■起
物語を書く為には、まず主人公を決めなくてはならない。
主人公の名は「ウヒィ」。悪魔の団子を食べてガム人間となってしまった少年だ。彼は、どこぞの山賊が埋めたと言う幻のお宝「ツーピース」を求め裏山に冒険の旅へと出る。途中で出会った女山賊の「ナム」、ゴロツキの「ゴロ」、詐欺師の「ウソッピィ」を仲間にし、彼の冒険は続いて行く。
原作の単行本を片手に小説を書きながら、小山田は興奮していた。
やばい、やばすぎる。面白いぞ、原作が。だから俺の小説も面白いはずだ、原作が面白いんだから間違いない。
だが、書いても書いても小説は終わらなかった。何故なら、原作が終わっていないからだ。そもそも小説を書いた事が無い小山田は、物語を終わらせる方法が分からない。いつまでも続く執筆の無間地獄に、初めは勢いの良かった小山田も途中からバテて来た。
そんな時、息抜きに読もうと週刊誌を開いた小山田に衝撃が走った。何故ならそこに、彼が求めていた答えが載っていたからだ。さすが日本一の発行部数を誇る雑誌、開けば何でも載っている。凄いぞ少年ジャ●プ。
そして、小説を書き始めてから一ヵ月が経過した頃。ついに、小山田の処女作「ツーピース」は完成した。総ページ数四百二十ページの大傑作。物語を最後まで書き上げた小山田は感無量だった。特に最後の主人公の台詞「俺達の戦いはこれからだ!」。これは原作には無い台詞であり、週刊誌に載っていた打ち切り漫画から引用したものだ。小山田は、この台詞がこの小説の中で一番気に入っていた。物語の最後を締めくくる台詞として、何と相応しい言葉だろうか。小山田は、この台詞を加えた事でこの作品が完全に原作と差別化され、自分の作品として昇華されたと考えていた。
さて、小説を書き上げた後は投稿である。
小山田は早速インターネットから、小説を募集しているサイトを調べることにした。
小説、投稿で検索をかけると「小説投稿サイト」が出てきた。
なるほど、ここに小説を投稿すれば、そのうち出版社から声がかかる仕組みなんだな。
実際には、新人賞などに応募したり直接出版社に持ち込んだりするのが一般的な流れだが、小山田はそんな事は知らない。
小山田は一人納得すると、その中から「小説家になろう」と言うサイトを選び、早速書き上げた小説をコピペし投稿した。後は、寝て待つだけだ。