言い合い
「まったくわらわの魔法で勘定なぞ心配はいらんと証明してやったのにのう。図体がでかい割に、情けないヤツじゃ。でかい熊と戦った方がよっぽど危険じゃったじゃろうが。」
あれとは話が違う。
自分が傷つく気なんかさらさらなかったし、負ける気も無かった。
でも今は完全に手が後ろに回る事してるし…。
「はっ、お前ほど見た目と中身が違う男も珍しいのう。ただの無法者にしか見えんのにのう。」
余計なお世話だ。
しかも今は見た目はゴリラだ。
「そういう問題じゃねえ。後ろめたい思いしてまで生きようとは思わねえ。」
「どうしようもない男じゃなあ。そんあこと言ってこれからどうするんじゃ?」
「それはこっちのセリフだ!なら、その服返せばいいだろが!どうするんだよ、今日の宿と飯を!?せっかく街に着いて出来たての飯を食わず、野宿なんて馬鹿らしいだろうが!!」
「あんな安っぽい格好で飯なんか食えるか!屈辱じゃろうが!」
「じゃあ、もうちょっと安いとこで服買えよ!持ってる金を全部使うんじゃねえ!」
「安物はわらわの肌にはあわん。」
「金が無いって言ってんだろうが!それか俺をゴリラに見せてるんだから、お前も魔法でなんかいい服出せばいいじゃねえか!」
「わらわの魔法は自分にはかけられん。」
「…そうなの?じゃあ、買うしかないか…、じゃねえ!危うく騙されるとこだった!だったら我慢しろ、このわがまま女が!」
「主の望みを叶えるのが下僕の喜びじゃろうが!」
「下僕になった覚えはねえ!」
「だいたいお前が甲斐性が無いからいかんのじゃろうが!わらわがせっかく金も手に入れたのに、無意味な良心の呵責に耐えれんで返しおって!偉そうな事を言うくらいならお前が金を稼がんか!」
「くっ…!」
言い返せなかった。
うう、こんな子供に甲斐性無し呼ばわりされるとは…。
しかし確かにこのままじゃ本当にどうしようもない。
金が無いならなんとかして稼がないと。
何か体力のいる仕事でもあればいいけど、こんな街中でいきなり日雇いの仕事があるだろうか…。