コンゴウは幼女と接近。
「うるさいわ!」
コンゴウは急に誰かに話しかけられて、驚いた。
しかしそれどころではない。
体が燃えているのだ。
のたうちまわっていたが、何だかおかしい。
熱くない。
コンゴウがふと目を開けてみると、炎は消えていた。
体も燃えていた痕跡は無かった。
なんだったのか、今の炎は?
すぐに顔をあげて周りを見渡すと、目の前に先ほどの幼女が立っていた。
「おお、起きてたか。よかったよかった。」
やっぱりただ眠ってただけだったかと、コンゴウは安心した。
「何が良かったんじゃ。人が気持ちよく眠っておったのに。ふわぁ~。」
幼女はとても不機嫌そうで、眠そうだった。
「あ、いやー、その、それは悪かった。実はお兄さん、道に迷ってしまってね。そしたらこんなとこで女の子が寝てるから、ちょっと心配になっちゃってね。」
コンゴウの見た目は体格は大柄で、顔もごつかった。
今まで多くの子供に泣かれてきた実績があった為、なるべく優しげに話しかけてみた。
「ほう、道に迷ってここに来たのか?ふむ…。」
幼女は随分偉そうな喋り方だ。
しかし子供が自分を怖がらなかったのが初めてだったので、コンゴウはむしろそっちが嬉しかった。
「そうそう、それで良かったら食い物を分けてもらえないかなと…。家は近いのか?それともお父さんかお母さんを待ってるのか?」
「なるほどのう、遭難者が偶然たどり着いたという訳か。しかしこの入口には封印がしてあったはずじゃがのう、おい、今は何年何じゃ?」
「何年?えーっと、確かジリタリア歴で言ったら、967年か?何歳なの?」
ジリタリア歴というのは、当時小国だったジリタリア国がアムシン大陸を支配して、ジリタリア帝国を作った時から数えた年暦である。
今はジリタリア帝国は再び分裂しているが、この大陸で生きる者には基本的な年の数え方だ。
「まことか!?なら500年は経っておるな…。まったくやってくれるわ。」
幼女は一人でブツブツ言っていたが、コンゴウの方をキッと睨みつけた。
「こら、お主!いつまでわらわの体を見るつもりじゃ!まったくまあ見とれるのも無理はないがな。さっさと召し物をよこさんか!」
「飯物?いや、だから俺も飯物が無いから腹が減っている訳で…。」
「見た目通りの低脳か、このゴリラは…。」
ゴリラは確か南の方に住む、でっかい猿の事だ。
コンゴウは見た事はなかったが、絵本なんかで読んだ事はあったので悪口だという事は理解できた。
「召し物じゃ、着る物をよこさぬか!わらわの裸をいつまで眺めておるか。ありがたさで目がつぶれるぞ!」
「服の事か。ちょっと待ってくれ。これでいいか?」
コンゴウは自分の荷物が入っていたずた袋を差し出した。
「えー、ちょっと待っててな。今作るから。」
「おい、お主…。まさかそのこ汚い袋をわらわに着せるつもりじゃないじゃろうな!このゴリラ男が!お前の上着でよい!貸せ!」
幼女はコンゴウの上着を奪おうとしたが、触れた瞬間手放した。
「なんじゃ、湿ってるではないか!」
「ああ、雨降ってたからね。」
「ならばその袋だって濡れているじゃろうが!」
「大丈夫大丈夫、革だから中は濡れてないから。」
コンゴウが中身を取り出すと、中には竹でできた水筒と、木で出来た箱が出てきた。
コンゴウは箱と水筒懐に入れた。
「ほらな。濡れてないだろ?」
コンゴウは袋を広げて幼女に見せた・
「ふん、濡れてなくともそんな物、体に触れさせたくないわ。」
しかしコンゴウは意に介さず、袋の四隅を手で破いた。
コンゴウの握力は皮の袋を素手で軽々と破れるどころか、自然の青丈すら握りつぶすほど強靭だった。
「お前は本物の低脳か!?こんなものをわらわに着せる気か!」
「裸よりはましだろ。ほれ、ちょうどいい大きさだしさ。」
「いや、ありえないじゃろ…。ゴホッゴホッ!なんじゃ、その臭いは!?」
「えっ、何か匂いするか?あ、この前魚を取ってそのまま入れてたから、その匂いだな。」
「お主…、もうよいわ。出て行け。」
幼女は呆れ顔で奥の祭壇の方に向かい、再びコロンと横になった。
「いや、何があったのか知らねえが、女の子をこんなとこに置いとく訳にいかんだろ。食い物も無いし、このままじゃ死んじまうぞ。」
しかし幼女は背を向けたまま寝転んでいた。
「うるさいわ、さっさといね。」
「そういう訳にはいかねえよ。親とけんかしたのかもしれんが、帰ってやらないとな。心配してるぞ。」
「消えろ。」
「いいからさっさとここから出るぞ。」
コンゴウが女の子の体に手を伸ばそうとしたとき、異様な熱を感じた。
「失せろ!」
その途端コンゴウの腕が再び燃え上がった。
「うおっ!また!?」
しかし二度目だったので、今度はコンゴウも冷静だった。
すぐさま外に飛び出して雨で火を消そうとした。
しかし雨にあたっても火が消える気配がしなかった。
「えっ!?なんでなんで!!」
また体中に火が燃え広がっていった。
そのままコンゴウは体中が炭になって、その場に倒れた。