寂しい夜に。
私が眠れなかった日に考えてた話です。
眠れない日って、皆さん、ありますよね?
どうしてますか?
夜は寂しい。
昼間の賑やかさはどこへやら。
これが都会の繁華街などなら、これからという感じで賑やかなのだろうが、
ここは住宅街のど真ん中。
…静か過ぎる。
それを俺は、まるで置いて行かれた子どものように寂しいと思う。
そんな俺はどこかおかしいのだろうか?
寝てしまえと言われれば確かにその通りで、何も言い返せないのだが、
静か過ぎて逆に落ち着かなく、眠る状態に身体がならないのだ。
いつもは1、2時間タイマーをかけて、音楽を聴きながら眠るのだが、
今日はそれさえも効かず、外を軽く散歩することにした。
家の近くの公園の前を通り過ぎようとした時、
公園のブランコに、人がいることに気付いた。
そいつは地面に足を着け、軽くブランコを揺らしていた。
表情は良く見えない。
それからたびたび夜の散歩をするようになって、公園の前を通る。
そして、決まってそいつはそこにいた。
それだけ。
雨が降った。
その雨は夜も降り続けた。
俺にとっては良い天気だ。
今日は雨音を聴きながら眠れる。
今日は散歩をする必要がない…はずなのに、とても外が気になった。
別に毎日、散歩をしていたわけじゃない。
今までも散歩に出ない日があった。
今日がその日だというだけで、俺が気にすることはない。
なのに、なぜか俺は外に出ていた。
歩いてるのがだんだんもどかしくなって、いつの間にか走っていた。
いつもの時間より、家を出るのが遅かった。
だから、急いで公園に行こうと思っていた。
ただ眠れないからと、特に目的もない不規則な散歩。
でも、なぜ自分はこんなに急いでるんだろう?
話したことなんてない。
それどころか顔もはっきり見たこともない。
今日、そこにいるかどうかもわからない。
いや、普通に考えて、こんな雨の中いるはずなんてない。
ただの散歩の途中にいるだけの存在。
それだけの存在のはずなのに、どうして俺は走ってるんだ?
息を切らしながら、ようやく公園に着いた。
そいつは傘を差して、いつものようにブランコに座っていた。
散歩を始めてから初めて公園の中に入り、ブランコに近づいて行った。
ある程度の距離に近づいた時、そいつは俺に気付いた。
驚いた顔をしていた。
当然だ。
俺がこいつの存在を認識してはいても、向こうもそうだとは限らない。
「…なんでこんな雨の日にもいるんだ、お前。」
たとえ認識していても、まさかこうして話しかけられるなんて思ってなかっただろう。
俺だってそうだ。
初めて相手の顔をちゃんと見た。
色素の薄い、大きな灰色の目をしていた。
肌も白く、ハーフか何かだろうか?
「…今日は来ないと思ってた。」
少々、ポカンとしながら俺を見て言う。
「来る予定じゃなかったが気になったんだ、仕方ないだろ。」
「そうなんだ…。」
俺の返答におかしそうに笑い出した。
「私もそうだよ。」
そいつは嬉しそうに笑った。
初めての会話。
だが、それらしくないなと頭の片隅で思う。
その後も相変わらず、俺は夜が静かで寂しく感じる。
でも、あいつがいつもの場所で俺を待っててくれるから、少しだけ、寂しくなくなった。
私が住んでる所は田舎で、夜は真っ暗です。
いくら眠れなくても散歩に行く気はしません。
夜の散歩、ちょっと憧れです(苦笑)