣との境界などは分からないが、森の魔女の恩恵もあるらしい。
今は、6代目が町長を務め、大きな問題はなく、町の維持はできているらしい。
らしいというのは、今の俺の置かれている状況によるからだ......。
俺たちは、町に入るなり町長の専属の騎士団?本人達は【トレイル守護騎士団】と言っているが、町長邸へ向かう道中の彼らの話は、町長賛美や町長のお邸宅専属警備を
任されている誇り高き騎士団とかばっかで、エミルやレミゼに如何に自分達が凄いか、また強いかを語っている。
俺?俺はなぜか馬車から降りるように騎士団に指示され馬車の横を並走させられてます。
城門を潜り、城門の衛士へ盗賊達を捕縛した事を伝え、報奨金のうけとった。
エミルとレミゼは、報奨金を分配しようとすると、自分達は何もしていないので、報奨金は全て俺にと言って受け取らなかったので、全額もらった。
賞金首もちらほら混じっていたようで、白金貨2枚、金貨46枚、銀貨28枚、銅貨11枚になった。
報奨金を受け取り、街中へ入り、本日の宿を探そうと話し合ってたところに、【トレイル守護騎士団】と名乗る煌びやかな金色に輝く鎧を着た集団がやってきた。
よろいは豪華だが、騎士団員の顔付きはどっからどー見ても騎士団には似つかわしくない一団だ。
報奨金とかの話を衛士としている時、1人街中へ走っていった衛士がいたので、おそらくソイツが町長宅へ知らせにいったのだろう......。
騎士団の1人がエミルとレミゼの身分確認をしていた。
【冒険者ギルドカード】よりひとまわり大きい、青白いプレートを見せていたので、おそらくあれは貴族専用の身分証みたいな物だろうと思った。
最後に俺に身分証を提出するように指示をしてきた。
「申し訳ございません。お連れ様の身分証を拝見させて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「はい。これでいいですか?」
俺は【冒険者ギルドカード】を提示すると、相手の顔は困惑と不審者を見るような目つきに変わった。
「おい!お前!貴族様の馬車に乗るとはどういう事だ!まして、貴族様の横に座るとは何事だ!降りろ!!」
と言って、無理やり腕を引っ張られ、馬車から引きずり降ろされた。
「何をしますか!この方は私達の命の恩人です!手荒な事をするという事は、我がバーゼル家に矛を向けると同じ事と知りなさい。」
引きずり降ろされた俺を見て、エミルは声を荒げてくれるし、レミゼは.......おいおい、剣を抜くなよ.......剣の柄にてをやり、いつでも抜ける体制になっていた。
「騎士団の皆様、申し訳ございません。私が貴族様の厚意に甘え過ぎておりました。馬車の横を並走しついていくことをお許しいただけますか?」
エミルの叱責を受け、顔面蒼白だった騎士達は、俺の言葉に我が意を得たりといった感じで、
「貴殿の話には一理ある。町長様の邸宅まで並走する事を許そう。また町長様に褒美を出して頂けるように進言してやろう。」
と言って、俺の背中を思いっきり殴った?のだろう......拳が痛そうだ。
俺はエミル達に騒ぎを大きくしたくないからと思いを込めて、アイコンタクトを送った。
エミルは悔しそうに口を真一文字にしていたので通じただろう。
レミゼは......さっきより、剣が抜きやすい体制になっている......伝わらなかったようだ......。
エミルが俺の視線から咄嗟に気づき、レミゼの耳元へ何かを囁いた。
レミゼは渋々という感じで剣の柄から手を離した。
で、俺は馬車の横を並走している状況に陥っている訳です。
町長宅だろうか?立派な家が見えてきた。
馬車は門扉の前で止まり、エミルとレミゼは町長へ挨拶へむかった。
俺は、騎士の人が町長に冒険者を邸宅へ招待していいか確認すると言われ、門扉の前で待ちぼうけです。
10分程待ったのだろうか.......
「おい、お前!ほら金だ!さっさとどっかへ行け!」
俺は放り投げられた金を受け取ることなく、
「意味がわかりませんが?エミル様、レミゼ様をここで待ちます。館にはいれないのは分かりましたので、ここにいるとエミル様達にお伝えください。」
「この金はお前の大事な貴族様からだよ。ここから先の道程は、我ら騎士団が護衛するので、お前はお役御免なんだよ。とっとと立ち去れ!」
俺は状況を不審に思い、お金は丁重にお断りし、情報収集と隠れての警護を心に決めた。
(とりあえず、ここでえみるとレミゼをポイっていうのもなぁ......せっかく助けたのに気がひけるしなぁ......。助けるか......とりあえず【冒険者ギルド】で情報収集やな!都合よさそなスキルも取っとくか........)
気配遮断LevelMAX
隠密行動LevelMAX
危険察知LevelMAX
罠解除LevelMAX
SP40ポイントを消費して取得した。
俺は【冒険者ギルド】に向かう道中で役に立ちそうなスキルを取得し、スキルの練習をしながら歩いて行った。
気配遮断とにより、他の通行人がこちらに気付かずにぶつかってくる。
その危険を危険察知で感知し、躱すと......気配遮断がきれるのか、ぶつかりそうな相手がこちらに気づき、驚いた表情を浮かべながらも、お互い「すいません。」と声をかけ歩き去る。
危険察知で躱す時に隠密行動で躱すと相手はこちらに気付かずに歩いていく。
気配遮断、危険察知、隠密行動はセット運用かなぁと考えながら歩いていると、誰にも気付かれずに【冒険者ギルド】の中まで入っていた事に自分も驚いた。
(おいおい、ドアを開けて入ったのに誰も気付かんとは......受付位は仕事しろよ......まぁ一般人より気配察知に優れている冒険者の奴らも気付かんからしょうがないか......テンプレやったら、元凄腕のAランク冒険者の美人受付嬢とかやのになぁ......。)
俺はくだらない事を考えながら、気配遮断を切り、受付の前まで歩いて行った。
「すいません。ちょっと話を聞きたいのですが......。」
(この娘かわいいなぁ......メガネがいい!)
「はい。依頼情報ですか?ギルドカードの提示をお願いします。」
「これでいいか?」
「はい。確認させてもらいます。......え〜とシド様でよろしいですね?」
「はい。」
「レムオルで登録されたシド様でよろしいですよね?」
「はぁ......そうですが......。」
「ギルドカードをお預かりさせていただきます。」
「はぁ?」
「すいません。レムオルのギルドマスターより通達が各ギルドマスターに来ているそうです。しばらくお待ちください。ギルドマスターに報告してきます。」
受付嬢はパタパタと奥に走り去っていった。
このまま逃げることも出来るが、身分証を失うのも嫌なので大人しく待っていた。
(あの筋肉達磨......ろくなことしやがらんな......よし!転移系の魔法スキルとって驚かしてやる!)
時空魔法LevelMAX取得!
(転移門かぁ......一度行ってれば飛べるか......人数制限はっと......最大Levelやと人数制限なくなるみたいやな......覚えてろよ!筋肉達磨!!)
俺が不純な動機でスキルを取得し、思考の浅瀬位にいると.......。
「お待たせしました。シド様。ギルドマスターがお会いになるそうです。」
「はっ......はいorz。」
俺はやっぱこうなる展開やなぁとか思いながら、受付嬢の後について行き、ギルドマスターの部屋前に通された。
俺はギルドマスターを見るなり絶句した......。
「ルルさん?」
「あら、ルルと知り合いなの〜?従姉妹なのよ〜。」
(この人なんかユルいな。)
「お話とはなんでしょうか?」
「あれ〜?本人は自覚してると思ったのだけれど〜?勘違い〜?」
(くっ......以外に鋭いのか?)
「え〜と......。」
「やっぱり〜。わかってるのね〜。」
「はい......煩わしい事になりそうだったのでつい......。」
「は〜い。カード返しとくね〜。」
俺はギルドカードを受け取り、ため息をついた。
「アドルフちゃんが言うには〜、至急帰ってこいだって〜。」
「至急ですか?怒ってる感じでした?」
「もちろんよ〜。アドルフちゃん怒ってたよ〜。」
「もしかして、一緒に帰って、筋肉達磨、ルルさんとの間に入ってもらえる感じで可能性とかあります?」
「シドくんが〜ここまで来たのも〜早かったし〜取り持ってあげたいけど〜私も〜いそがしいしぃ〜早いと言っても〜明日の朝は仕事だし〜無理かな〜?」
「今すぐ行って、帰ることが可能なら行けますか?」
「可能だったらね〜。」
「転移門」
「え?」
(ふっふっふ、目がテンになってるな。)
「はい。可能だったのでお願いします。」
俺は有無を許さず、手を引っ張って転移門を潜った。
「ちょ......待って〜?あら〜久しぶり〜アドルフちゃ〜ん。」
「おっ......おい、なぜ......。」
筋肉達磨は、こっちを見て、驚き、一度部屋を出て、また入ってきた。
「おい、どうやって入ってきた!?」
「え?シドくんの〜、魔法?で〜とんできた〜?」
「おい小僧!?何をやった!?」
「え?そんなん魔法にきまってるじゃないですかぁ。」
(筋肉達磨を驚かす為には、自重?してやらねえよ。)
「リムルがいるという事は、トレイルから来たのは理解してやる。だがなお前......今日の今日でたどり着ける距離じゃねぇぞ。」
「まぁ、異世界人の特権ってことで!ってか、ルルさんの従姉妹ギルマスはリムルさんって言うんですね。」
「ごめんねぇ〜。名前言ってなかったね〜。リムルだよ〜。リムルお姉さんと呼んでも良いんだよ〜。」
[ガチャ]
「ギルドマスター、シド様の件です......が......なんでリム姉様が?あれ?シド様?シド様がなんで?え?シ〜ド〜さ〜ま〜!!どこに行ってたのですか〜!?」
「もうルルちゃんも怒らないの〜。大好きなシドくんに嫌われちゃうぞ☆(キラリンッ)」
「リム姉様!だだだ大好きって何を言ってるのですか!?」
「おい、ルル、じゃれあってないで状況は理解しろ。トレイルに行った小僧がリムルを連れて帰ってきた。小僧は規格外な奴だから納得しろ。」
「はっ......はい。シド様は規格外で、何かされ、リム姉様と帰ってきた。はい。納得しました。」
「小僧すまねぇな。手配した理由は2つある。1つは昨日の報酬だ。そしてこっちが本題なんだが、領主様から、王家に贈る手頃な毛皮をご所望だ。早急らしい。ルルがお前のとこに嫁ぐ条件らしい。出来るか?」
「あのぉ、ルルさんが俺の嫁になるって話の意味がわかりませんが......。」
「小僧には言ってなかったが、ルルは領主の一人娘だ。元ランクAの冒険者で、領主の親父さんが、無理やり冒険者をやめさせ、結婚させようとしたのだが、ルルは元Aランク、ルルより、強い奴はなかなかいねぇ。ルルは結婚する相手が一番いそうな冒険者ギルドで働く事を条件に、自分より強い奴が居たら結婚する条件を受けたらしい。」
「はぁ、なんとなく分かりました。で、なんで俺ですか?俺はEランクですよ。」
「グレイブタイガーもそうだが、ゴブリンロードもソロ討伐の無傷なんてもんは、ランクSでも厳しいさ。」
「はぁ、で、俺はルルさんを貰う条件にグレイブタイガーを超える毛皮を出せばいいのですね?お断りしますけどね。」
「シッ......シド様、私のことがお嫌いですか?」
先ほどまで、リムルと姦しかったルルが、いきなり筋肉達磨との会話に割り込んできた。
「いっ......いや、嫌いじゃないけど......。」
「じゃあシドくんはルルちゃんと結婚決定だね☆(キラリンッ)」
「なんか事情もありそうですし、毛皮は出します。で、リムルさんをトレイルに送るので、解体所寄って帰りますね。」
「おい、小僧......やっぱ持ってるのだな......。とんでもねぇ奴だな。」
変人扱いで俺を見る筋肉達磨と、なんだかんだで結婚する事に決まり、嬉しいのか?恥ずかしいのか?よ〜わからん眼差しで俺を見るルルさん。そして、最初から最後まで騒がしいリムルさんを連れ立って解体所へ歩いて行った。
(俺、ルルさんルートのフラグいつ立てた?)
そんな事を考えながら歩いていると、解体所のドア前に到着。
解体所のドアを開け、中に入ると、見慣れたバカの姿もあった。
俺は筋肉達磨に促されるようにストレージから、サーベルタイガーを放り出した。
「さすが小僧や!まさかのランクA魔獣をソロ討伐。無傷で仕留めてくるとはランクSにも無理じゃ!!」
「おお、シドくん強いんだね〜。お姉さんビックリだよ〜。」
「あぁ、これでシド様の元に(ハート)」
「解体っす!バラすっす。バラすっす。」
用事の終わった俺は、今は護衛依頼を受けているので、後日戻った時に話し合いをする事を了承させ、転移門を開き、サッサとトレイルのギルマス部屋に戻った。
「では、リムルさ「リムルお姉さん!!」はい......。リムルお姉さん......。護衛依頼あるので、また。」
「そうそうシドく〜ん。その護衛を依頼した人をちゃんとギルドに連れておいでね〜。きちんとした依頼にした方がいいよ〜。」
「はぁ、じゃあ明日にでも......。」
「はぁ〜い。じゃあね〜。」
(なんか色々疲れた........。)
俺はすっかり暗くなった道を走りながら町長邸へ急いだ。
(こっちは面倒な事になってなければいいのだけれどなぁ......)
トラブルホイホイはさらに稼働している事を知らぬは本人のみ......