傭兵が赴く前の世界状態
力があったから、この職に就いた。
とくに感動するような話などない。ちょっとした戦闘狂だったから、という説明でも納得しそうだ。あと、この職で働くと共に、とある事をしている。
それが、旅。
私の母は魔力可視病だ。かつて、王族の命によって罰せられたグループには、間接的に関わっていた。主に情報提供だったらしい。そのためか、罰から逃れることができた。そんな母の病は、私には遺伝しなかった。医学者たちによると、魔力可視病は30パーセントの確率で遺伝するらしい。グループが大きくなる前に終止符を打たれた理由も、これだろう。
「旅をしなさい。いろんな世界を見て来なさい。知識というのは、多すぎて困るものではありません。今のうちに外の世界を見てくるのも良いでしょう。あなたなら出来るはずです、世界という大きな存在を知ることが」
母の言葉に従って、旅に出た。私がいなくなることによって、母の生活は苦しくなる。少しでも自由を与えるために、猟師という職の力を利用して傭兵になった。月に1回でも金を送れば、それなりに生活できるだろう。
「ここでいいです。ありがとうございました。これ、報酬です」
「ああ、気をつけて」
これは、傭兵の物語。その存在を知ることは出来るのか。
傭兵が集められる町で、私に依頼が入った。
「少年少女を護衛しなさい」
それは、いまだかつて無い旅の始まり。
「世界」とは何か。